見出し画像

【禅 ZEN】困った時は坐禅『坐ればわかる 大安心の禅入門』星覚


三、心をととのえる

困った時は坐禅

 しかし、自分が不安な状態では、
他人を気遣う余裕が生まれません。
そんな時はただ坐り身体の声に耳を傾けます。
不安があるということは
身体と環境が調和していないということです。
第一章で身体を調整したように、
困ったことがあっても
頭で考えずに身体の声に耳を傾け、
よりよい方向に向かうチャンスとして、
精一杯そのまま反応する。
そうすると調和が生まれて、
困ったことは発見につながり、
その発見から自然と新たな道が開けてきます。
不安であっても安心していても
眼横鼻直は調え続けることができます。
たとえ頭が迷いの中にあったとしてもです。
 困れば困るほどわけあたえる。
とてもそれどころではない、
そんな時ももちろんあります。
それでも変わらず坐禅をするのです。
 坐禅を通じて私は身体を知りました。
手、足、頭がある、
殴れば痛いし、
命が生まれれば顔はほころびる、
失えば頬を涙が伝う。
身体は世界共通言語です。
国家、民族、宗教、言語、
様々な境を越えて自ずから道は開けます。
まず、どっしり地に根をおろします。
身体を調えれば心も整い、視界が澄み渡ります。
眼はまっすぐに輝き、姿勢が変わわり、
自己が変わり、世界が変わります。
不安や欲の苦しみは減り、
どう生きればいいのか、
言葉にならずともはっきり導きだされてきます。
 住むところはどうするの?
食べものはどうするの?
そうはいってもお金は必要でしょう?
 現実の世界では不安にはきりがありません。
私も不安がないわけではありません。
しかし不安をそのままに不安から自由になる道があります。
 道元禅師は『正法眼蔵随聞記』でこのように繰り返します。

  世間衣粮の資具は生得の命分なり。
  求むるに依って来らず、
  求めずとも来らざるにもあらず。
  正に任運として心をおく事なかれ
  (生きていくための衣食の資材は、
  人の一生に備わった分量がある。
  求めたからといって得られもしないが、
  また求めないからといって得られないものでもない。
  まさしく自然にまかせて心をつかってはならない)

 何を言っているのか
頭ではいくら考えてもわかりませんでした。
しかし坐禅で身体を調えることで、
忘れていたものをひとつひとつ思い出し、
世界の捉え方が変わり、見えてくるものが必ずあります。

「人間は根っこでは本当はつながっているんやね」
 天龍寺の笹川老師はそういって右手と左手を目の前に出します。
 片方の指でもう片方の指とけんかしてみるといい。
骨を折れるか。相手を傷つけることができるか。
できはしない。
ひとつにつながっていて、相手の痛みがわかるからだ。

  仏道をならふといふは、自己をならふなり、
  自己をならふといふは、自己を忘るるなり、
  自己を忘るるといふは、万法に証せらるるなり。
  万法に証せらるるといふは、自己の身心、
  および他己の身心をして脱落せしむるなり
  (『正法眼蔵(現成公案)』)

 宇宙にポツンと浮かぶ地球があって、
その上に独立したワタシがいて、
それとは別のアナタがいる。
現代社会ではあたり前の認識、
それをちょっと忘れて坐ってみれば
慈悲は曼荼羅のように広がり、
大きな循環の中にいる安心を感じます。
不安は消えません。
でもそのままで、不安とひとつになれば、
不安が不安でなくなります。
これは言葉遊びでも精神論でもありません。
身体という自分であって自分でないものを実際に調えていくのです。
寒くて震えている人を見たら一緒になって暖をとり、
飢えている人を見たら一緒になって食べ物をわかちあう。
そうすると自分から求めなくても必ず自然に道がひらけてきます。
 大丈夫、困ったときは困るしかありません。
 不安はお金を稼いでも、資産を築いても、社会的地位を得ても、
決してなくなることはありません。
災難に遭う時には災難に遭う、
そこから先に人知は及びません。
 お金がなかったらお金を使わない。
食べものがなければ食べない。
苦しいときは苦しい、困るときは困る。
他に方法はありません。
それを受け入れた上で、
今、ここでしかできないことをまっすぐに実践する。
それで飢えや寒さに生命を落とすことがあっても
それまでの生命と私は覚悟を決めています。
妻も同じ想いでいてくれます。
それでも私の家族は今、
生きています。
 足ることを知り、モノを大切にし、
わけあい、ゆずりあい、
自然の声に従って生きる人達が増えています。
身体を調えましょう。
身体はワタシでありアナタです。
心が澄み、環境が調い、
どんな状況でも心豊かに生きることができます。
 今、ここに坐ってみましょう。
私たちの誰もが天地をひっくり返すような力を持っているのです。
世界中の人が手をつなぎ、
自分の奥深くに流れる水脈に気づき、
静かにそれを共有し、
ただお互いを思いやって行動したら、
世界はどうなるでしょう。
人も社会も大地も海も、きっとゆたかになります。
この大きな家族が今日も幸せに暮らせるはずです。
決して夢物語ではありません。
 ここをいい星にしましょう。


こちらの内容は、

『坐ればわかる 大安心の禅入門』

発行所 株式会社文藝春秋
著者 星 覚
2013年10月20日 第1刷発行

を引用させて頂いています。




よろしければ、サポートよろしくお願いします❤ ジュニアや保護者様のご負担が少ない ジュニアゴルファー育成を目指しています❕ 一緒に明るい未来を目指しましょう👍