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言葉にできない気持ちを抱えていた私が「彼女」と出会った話

「めちゃくちゃよかったーーー!!!」
「激アツすぎる」
「最高!!!!!」

さて、これは、私が愛してやまないドラマを見ている時、大好きな俳優のドラマ・映画出演が決定した時、好きなバンドのライブを見に行った時、私がSNSに書き込む言葉です。

…本当にびっくりするほど語彙力ごいりょくがない。

完全なる文系気質で、高校時代は国語まあまあ得意だったのになあ…と思いつつ、いざ言葉にしようとすると、こんな言葉しか出てきません。つらい。

そんな中、SNSで「#〇〇(固有名詞)」で検索し、他のみなさんの感想を見てみると、みなさんのセンスの良い感想が出てくるわ出てくるわ…

私が心の中に感じていた思いをすごく的確に表現されていて、他の方々の感想に引っ張られる自分がいます(正直に言うと、他の人の感想を見てから、自分の感想を作り上げ、感想を投稿するなんてこともしばしば)。

もっと自分の感情を自分の言葉で表現したいなあ…

そんな思いを抱えて26歳になろうとしている私。
自己紹介が遅れましたが、藤本星香と申します。NHKで働いて4年目、ふだんはみなさんからいただく受信料を取り扱う業務をしています。

今所属している水戸局では、茨城にゆかりのある若者たちにいま抱える思いをラップに乗せ表現してもらうというイベント「イバラキ⤴イタダキ⤴」にも携わりました(広報局noteでそのときの思いを執筆しました)。

ある番組との運命の出会い

そんな私が、4月8日(金)の夜10時、仕事終わりにテレビをつけていたら偶然出会った番組「言葉にできない、そんな夜。」。番組では、MCを務めるスピードワゴンの小沢一敬さんとマンスリーゲストの4人の方(当時は、橋本愛さん・桐山照史さん・水野良樹さん・金原ひとみさん)が、日常で抱く感情を、小説や歌詞の言葉も味わいながら、自分ならどう言葉にするかについてトークを繰り広げていました。

言葉にできない、そんな夜。

その回のテーマの1つが、「昔よく聴いていた懐かしい曲を久しぶりに聞いたとき」の気持ち。

…うわあああああ、めちゃくちゃわかるこの気持ち。

中高生の時はあれだけ聴いて、ライブにも何回も足を運んでいたのに、いつの間にか聴かなくなってしまったバンド。私の青春を形作っていたその音が、ふとした瞬間ラジオから流れてきて、その時の記憶とともにいろんな感情がどっとあふれ出すあの感じ。

ふだんならわざわざ言葉にすることもなく、その瞬間は過ぎ去っていきますが、実際言葉にしてみようとすると、ぴったりな言葉が見つからなくてもどかしい。そんな気持ちを表現するために、出演者の方々が紡ぐ言葉がすてきすぎて、番組が放送されていた30分間テレビから目が離せませんでした。

「これは、私のために作られた番組だ」

そう思いました。

番組の生みの親と対面

それから約2か月。
私は、少しのあいだ水戸局を離れ、広報局でお仕事をすることに。
これはチャンスかも。

というわけで、今この広報局note編集部にいる私が、誰から依頼されたわけでもありませんが、「言葉にできない、そんな夜。」広報大使としてこの番組のすばらしさを私目線でお伝えします!!!

まずは…
会ってきました、「言葉にできない、そんな夜。」を立ち上げた制作者に。

NHKエデュケーショナルの大木萌ディレクターです。

こんなことがあっていいのでしょうか…。
いやあ、人生何があるかわかりませんね。

「言葉にできない、そんな夜。」ディレクターの大木さん、手前が筆者の藤本
奥が「言葉にできない、そんな夜。」ディレクターの大木さん、手前が藤本

この番組は、大木さんのさまざまな実体験がきっかけになって生まれたそうです。その1つに、大木さんと幼なじみにまつわるエピソードを教えてもらいました。

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私、同じ団地で0歳からずーっと一緒に育ってきた幼なじみがいるんですよ。その彼女が結婚で滋賀に行っちゃって。

新しい土地で頑張っている彼女を引っ越し後初めて訪ねて、「よくやってるね、元気でね」と滋賀の駅へ残し新幹線に乗ったとき、本当に意味が分からない気持ちになったんです。

見知らぬ土地で気丈に頑張っている彼女に「さすが、よくやっているなあ」という気持ちとか、でもずっと一緒に育ってきた彼女を知らない土地に置いてきてしまう心もとなさとか、結婚・新生活という自分とは異なるステージに行ってしまったことへの焦りとか、「もうあの団地で過ごしたフェーズは終わったんだな 」という寂しさとか…とにかくいろんな気持ちになって、新幹線の車内でとめどなく涙が流れたんです。 

