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「お母さんはどんな仕事をしているの?」我が子の質問に胸を張って答えられるようになるまで

NHKで働いて18年目の山中と申します。
みなさまからお預かりする受信料を取り扱う業務をしています。主に、お客様から放送受信契約のお手続きを承ったり、NHKに対するご意見を伺ったりする仕事です。

プライベートでは、3人の子どもの母親です。社会人3年目に子どもを産み、毎日、仕事と子育てをあわただしくこなしています。 

毎日、仕事が終わりダッシュで学童へお迎えです。その後は、大急ぎでご飯を用意して、寝る時間から逆算し、お風呂と歯磨きと明日の用意をさせて…あっという間に寝かしつける時間になります。毎日バタバタで、テレビをリアルタイムで見る暇なんてありません。
家族で落ち着いてテレビ画面を見るときは、リアルタイムのテレビ番組ではなく、録画したテレビ番組や、ネットの動画コンテンツを見る…という日常です。

テレビ局に勤めているのに、我が家ではテレビを見る機会があまりないし、私の仕事も直接、放送に触れる仕事ではなく…。我が子から「お母さんはNHKでどんな仕事をしているの?」と聞かれても、説明が難しく、うまく話すことができませんでした。

そんな私ですが、昨年度、自身の仕事について見直す機会がありました。

実は、東京都内の小学校で『放送局について』の授業の“先生役”を務めることになったのです!!

どのように授業を組み立てるかから始まり、実際に生徒さんたちとのやりとりの中で、改めて、自分の子どもに「お母さんの仕事ってね…」とテレビについて、NHKについて語れるようになりました。もしよければお付き合いください。

「小学校で"先生役”をやってみませんか?」

ある日、上司からこんな提案が持ち掛けられました。

小学校高学年の社会科の学習では「情報」や「放送」などメディアの役割について学ぶ機会があります。
その一環として、都内のとある小学校で、NHKの技術スタッフが出前授業をトライアルとして行うことになり、そのお手伝いに進行の”先生役”として参加しないかと言うのです。

相手は、小学5年生の子どもたち。
生まれたときからインターネットがある世代の子どもたちって、きっと我が子と同じで、「放送」と「配信」の区別がつかないんだろうな…。

番組制作をしない職員がテレビ局について説明するということに、はじめは不安でしたが、普段はあまり関わることのない技術セクションの方々と協力して、いろんな工夫をして取り組みました。

技術のメンバーと、内容を組み立てること2か月。いよいよ本番となった矢先に…

急遽きゅうきょオンラインへの変更!秘策が功を奏す

当初は学校に訪問し“対面”での開催を予定していましたが、年明けになって新型コロナウイルスが再び猛威を振るい始め、開催2週間前に急遽きゅうきょ“リモート”に切り替えることになったのです。

画像 オンライン授業のようす
画像 先生役の2人
リモートで授業を行いました。”先生役”の2人。
左:1年目の技術職員。右:筆者

しかし、いざリモートとなると、対面での授業と違ってお互いの反応が見えづらいので、子どもたちを飽きさせないように工夫することが必要になってきます。
そこで組み込まれたのが、『バーチャルスタジオ見学』です!

360度カメラで朝の情報番組『あさイチ』のスタジオの様子を撮影し、スタジオの裏側まで紹介できる動画を作り、バーチャル見学を実施しました。
さらに、そこに担任の先生のアバターを投入!

画像 バーチャルスタジオ見学

子どもたちは大喜び!大好きな担任の先生がアバターになって、『あさイチ』のスタジオ内を自由に動き回る様子に笑い声や歓声が上がり、私たち先生一同、うれしく思いました。

楽しく見学をしながら、
・スタジオ内では天井にはこんなにもたくさんの照明があるんだ!
・クレーンカメラ大きいなあ!
・カメラは何台もあって、副調整室にあるたくさんのボタンで映像を切り替えていたんだ!

