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FAXの未来について思うこと。

20年以上も前からFAXは早晩になくなると言われてきた。FAX自体が好きで、どうしても使いたいという人もほとんどいないはず。それにもかかわらず、現場ではFAXの利用はなくならないばかりか、当社では送信枚数で過去最高を更新し続けている。これはどういうことなのか?

私は2年半前に当社ネクスウェイに赴任した。ネクスウェイはもともとリクルートのFAX部門が独立した会社で、紆余曲折を経て、現在はTISインテックグループの一角となっている。

リクルート流の営業は、マインドだけでなく仕組み的にも素晴らしく、当時のNTTなど大手のFAX事業者を打ち破ってきた歴史がある。現在ではFAXだけでなく、さまざまな通信手段をクラウドから使えるようなサービス展開をしている。
こんな会社にFAXの次の新事業を作るため赴任したわけだが、理解を深めるためにまず最初にFAXというものについて外部のコンサルティングの方の助けを得て調査を行った。

70-80年代、インターネットが登場するまでは、FAXはもっとも使い勝手の良い汎用かつ安価な伝達手段であった。準備するものは電話回線とFAX機のみ。コピー複合機が登場すると専用機を買う必要すらなくなった。
ちょっとしたメッセージも画像も簡単に送ることができ、発注書・納品書などの帳票類から、会議案内と出欠確認、販売促進などの用途にも使われているた。

日本の企業においては、QC活動などの業務の工夫とあいまって、FAXで届いたものに書き込みを入れて掲示したり、回覧したりと業務に深く組み込まれていった。FAXは送受信という意味では送達確認が別途必要など必ずしも完璧なUX(ユーザ体験)ではなかったものの、業務での利便性は、もっぱら「紙」というものの良さに起因している。

小売でも倉庫作業でも、業務の中には立ち仕事と言われるものも多いが、わざわざPCの前に座り、ログインをしてシステム画面をのぞき込んだり、メールをチェックしたりするのとは業務効率が格段に違う。目の前に紙があり、情報がすぐに確認できる。
デジタルマーケティングの世界では、ツークリックをワンクリックにするだけで購買確率が格段に上がるそうだが、それどころの効率の違いではない。ここには、ペーパーレスオフィスや電子書籍が流行り切らない理由と近いものがある。

時代は変わり、インターネットも普及した。スマホという人のすぐそばにデバイスもある。いくら紙の利便性、視認性が高いとはいえ、いくらなんでももう少しデジタルに移行してもよさそうなものだ。

ここに2つの壁がある。

ひとつはFAXが普及して、社会インフラ化してしまっていることだ。今回の調査でも、「相手がFAXしかないからFAXを送るのだ」という意見が多く聞かれた。実際には相手にFAXしかないということはないのだろうが、多数の相手にイチイチ確認して通信手段を変えるのも大変なのだろう。

もうひとつの理由が、FAXの汎用性である。受注業務、発注業務、納入検品業務、社内連絡、各種報告業務、など様々な業務で利用されているが、メールのような汎用ツールでならすべて置き換えられるものの、通常はそれぞれの業務システムがFAXを置き換えていくことになる。逆に言えば、置き換えができない小さい業務には、FAX利用が残ってしまうということになる。

さて、巷ではFAX廃止論が叫ばれている。しかし上記で述べたように、多種業務に渡って効率をあげている紙の良さを無理やり奪っても仕方がない。では、本当の悪は何か?そのあとの手作業がある場合である。
例えば、受信したFAXを大量の時間と人手をかけてシステムに入力する。特に元々送り手側ではデータになっていたものをFAXで送信しているケースも多く、これは無駄以外の何物でもない。また、送られたFAXを何かと突合する、検索するなども本来デジタルデバイスが得意なことであり、それを手作業で実施するのも大いに改善の余地がある。

となると、FAX自体を廃止するというのではなく、FAXで送ったものをデジタル化し、その後の処理をデジタルで行えればそれでよいということになる。最近、AI-OCRの性能も上がってきている。特定の条件下ではあるが、手書きですらそこそこ読めるレベルにまで進歩してきた。もちろん精度は100%には遠い。そうであってもUXの工夫で現場作業の効率を大幅アップすることができる。これは机上の空論ではない。

現在、ネクスウェイでは、特定業界の特定業務でのソリューションを準備中で、近々発表予定である。将来的には、その応用は他業界や他業務にも展開可能であると考えている。

さらに、お客様はFAXにこだわっているわけではない。FAXだけでなく、PDFファイルの転送、郵送、EDIなどどのような通信手段をとってもよいはずだ。多様な通信手段をクラウド上で統合的に提供するサービスは、CPaaS(Communication Platform as a Service)として注目されつつあるが、我々はまさにBtoBで帳票や情報をやりとりする基盤としての展開をもくろんでいる。このようなプラットフォームが広く使われるようになってくると、自然とFAX以外の通信手段に移り変わっていき、いずれはFAXも使われなくなってくるだろう。
このマイグレーションをサポートできるのは日本ではFAX、郵送、メール、SMS、EDIを扱っている日本では当社しかいないと考えている。


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