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ほとんど問題ない話が盛り上がる話

日曜日のオリックスvsロッテの例の話。だいぶ盛り上がっているが、全てを見た訳ではないものの理論的に説明している記事、論評、Twitter、YouTubeは、ほぼないと言ってもいい。ここはきちんと公認野球規則に照らし、理屈での正誤を確認してみる。

一言でいえば、白井審判員は、佐々木投手にストライク・ボールの判定に不服があったと判断し、警告を与えたというのが一番、自然な見え方である。理由は後述するが、公認野球規則では、このように定めている。

公認野球規則

8.02 審判員の裁定

(a) 打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。

【原注】 ボール、ストライクの判定について異議を唱えるためにプレーヤーが守備位置または塁を離れたり、監督またはコーチがベンチまたはコーチスボックスを離れることは許されない。もし、宣告に異議を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる。警告にもかかわらず本塁に近づけば、試合から除かれる。

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従って、規定上では何が問題があるか?と言われれば全くない。白井審判員が何か因縁をつけたとか、威圧的な態度をとったと意見が多く見受けられるが、日本の最高峰であるNPB審判員が、野球規則の規定上にないことは決してしない。例えば、投球が打者に当たった場合、一般的にデッドボールというが、これは和製英語であって、規定上に用語でないから、決して公の場所ではその用語を使わない徹底ぶりだ。当然、白井審判員の公認野球規定を熟知した上での行動だったという事は間違いない。

規定通りだったとしても?

他方、「他にやり方があったのでは?」とか「イニングの間に言えばいいのではないか?」という意見もあるが、上記の規定を読めば警告の次に退場がある厳しい規定であるから、本項の適用は、例えばイニング間にやってしまうと退場するにはできなくなる。さらに今回は注意ではなく「警告」であるならば、マウンドに行くこと自体はとりわけおかしな話でもない。
この仮説が正しいのであれば、何の問題もないはずで「何か問題でも?」と言いたいところではあるが、色々なコメントを見るとよく出てくるのが「威圧的」という単語。しかし、これは見た人の感想であって、公認野球規則を超越するほどの説得力がある訳ではなく、せいぜい「見た目が悪かった」というくらいの話にしかならない。

答えず耐えるしかないのか?

試合後に取材陣の質問に対して、白井審判員とサブ・クルーチーフの島田審判員は「何も話すことはない」と語ったが、その理由は2つあると思われる。1つ目は、あくまで野球規則上の判断であるから、とりわけ答える必要はないという事。杓子定規で不親切ではあるものの、確かにその通りと思われる。審判がいちいち規定の適用を説明する必要はないだろう。むしろ2つ目の方が大きいと思うのだがNPBの審判員、とりわけ当該の審判員が答えても、さらに炎上するだけで、まったく意味がないから。過去にも判定トラブルで、試合後、審判員が発言をしたことで、言葉尻をとられ、また揚げ足をとられた事例は多く発生したことがある。これでは答えたくないと思うが道理であり、不要の混乱や事実が歪んで広がる可能性は大である。そしておそらくは、過去の事例からして、近々の対応を見てもNPB審判部としての方針とも考えられる。

まとめ

以上の事から、今回の件をまとめると、

  • 野球規則上、問題はない

  • 対象の投手が話題の投手

  • 見た目が悪い

  • 他の方法は?と言われても難しい

  • 規定まで掘り下げて意見・解説する人は少ない

という話になる。振り返れば「実はこれって大したないんじゃね?」になるのだが、盛り上がりすぎている感がある。

見え隠れする大きな課題

しかしながら、これには大きな課題がスポイルされていると考える。本件に限らず、とりわけ判定を巡るトラブルでは、当該審判員が矢面に立たされ、発言することも許されず、ただ耐え忍んでいるだけ。そして、誰も公式に説明する人がいないという事。結果的に野球規則通りであったにも関わらず、その規則を知らない人たちのバイアスがかかりまくった「感想」が支配していくことが、過去から現在もずっと続いている。これ野球という競技を棄損させて続けていることにもなる。今回のに限らずNPBの中で話は、NPBが公式に規定に照らして、説明する必要があるのではなかろうか。

追記

今回の件で、なかなか面白かったのが里崎チャンネル。審判寄りとも言えないが、他ではない意見が興味深い。

https://youtu.be/7VwbzRHPRWw

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