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新型コロナ罹患記録(2021年8月、院内感染⇨抗体カクテル療法)

1. はじめに

 この記事は、2021年8月末に新型コロナ陽性と診断された著者が、罹患記録として残すものです。新型コロナ以外の理由で入院中に院内クラスターが発生し、それに巻き込まれる形での感染となります。その為、陽性判定前からの入院・隔離であり、新型コロナの治療プロセスとしては、少々特殊なものになるかと考えています。

2. 私(罹患者)の背景情報

 私は30代男性で、コロナワクチンの接種はありません。※1
 新型コロナとは別の理由で入院していましたが、呼吸器系統の疾患ではないので、直接新型コロナと関わる病状ではありません。
 ただし、経過の途中で出てくる熱せん妄には、影響している可能性はあります。

※1 ワクチン接種の意思はありますが、大規模接種・職域接種・個別接種のいずれも予約が満杯で、取れないでいます。

3. 経過

# 8/22(日)【体温:36℃後半、症状:特になし】

## 午前8時頃?
・病棟の共同トイレ前で、若い看護師の方々が何かを「ヤバい」と話しているのを耳にする。
・六人部屋の病室の一角で、ベッドに横たわっていた所、病室の外がにわかに慌ただしくなるのを感じる。
・看護師の方から病室の外に出ないように通達がされる。また、病室の入り口からテープを広げて貼り付けるような音がしてくる。

## 午前9時頃?
・医師の方が防護服(※2)に身を包み、病院スタッフから新型コロナ陽性が検出された為に、入院患者の方々にPCR検査する事を告げられる。
また、コロナワクチンの接種有無や接種回数を確認される。
・PCR検査として、鼻の奥に綿棒を突っ込まれ、数秒間そのままにされる。(個人的には、大の大人が涙目になる程度の痛みが継続するものなので、避けたい検査です)
・医師の方が同室の入院患者の方に同検査を行われるとともに、数時間後に結果が出る旨を告げられ、医師の方は外に出る。
※2 防護服……ヘアキャップ、フェイスシールド、マスク、プラスチックガウン、ゴム手袋のセット。病室に入る前に着けて、病室から出る前に脱ぐ。脱いだものはゴミ袋に積めて病室の中に置いておく。一定の着脱マニュアルがあるように思われる。

## 午前11時頃?
・看護師の方が、病室内各個人スペースを仕切るカーテンを閉めるように指示される。自ら動く事が難しい方のカーテンは、その看護師の方が閉める。
・医師の方が陽性となった方々にその旨を伝える。六人部屋で3名が陽性となり、その時点では私は陰性だった。
・その3名の方々に、数時間後に病棟が移動になるので荷物をまとめて欲しい旨と現在はその病棟で受け入れ準備を進めている旨が伝えられる。陰性の3名も現在の病室での待機となる。
・陽性となった方々のセキの音がカーテンの向こうから聞こえてくる。

## 午後0時頃?
・突然、私も病棟が移動となる旨を伝えられる。荷物をまとめて内科の病棟へ移動する。移動先はトイレ付きの個室だった。この時点では、Wifiが通じていた為に、一般病棟の個室と思われる。
・移動ルートは固定のようで廊下の一部を担架で封鎖していた。
・移動する際に元の病室の入り口を見たが、防護服の着脱手順の説明が写真付きで貼ってあった。次の病室の入り口にも同様のものが貼ってあった。
・濃厚接触者として隔離される旨を告げられる。
・昼食は、発泡スチロールの食器でサランラップにてくるまれた状態にて持ってこられる。以後の食事も同様の状態にて持ってこられる。

# 8/23(月)【体温:36℃後半、症状:特になし】
・バイタルサイン(体温、血圧、血中酸素濃度)に特に異常はない。体感的にも異常は感じられない。

# 8/24(火)【体温:37℃後半、症状:関節痛/熱っぽさ】

## 午前
・特に異常はない。

## 午後2時
・全身の関節が痛み始める。

## 午後5時
・体温が37℃後半に達する。その他のバイタルサインに異常はない。
・熱っぽさが感じられる。
・再度のPCR検査をするが、陰性と判定される。
・熱が高くなったらナースコールで呼び出すように伝えられる。

## 午後6時
・夕食で、味覚異常が発覚する。味はあるが、淡白に感じられる。おそらくは、旨味を感じ取る感覚センサーが機能していない。

 # 8/25(水)【体温:38℃前半、症状:関節痛/熱っぽさ/
熱せん妄】

## 午前2時半
・夜中に目を覚ますが、夢と現実が混ざる熱せん妄のような感覚に陥る。午前0時までは寝ておかなくてはならないが、そこから2時間半経過しており、どうすれば良いか判断が付かないという意識にとらわれる。また、顔が硬直しており動かせなくなっているのではないかという妄想が起こり、歯をカチカチ鳴らす動作を繰り返す事で、その妄想を否定していた。
・30分程度で再度の眠りについた。