そして、この話を職場の先輩に話したら、「大木ちゃんはその新幹線の中で距離を移動してたと同時に、時間も移動してたんだね」ということを言われて。このとき、言葉が1つ与えられたことによって、混とんとした感情の中に1つ考える軸ができたような気がしました。 

みなさんが過ごしている日常を劇的に変化させることはできませんが、番組を通じて、日常をともに過ごせる、ワンアップできるような言葉を手に入れてもらうことを目標に作っています。
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この話を聞き、ずっと私が抱えていた「言葉にできない」という気持ちは大木さんの中にもあったんだと知り、心にじんわりと温かいものが広がったような気持ちになったのを覚えています。
 
「言葉にできない、そんな夜。」は、大木さん自身が「言葉にできない側」だからこそ生まれた番組だったのです。

番組で見つけた、ともに過ごしたい言葉

大木さんが言っていた、「番組を通じて、日常をともに過ごせる、ワンアップできるような言葉を」ということ。
 
そんな言葉、私もたくさん見つけました。
この番組で知ることができた数多くの言葉のおかげで、世界の見え方が少し変わりました。
 
ここで、私が特に好きな言葉を紹介させてください。
私がこの番組に一目ぼれした時に出ていたテーマ、「昔よく聴いていた懐かしい曲を久しぶりに聞いたとき」の気持ちで放たれたこの言葉。

橋本愛さんの言葉 心臓にレモンを絞った感じ

…天才。「レモンを絞る」って唐揚げに対して使う言葉だけじゃないのですね…。あの心がぎゅっっっとなる感じがこの言葉に込められていて、代々受け継いでいきたいと思うすてきな言葉。

しかもこの言葉、橋本さんが収録中に初めて発表してくれた言葉らしいのです。衝撃でした。収録当時、副調整室にいた大木さんも驚きのあまりその様子をありありと覚えているということです。

あと「スター選手や推しが引退するとき」の気持ちで出されたこの言葉も。

ヒャダインさんの言葉 いろいろ思うことあるのに、私、ずっとありがとうしか叫んでいなかった。そういうことなんだろうな。ね。うん。産まれてきてくれてありがとう。私は感情を知ったよ。ありがとう。ありがとう。

ずっと好きだったバンドがいきなりSNSで「大切なお知らせ」という堅苦しい言葉を使って表明した解散。私自身何度も推しが1つの活動に終止符を打つ瞬間を見てきました。「なんで今?」「もっとライブ行っておけばよかった…」いろんな思いが入り交じりますが、結局最後は「ありがとう」なんですよね…。そして、この推しがいたからこそ、”楽しい”だったり”生きててよかった”だったり、いろんな感情になれたんです。私が心の中に置いておきたい言葉ランキング、殿堂入りです。 

推し関連でいうと、大木さんが印象的だと言っていたこの言葉。

スピードワゴン小沢さんの言葉 添え

これは、番組レギュラー化にさきがけて放送した特番で「推しがデビューするとき」の気持ちとして出された言葉です。
今までみたいにはもう推せない、けど触れていたい。もう推しとは言えないけど、添え。

秀逸です。好きだったインディーズバンドがメジャーデビューすることになって、別に離れるわけではないのに何か寂しい、でも陰ながら応援していますという気持ち。私の心にも思い当たる節がいくつもあります。
 
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、「言葉にできない、そんな夜。」での小沢さんのMC、最高なんですよ(誰)。小沢さんが紡ぐ言葉には隠し切れない教養の高さと、笑いのセンスが詰まっていて。大木さんも「この番組を通して、スタッフ一同小沢さんのことが大好きになりました」と言っていましたが、私も激しく同意です。

画面越しのあの人も、わたしと同じ

番組で取り上げられたテーマは多岐にわたる

これらは番組で取り上げられたテーマの中でも私が特に気に入っているものですが、この状況を経験したことがある方いますよね???(いると信じたい)
「言葉にできない、そんな夜。」を見ていると、画面越しに見る出演者の方も「あるある~~~」「わかる」と言っているのです。え…?こんな有名な方も私と同じ気持ちになったことあるんだ、うれしい……と勝手に親近感がわきます。
 
大木さんは番組についてこうも話していました。
「このすばらしい出演者の方々も、私たちと同じ感情なんだ」と感じたうえで、「こんな言葉で表現することができるんだ!」と新たな言葉を手にし、世界を新たに捉え直すことができると思っています。