と、テレビの舞台裏を見ることによっていろいろな気づきがあったようです。

画像 たくさんのスタッフ
放送の裏側にはたくさんのスタッフが。

さらに、NHK放送センターの駐車場にいる技術職員とオンラインでつないで、中継用のカメラや中継車を紹介しました。

画像 中継用のカメラ
画像 中継車

カメラマンが撮影した映像や音声は、放送局の副調整室で音声や映像の色味を調整しますが、野球やゴルフなどのスポーツ中継や音楽ライブなどの野外で撮影する場合や、災害の現場などから中継を出す場合などは、中継車が副調整室の役割を果たします。
技術職員が中継車の車内のいろいろな装置のボタンを押して説明します。
画像が入れ替わる度に、子どもたちの「おー!」という反応が嬉しい!

画像 中継車内のようす

中継車で調整された映像や音声は、屋根にあるパラボラアンテナから、宇宙にある人工衛星にむけて送信され、放送局へ届けられます。

職員がそんな説明をしながらボタンを押すと、車の屋根の上で畳まれていたパラボラアンテナがウィーンと起き上がり、人工衛星がある南の空に向かってスタンバイします。
ゆっくりと立ち上がる姿に子どもたちからは「おお~!」「すげー!」などの歓声や拍手がたくさん湧き上がりました。

画像 パラボラアンテナ

このほか、こんなテーマでもお話ししました。

『ニュース番組ができるまで』
毎日の事件や出来事を取材し、「正しい情報かどうか、放送するかどうか」や「どのように放送するか」など、たくさんの人たちが関わり、複眼でチェックしながら、確かな情報をいち早く届けるための工夫や努力をしています。

『放送がみんなの家に届くまで』
中継車の紹介やバーチャルスタジオ見学も交えながら、ロボットカメラや報道ヘリコプターの解説などを行いました。災害が起きたときでもすぐに対応できるよう常に準備をしています。

画像 番組がみんなの家にとどくまで

また、NHKの災害報道や防災への取り組みについてや、字幕付き放送や手話ニュースなど、誰もが安心して視聴できる放送に取り組んでいること、公共放送と民間放送の違いなどについてもお話しました。

これらの内容は『NHKジュニアブック』にも掲載しています。

そうか、テレビの「電波」ってわからないのか!

今回、授業の準備をする過程で、1枚追加したスライドがあります。
それは、「テレビの電波とはなんぞや?」というものです。
提案したのは、私と一緒に先生役をした、入局1年目の技術職員Tさん。私よりもずっと子どもたちに歳が近い“先生”です!

画像 家のテレビはどうやって映るの?

授業で、子どもたちに向かって東京スカイツリーから電波が届くことで各家庭にテレビが映る仕組みを解説するT先生。

「これは放送波と言って、インターネットができるずっと前からあった仕組みなんですよ~!」

…そうか、そう言われればそうだ。

実際に我が家で子どもたちと一緒に過ごしていて思うのが、今の子どもたちは「放送」「配信」の区別がつかないんだなあということ。テレビの生中継を「生配信」と言ったり、テレビをつけていると「トイレに行くから停止ボタン押して!」と言われたり。
赤ちゃんの頃は、テレビの画面を指で一生懸命タッチして、画面が変わらないのを不思議そうにしていました。(どうやらタブレット端末と混同していたようです。)

インターネットができるずっと前から生きていた私には「そんなこと疑問にも思わなかった…」とTさんの若い視点に感心してしまいました。これぞジェネレーションギャップ。

およそ2時間の出前授業。さまざまなメディアの中に『放送』というものがあり、そこで働く人々が、正確でわかりやすい情報をいち早く伝えるためにいろんな工夫や努力をしていること、「みんなの命を守る」仕事をしているのだと、自分なりに説明しました。

正直、授業をする前はちょっと不安でした。

テレビ見てない子多いんだろうな…
ちゃんとわかってもらえるのかな…
なんて考えて、ドキドキしていました。

いざ授業を開始してみると、子どもたちは興味津々に聞いてくれて…
質問が止まらないほど盛り上がりました!