## 午前8時
・朝食で味覚が元に戻ったのを確認する。いくぶんか昨日より症状が楽になっているのを感じる。

## 午前10時
・体温が38℃前半に達する。その他のバイタルサインに異常はない。
・再度のPCR検査で陽性と判定される。抗体カクテル療法(※3)の同意資料を記入する。抗体カクテル療法は、新型コロナ感染初期に受けられる療法で、現在は高リスクの人物(高齢者や基礎疾患のある方、またはそれ以外のリスク要因がある方)に限られるらしい。
・看護師の方と荷物をビニール袋で包み、それらの荷物と共に別の病室へ移動する。移動先は六人部屋の病室ではあるが、奥にベッドが4-5個詰められており、普段は使用していない事をうかがわせる。この時点で、WiFiが通じなくなったので、隔離病棟の病室と思われる。
・病室の入り口近くの左手には高齢の女性が、右手には高齢の男性が、ベッドを使用している事が確認できる。
・私のベッドは入り口から右手の2つ目にあたる所となる。
・六人部屋の近くには、個室も用意されており、人工呼吸器に繋がれている方がいた。
・小便は尿瓶にて、大便はナースコールにてトイレまで案内する旨の説明を受ける。

# 8/26(木)【体温:37℃前半、症状:関節痛/熱っぽさ/セキ】
・引き続き、関節痛や熱っぽさの症状が続く。また、セキも出始める。
・高齢の女性が、看護師の方に呼吸の指導を受けているのを耳にする。いわく、呼吸が苦しい事に慌てる事で更に呼吸を必要として苦しくなる。その際は、気持ちを落ち着ける事。
・病室の奥のベッドが片付けられ、通常の六人部屋として使えるようになる。奥の2スペースに男性2名が追加される。ただし、入り口から左手2つ目のスペースは、荷物置き場としての運用となり消毒アルコール等が置いてある。
・私から見て左右両方の個人スペースにいる方々が、2回のコロナワクチン接種経験がある旨を医師の方に伝えていた。

# 8/27(金)【体温:38℃後半、症状:関節痛/熱っぽさ/セキ】

## 午前
・引き続き、関節痛や熱っぽさ、セキの症状が続く。
・医師の方から、抗体カクテル療法は現時点では効果の高い療法として知られている旨を再説明される。
・看護師の方が、抗体カクテル療法の開始の為に、点滴のルートを確保する(点滴の針を腕に刺しておく)作業を行われる。

## 午後4時
・抗体カクテル療法が開始される。心電計を付けて体温を計る。看護師の方が、点滴棒の先にぶら下げた薬液と腕の針をつなげる。20分程度かかり、5分ごとに体温を計る旨を伝えられる。
・先の20分で、体温が37度前半から38度前半まで上がる。体感的には熱っぽさが増した程度である為、その事を伝える。看護師の方が、1時間程度様子見される。
・看護師の方から体温が38度後半になるようなら解熱剤(座薬)を打つ旨を伝えられる。

## 午後6時
・夕食を取るが、明らかに体温が増しているのを感じる。看護師の方に体温を計って貰うと、38度後半に達していた。その為、解熱剤を打って貰う。
・体温が37度前半まで低下する。

# 8/28(土)【体温:37℃後半、症状:関節痛/熱っぽさ/セキ/のどの痛み/熱せん妄】

## 午前3時?
・夜中に目を覚ますが、夢と現実が混ざる熱せん妄のような感覚に陥る。強欲な病院に入院してしまっていて、ロボット掃除機のような高価な製品を買わされてしまったと思い込む。途中で妄想と気付き、手元の明かりを付けてベッドの端に座る。しばらくすると、平常に戻った。
・隣スペースの高齢男性が突然助けを求め始める。ナースコールで呼び出された看護師の方との話を聞いていると、放置されてここにいるという妄想にとらわれたようだった。

## 午前
・体温が36度台に戻る。ただし、セキは継続している。また、のどが痛み、固形食がのどに引っ掛かる感覚を覚える。水を飲むにものどが痛む。
・昨日の解熱剤が、大便と共に排出されたのを確認する。

## 午後
・体温が37℃後半になる。

# 8/29(日)【体温:37℃前半、症状:関節痛/熱っぽさ/セキ/のどの痛み/熱せん妄】

## 午前3時?
・夜中に目を覚ますが、夢と現実が混ざる熱せん妄のような感覚に陥る。成人の儀に似た何かで名前を貰うが、恨みを抱く誰かに復讐するなら、その復讐に因んだ名前となってしまうと思い込む。途中で妄想と気付き、手元の明かりを付けてベッドの端に座る。しばらくすると、平常に戻った。

