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被災地から考える新型コロナウイルス対策−その③【物資とデマ編】


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最近、大阪市が防護服不足から雨合羽の寄付を募集し、すぐさま沢山の物が集まっているようですね。災害地で毎回物資にまつわるドタバタを見ていると、沢山の人の協力はとても素晴らしいものですが、届いた物の仕分けやその後の分配などはどうするのでしょう。きっと、新品や中古、サイズもバラバラ、雨合羽以外のものも一定数含まれているでしょう。行政職員がそれらの仕分けに手を取られるのか?などと考えると、現場は混乱していそうです。
必要最低限の物資が行政にも集められない事態では、この先災害が起こっってしまったら更に混乱するのでは…と不安が募ります。
そんなわけで、今回は物資とデマについてです。

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緊急的に支援が必要な物資

避難所を開設するには、沢山の物資が必要です。以前避難所編で紹介したようなテントなどの3密対策グッズに加え、避難者全員分のマスクや消毒。集団感染防止のために区切れば区切るほど、消毒も数が必要になるのでは。また、外部からの接触を減らすには、面会などをモニター越しなどにするという手段も考えられます。

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災害ボランティアセンターを実施するにも、オンラインで参加申し込みができるシステムや、非接触で体温を図れる機材、活動に使用する防護服、マスクやアルコール消毒などの確保が必須です。
ただ、今の状況で本当にこれらの必要な資機材を集められるでしょうか。医療現場でさえ、物品が少なくそんな意味でも医療崩壊が近いのではとも言われるところ。

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色々な企業が必死に生産量を増やしていますが、被災地では一気に衛生環境が悪くなるので、大量の衛生用品が必要になります。
早く需要と供給のバランスが安定してほしいと願っていますが、これは全体の供給見通しや流通の流れが見えないと、不安からの買いだめが減らないのではとも思います。

こうした点でも、災害発生直後から、行政というよりも政府のサポートが必要でしょう。避難所、災害ボランティアセンター(が開設されるならば)それぞれに必要な物資を全国のバランスを見て手配してほしいと思います。

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*今までのお決まりでいくと、スコップや一輪車など災害ボランティアセンターの開設に必要なものは、社会福祉協議会間で調整したり、民間から寄付してもらったりという形でした。しかし、近年は災害ボランティアセンターで活用する物資を含めた復旧に必要な物資をプッシュ型支援で調達するということが可能になってきています。


物資を送る支援

被災地の支援として、物資を送る方法もあります。被災地に行く時間的/体力的余裕がなくても誰でもできるとして、色々な理由からこの物資支援をされる方もいらっしゃいます。

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ただ、以前のnoteにも書いたように、現地にいると何度も、どないすんねん!と思うぐらい大量のタオル・おむつ・軍手・古着・水・食器…などなど必要以上の物が集まる光景を目にします。

何かしたいという気持ちが物資を送る、という形につながることも多くあります。もしこの先、新型コロナウイルスの影響でボランティア活動が縮小か禁止などされた場合、「何かしたいから物資を送る」という層が普段よりも多くなるかもしれません。
そうなると、いつも混乱する物資受け入れ現場は更に混乱が生まれるかもしれません…。
物資を送るのが悪いとは思いませんが、ぜひ状況をよく吟味して、物資が足りないという情報の新鮮さと送るまでのタイムラグなども考えて行動に移していただければと思います。(ダボつき防止で、まとまったロットを送る企業などは返送票(着払い)を付けて送ってほしいとも思います)

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また、受け入れる行政側の問題でもあるわけですが、これは支援物資の受け入れという問題が軽視されているという背景もあります。物資対応の担当職員を配置する予定がされていない市町村もあると聞きます。その問題は、事前に輸送業に関わる業者などと災害時応援協定を結んでおくことで解決できます。実際に物資関連の作業を大手輸送企業(ク○ネコとかサ○ワとか)に委託していた被災地もありました。物資置き場の中の整理から各地への配送までのプロなわけですから、行政職員がアタフタやるよりも格段に効率が良いはずです。

ただ、基本的な考え方は、ちゃんと届けることができないのであれば、物資ではなく義援金や支援金などのお金を、ということです。(送るのは誰でもできるのです)


デマ

第1回では、この物資までの問題提起をしましたが、もう一つ。
デマについてです。
もう既に、新型コロナウイルスに関する色々なデマや間違った情報が流れています。
残念なことに、災害時はデマの拡散ととても相性が良い。

「ライオンが動物園から逃げ出した」というTwitterの一件は記憶に新しいのではないでしょうか。あれは完全なる「ネタ」投稿だったわけですが、災害時にはそんなネタ情報以外にも沢山の真意が怪しい情報が広がります。

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○○ナンバーの車が怪しい、自衛隊のような格好をした人が家に来て云々、なんて話は山程あります。もちろん、最初に発信した人は見の危険を感じたのかもしれません。ただ、そこから背びれ尾びれがついて、段々歪められていくのです。

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一人ひとりが安全な状況に置かれていないと、その不安感からそういった発信はしやすくなりますし、拡散の手伝いをしやすくなります。
愛知県警の誤情報ツイートが急速に拡散されたのも、新型コロナウイルスという得体のしれない物への不安感から普通の人一人ひとりがリツイートした結果でしょう。
普段よりも世界全体を不安が覆っている状態に、更に輪をかけて災害が起きて身の回りの安全が脅かされたら。デマや色々な間違った情報が、善意や不安感によって今まで以上に拡散されてしまうのではと危惧しています。

今の内に信用できる情報源を決めておくことは有効かもしれません。行政の公式HP・SNSアカウント・報道機関など、一次情報や現地に直接足を運んでいる情報源に限るなど、自分で今一度情報の取得の仕方を見直すのが良いでしょう。
ちょっと過激ですが、今回話題になっているようなデマを拡散しているアカウントのフォローを外すなどもありです。お友達だと色々角が立つかもしれませんが、その方に一言お知らせするのも良いでしょう。これは一人ひとりが気をつけなければ防げません。
もっとも、関東大震災の時にも色々なデマが広がったと言われているので、一朝一夕で解決できる問題ではありませんが。

ショックな情報があっても、落ち着いて、情報の鮮度を確かめること。盲目的にならずに、その情報の側面や裏面を考えること。一つひとつ、地味で面倒ですが、一人ひとりが気をつけなければいけないことです。逆に、一人ひとりができることです。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!