今までは、「”自分の言葉”って何…語彙力 ごいりょくないし無理…」と思ってきましたが、新たに言葉を生み出そうとするから難しくなっているだけで、この番組に出てきた言葉を借りればいいんだと思うようになりました。

言葉が生まれるその瞬間に立ち会う

さて、制作者の大木さんと会った私。
実は、収録現場にもおじゃましました。

本がびっしり天井まで積まれているようなセット
本がびっしり天井まで積まれているようなセット

いつもテレビで見ている光景が画面を通さずに目の前に広がっている。
え…?幻ですか…?
いやいや、頬を引っ張りましたがしっかり現実でした。

お題に対して、出演者のみなさんが自分の過去を振り返ったり、他の方の言葉を知ったりしながら自分の言葉を探し、見つけていきます。もちろんスパッと出てくる言葉もあれば、悩んだ末に出てくる言葉もあって、「みんな最初から言葉を持っているのではなくて、探しているんだな」と思い少し安心しました。
ちなみに、私も出演者のみなさんと同じように「自分ならどう表現するかな…」と考えながら見ていたのですが、自分の気持ちにしっくりくる言葉は全然思い浮かびませんでした。

私の気持ちにぴったりな言葉が出た瞬間は、「うわー!すご!めっちゃいい!」と大声ではしゃぎそうになりながらも収録中なので自制。ずっとその言葉が頭の中で回り続けていました。その言葉、今すぐにでもご紹介したいのですが、盛大なネタバレになりますので自粛します。
 
この収録現場を通じて印象に残っているのは「尊重」です。
収録では、たとえ自分と考えが異なっていてもそれぞれが表現する言葉を否定せず、「そういう考えもあるんだ、面白いね」と受け入れる、やさしい空間が広がっていました。

よくよく考えると、自分が言葉にできない原因の一つに「他者の存在」がある気がします。間違っていたらどうしよう、他の人にも受け入れてもらえるだろうか…と恐れてしまう気持ちによって、言葉を押さえつけている自分がいたのだと思います。でも、この空間を見ると、間違いなんかなくて、1つの気持ちでも自分は自分、他人は他人の捉え方があって表現も違うんだと感じたら、少し楽になりました。
 
最後に、小沢さんはやっぱりめちゃくちゃ面白い…!!!
的確に場を回し、どんな展開でも必ず面白く締める、安全安心の小沢さんでした。

言葉を探す旅は一生続く

さてここまで、”勝手に「言葉にできない、そんな夜。」広報大使”のひとり言をお送りしてきました。
 
私の原点にある「自分の気持ちを自分の言葉で表す」ということ。
「言葉にできない、そんな夜。」を見たことで、できるようになりました!自信がつきました!とまではまだまだ言えません。私の語彙力ごいりょくの低さは変わりません 。

でも、今まで私が抱いたことがあっても言葉にしてこなかった気持ちを、番組内でいろんな方が言葉にしてくださって、ここまでの人生も結構良かったなという気がしてきましたし、これからの人生もちょっとだけ明るくなる気がしています。

これからもこの番組とともに、自分に合う言葉を探し続けようと思います。

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私の好きな番組の話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
 
今回私が収録にお邪魔した回は、7月22日(金)夜10時にEテレで放送予定です。

テーマは、「キュンとした瞬間の気持ち」「味覚が大人になったと気づいたときの気持ち」「最後の試合・ラストチャンスを終えたときの気持ち」。ゲストは木村カエラさん・佐久間由衣さん・板垣李光人さん・金原ひとみさんというさまざまなジャンルの第一線でご活躍されている方々。そして、MCはスピードワゴンの小沢一敬さん。今回は特に1つのテーマでもみなさんの感じ方が全然違っていて、めちゃくちゃ面白かったです…!そして、毎度のことながら”小沢節”もさく裂しております。

(左から)木村カエラさん、金原ひとみさん、板垣李光人さん
MCのスピードワゴン 小沢一敬さん、佐久間由衣さん
(左から)MCのスピードワゴン 小沢一敬さん、佐久間由衣さん

もし少しでも興味がわいた方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。私もテレビの前でしっかりリアタイします!(再放送・見逃し配信もありますので、リアタイできない方はそちらもどうぞ)

「言葉にできない、そんな夜。」
金曜【Eテレ】後10:00〜10:30

<次回放送予定>
【Eテレ】7月22日(金)後10:00~10:30
※再放送【Eテレ】7月26日(火)前0:00~0:30(月曜深夜)

最後は、「言葉にできない、そんな夜。」の始まりを飾るいつもの言葉で締めたいと思います。

「言葉にできないその気持ち こよい言葉にしてみませんか?」

NHK広報局note編集部
藤本星香

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