子どもたちの質問はさまざま!
たとえば…

Q:アナウンサーにはどうやったらなれますか?
NHKのアナウンサーたちがアナウンサーになったエピソードはこちらのウェブサイトにあります。

Q:中継車の点検にはどれくらい時間がかかるんですか?
みなさんに見てもらった、衛星に電波を発射して映像音声を伝送するタイプの車両は、毎日1時間ほどかけて点検しています。災害時など、いつでも出られるよう、緊急報道に備えています。

Q:(NHKが今年97歳ですと授業で伝えたところ)97年も続いた理由は何だと思いますか?
最後のこの質問には、「NHKを見てくれるみなさんのおかげです!」と講師陣みんなで答えました。ちょっとジーンときてしまいました。

そして、一緒に先生をつとめた入局1年目の技術職員にも私にも、そして一番若い子どもたちにも共通の話題がありました!
その話題は「給食」。アイスブレイクとして、授業の冒頭で「好きな給食はなんですか~?」と聞いてみると、みんな元気よく答えてくれました。

「カレー!」(これぞ定番!)
「揚げパン!」(令和の世にもまだ健在のようでホッとしました)
「キムタクごはん!」(キムチとたくあんの混ぜご飯だそうです!私が小学生の頃はそんなもの無かった…)

一気に盛り上がり、子どもたちはリラックスした様子で授業に臨んでくれました。
みんな大好き給食。なつかしい気持ちでいっぱいになりました。

出前授業で伝えたかったこと

今回の授業では、「人々の生命と財産を守ることが公共放送NHKの役割」であることを子どもたちに伝えました。
災害が起きたときに早く正確に情報を伝えるためにNHKがしていること。そのための体制と設備。NHKは人々の命と財産を守るための放送をしなくてはいけないことは、法律で決まっていること。先生役である私たちも身が引き締まる思いでした。

冒頭にも述べましたが、私には3人の子どもがいます。
我が子から「お母さんはどんな仕事をしているの?」と聞かれても、きちんと説明できず、あいまいにしてしまう自分がいました。受信料制度にはいろいろな意見があるからです。

以前、同じ職場の先輩が、
「僕は日本を守るためにこの仕事をしているんだよ、と自分の娘に話をしているんだ!」と語っていました。
その時は「スケールの大きな話だな、子どもにそんな話をするなんて、ちょっと、こそばゆい感じだな」なんて思っていました。
でも、今回の出前授業の“先生役”を経験して、「人々の生命と財産を守ることがNHKの使命」であることを再認識しました。

私も、その使命を果たそうとしているNHKの職員のひとりです。
いつもは“ガミガミうるさいお母さん”してますが…
今度はもう少し胸を張って子どもたちに話ができると思いました。

今日もいろんなことに取り組んでいます

私たちNHKの職員は、それぞれのセクションで、今まで以上に「人々のために何かできないか」を日々、模索しています。

私が従事している受信料を取り扱う仕事も、日々目まぐるしく変化しています。受信料に関する内容をご説明するだけではなく、NHKの放送番組や防災、就活などのキャンペーン展開など、テレビを通してだけではなく、みなさまと直接触れ合うことで、公共放送NHKの情報をお届けしていく・・・というような、今までよりも幅広い仕事にもチャレンジしています。
『NHKへの理解・納得をしていただく』ことで、NHKがみなさまに必要とされる存在にしていこうという思いがあります。

今回の“先生役”はそんな試みのひとつです。記事を読んでNHKの放送はもちろん、こういった活動にも興味をもっていただけたらうれしいです。

そして私自身に立ち返ると、今回のことは、自分の子どもに「お母さんの仕事ってね」とテレビや放送、受信料のことを伝えるきっかけになりました。すこしだけ、子どもたちに背中を見せることができたような気がします。 

今日も明日もまたバタバタと過ごしていくのでしょうが、いつか、子どもたちが大きくなった時にゆっくりと仕事について語り合えたらいいな・・・そう思いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

画像 筆者と子どもたち
(長男が撮影)

NHK首都圏局 池袋営業センター
山中 千絵子

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