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青春は黒色だ。映画「青い春」を見た

ずっと気になっていた作品を夏の終わりに見ることができました。

漫画家・松本大洋の同名短編集を松田龍平主演で実写映画化した青春映画。「ポルノスター」「ナイン・ソウルズ」の豊田利晃が監督・脚本を手がけ、原作に収録された複数のエピソードを基に不良高校生たちの閉塞感に満ちた青春の日々を鮮烈に描き出す。男子校・朝日高等学校の3年生になった九條と幼なじみの青木は、仲間たちと一緒に授業をサボって屋上に集まり、柵の外側に立って手を叩いた回数を競い合う危険な度胸試し「ベランダゲーム」をする。新記録を出した九條は学校を仕切る権利を手に入れるが、彼にとってはゲームも学校を仕切ることも無意味なことだった。漠然とした不安と苛立ちを抱えながら退屈な日常をやり過ごす彼らに、やがて進路選択という現実が否応なく突きつけられる。

引用元:映画.com

10代って存在自体がエネルギーの塊で、感情の渦なんですよね。それでいて多感な時期はあまりにも短く、激情より儚いものはない。青春は研ぎ澄まされた心で、鈍の刃を振り回し、他人も自分も傷つける。松本大洋氏の描く若者の風景がとても好きだなあと思います。

この物語の主人公たちは高校三年生。高3ってある意味一番不安の大きい時期ですよね。卒業したら進学するのか、就職するのか、これから何をして生きていくのか、生きていけるのか、そもそも生きていたいのか?

その不安と向き合った結果、答えを出す人間もいます。「甲子園に行く」という夢が潰えてアウトローの世界に足を踏み入れる者。ウルトラ警備隊になりたかった男は、縦社会で媚び諂うことを是とした友人を刺す。余命幾ばくもない男は毎日学校に通い(寝てるけど)桜の木にたかる毛虫を採っては土に埋めてしまう。その姿を見た九條の「一番怖いのは、自分の欲しいものを知ってるやつだ」という言葉。

この映画、トーンはそこまで暗くないし普通に高校生がわちゃわちゃやってるな〜っていう日常も多いですけど、それ以上に物凄く重いです。明るいとか暗いとかじゃなくて重い……。

意図的に「黒色」が採用されているところからも、ああそういう……ってなんか納得してしまう感じなんですよね。スプレーの黒、黒塗りの車、学ラン。この色はラストまでずっと引き摺って、人を結びつけるし、分かつんですよ。凄すぎてもうこんなポエム感想しか出てこないよ。

あと学校の先生が基本的にちゃんと子どもの味方でいてくれるのがすごくいいなと思いました。先生たちはちゃんと生徒を励ますけど、道徳とか理想論とかではなくて、自分の本心で向き合ってくれてるなあと。

最近色々なコンテンツを見ていて、子どもだけで頑張りすぎていたり、大人が全然見えてこなかったりする作品をわりとつらいな……と感じているので、その意味でもこの映画は(一応)よかったな……と思いました。この映画2001年なんだなあ。



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