## 午前
・体温が37℃前半になる。

# 8/30(月)-8/31(火)【体温:36℃後半、症状:セキ/のどの痛み/嗅覚障害】

## 午前
・体温が36℃後半になる。熱っぽさや関節痛はなくなるが、セキやのどの痛みは続く。
・料理から匂いがしない事に気付く。また、隣の高齢の男性は紙オムツを使っているそうだが、その交換の時も含めて一切の悪臭を感じていない事にも気付く。

# 9/1(水)-9/3(金)【体温:36℃後半、症状:特になし】
・料理から匂いがする事に気付く。その他の症状もなくなっている。

# 9/4(土)【体温:36℃後半、症状:特になし】

## 午前
・発病から10日目のタイミングで、PCR検査を行う。陰性と判定される。

## 午後
・看護師の方から隔離解除の為に別の病棟へ移動する事を告げられる。その為に、すべての荷物をビニール袋へ詰めておくように伝えられる。
・荷物が回収される。おしぼり3個と上下の入院着、新しいマスクを渡され、できる限り身体を拭いて着替え直した上で、どこにも触れないで立っていて欲しい旨を伝えられる。
・看護師の方と病室を出る。病室の入り口にて、スリッパの片方ずつをアルコール消毒しては病室の外に片足を置くという作業を行う。
・トイレ前の手洗い場スペースにて、看護師の方に頭を洗って貰う。デイルーム(患者や面会者の方々の交流場のようなスペース。その時点では倉庫のようになっていた)にて、頭をバスタオルで乾かす。
・次の病室は、陽性判定前にいた個室だった。
・次の病室の前にて、荷物は10日間ビニール袋から出さないように伝えられる。最低限スマートフォンは出して欲しいと相談し、出して貰う事に成功する。
・新型コロナの治療は、これで完了となる事を伝えられる。

4. 反省

 新型コロナは、ワクチンを2回接種されている方や1度感染した方でも再感染する可能性がある病気なので、下記の備えが参考になるかと思います。

# もしもの時の為の準備
・遺言書やエンディングノートを記載し、その存在を家族に明かしておく。
 ←新型コロナは誰がどこで感染してもおかしくないですし、新型コロナ以外でもリスクは存在しています。
・自宅療養や入院を、誰に(家族や職場等)、どのように(メールアドレスや文面等)連絡するか決めておく。
 ←判断力がある状態で決めておくと、後悔を減らす事ができると思います。

 # 入院する為の準備
・入院グッズを用意する。
 ←新型コロナで入院した場合は、入院時の荷物が一定期間(私の場合は10日間)は使用できなくなるようなので、通常使いのものと別に用意するか通常使いでも余剰のものを用意する事がオススメです。また、隔離時は、コンビニやシャワーといった病院施設も使えなくなる為、水なしで使えるポディソープやシャンプーといった製品もあると嬉しかったです。
・入院先でWiFiがない場合の備えをする。(特にメールやインターネットを使う予定がない場合は備えなくても良いかもです)
 ←入院先でWiFiが使えるか不明ですし、隔離されているならなおさら使えない可能性が高まります。携帯電話の通信契約やポケットWiFiの契約を検討・見直ししても良いと思います。
・周囲の方の光や音への対策をする。
 ←入院先が大部屋の場合は、周囲の方が付けられる明かりや音が気になる事があります。必要ならアイマスクや耳栓を用意されても良いかもしれません。

# 入院した時の心構え
・不都合は看護師の方へ積極的に伝える。
 ←看護師の方は、特に新型コロナのクラスター発生時は、忙しそうにしていますが、不都合があれば積極的に伝えた方が良いです。できるできないは看護師の方が判断します。場合によっては医師の方の判断が必要なものもあります。例えば、定期接種している薬の残りが少なかったり、水分が欲しかったり、布団の丈が短くて寒かったりと、治療に関わるものもあります。食事のご飯をおかゆに変えるのも医師の方の判断が必要な事があります。
・隔離解除時の荷物の扱いは、相談しておく。
 ←隔離解除時に荷物はビニール袋へ保管され、一定期間(私の場合は10日間)封をしたままにするように伝えられました。その前に、財布やスマートフォン等の必需品は、別途消毒して使えるようにならないか病院側と相談した方が良いと思います。

5. 捕捉

 私の場合は医師や看護師の方のご尽力により、新型コロナ感染から脱する事ができましたが、そうでないケースも多分にある事を忘れてはいけないと思います。メディア(インターネット等)でメッセージを伝えられるのは生還した方のみなので、この記事もある種の生存者バイアスを生んでいないか危惧する所ではあります。

ご援助頂く事があれば、治療費か生活費に使わせて頂きます。