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新聞記事構成全体から編集意図と国際・国内社会の動きを読み取りましょう

<ニュースクリッピングを再開します>
私は、8月29日で66歳を迎えました。
最近は、物忘れが多くなり、身体の動きが緩慢になっていくことを自覚するものの、ものの見方は、視野が広がり、冴えてきたなと思いながら、
長老の諸先輩がおっしゃっていたことが段々、わかってきました。

私にとっては「いまさら…」「やっと…」ですが、
皆さんは、若いうちから多面的深堀思考を繰り返し、
シャープなものの見方と俊敏な行動ができることを歓迎します。

さて29日は、
都内の就活志望の高校生の面接指導をしました。
いまの高校生のなかには
志望先企業の興味ある商品・サービスを語ってもらうと、
その観察力と感度、伝える力はすごいな、と感心させられる生徒がたくさんいます。スマホの発達で、広範な情報を収集しようと、探すことが得意だからでしょう。

さらに「どうしてこうなるの?」の原因を究明し、
「どうしたらいいの?」の課題解決の深堀思考を養えたら、
さらに、頼もしい人になることでしょう。

大学生、若手社会人だけではなく、
高校性にも日経新聞とWBS(テレビ東京のニュース:World Business Satellite)をすすめました。

さっそく図書室に向かってもらえた生徒もいました。
先日、宇都宮商業高校を訪問しましたが、毎日、全国主要紙を読ませる習慣を持たせており、感心しました。

これから、原因究明して事実を受け止め、課題解決するためにはどうすべきか、モチ・スキゼミでは、わかりやすく解説していきます。

日経電子版 はじめの1カ月無料でお申し込み|日本経済新聞のニュース・専門情報 (nikkei.com)

<本日のコメント>
さて、本日の日経新聞の朝刊全体を俯瞰(ふかん)すると、
日経新聞編集部のデスク(編集長)の「いま、重要なのは、中国経済のゆくえと自動車・半導体・AI産業の覇権争いだよ」との編集意図が、
明白に見えてくる記事構成でした。

中国経済の減速が鮮明になり、日本は自動車産業という、日本の就業人口の13人に1人が従事している基幹産業をこれからも守り抜けるか、一つの大勝負となります。

世界の自動車市場への電気自動車の普及が加速するなかで
中国自動車産業の台頭に日本メーカーが対抗するには、
例えば、充電池(バッテリー)の進歩のなかで、いかに走行距離を伸ばせるか、そのスムーズな供給体制づくりがカギとなっていますね。

さらに
自動車にも使われている半導体、AIデジタル競争は、まさに米中の覇権争いの様相です。
中国共産党は、経済減速の矛先を高圧的な外交でしのぐ算段が見え隠れします。

米国も国内の経済対策のため、半導体、AIの輸出をすすめたい思惑から、かたわら米中の経済安定へ協力模索していますが、水面下ではますます覇権争いが激化していくことでしょう。

日本は、これ以上デジタル、半導体で引き離されないよう
政府は、半導体・デジタル産業を「国家事業」と位置づけました。
2023年4月の改定案では、国内で生産した半導体関連の売上高を30年に15兆円にする目標を掲げました。
国内の半導体拠点整備に2年で2兆円ほどの予算を投じる。
今年4月には次世代半導体の国内製造を目指すラピダスに新たに2600億円を補助すると発表しました。

海外でも政府による支援は盛んで、米国は5年で7兆円を支援し、
欧州は30年までに官民合わせて6兆円をそれぞれ見込んでいます。

さあ、これからが正念場ですが
今日の朝刊1面は、産業を興隆させるためには「すべては人材次第」であり、政府は国内企業に高度なエンジニア人材を確保するため、株式のストックオプション制度(株式譲渡)の優遇する法律改定をすることで、後押ししようとしています。

以下、記事を一つの流れから読み取り、
政治、経済、貿易、産業、行政、地域、仕事、暮らしのつながりがわかり、面白くなります。
そして、自分が、社会のためにつながり、役に立つことで、やりがいを持って生きる・働くことができることでしょう。


【貿易】経済観測


円安下の輸出 介護・生活用品に期待 ジェトロ理事長 石黒憲彦氏2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
輸出環境の厳しさが増している。
円安が進行しても輸出はなかなか増えず、東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に反発した中国は日本産水産物の輸入を全面禁止した。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の石黒憲彦理事長に聞いた。

(本文引用)
――円安下での輸出の現状をどうみていますか。
「為替レートをみると2021年から円安が25%も進行したのに、輸出は伸びていない。貿易統計によると、23年上半期の輸出は前年同期比3.1%増だったが、ジェトロがドル換算すると、6.7%の減少だった。輸出数量も22年にマイナスに転じている」

自動車伸びず
原因の一つはエネルギー価格が高騰して調達・生産コストが上がっていること。だがそれ以外の問題もある。
最も貿易黒字を稼いでいた自動車は半導体の不足で、
特に昨年は生産が停滞していたが、電気自動車(EV)への移行も影響している。米テスラなどのEVに需要が流れている」

「半導体製造装置の輸出が減少傾向なのは、米国による中国への輸出規制の影響もあると思う。中国経済の減速もあり、輸出の4番バッターだった自動車、産業機器などが伸びにくい」

――多くの大企業は海外に工場があります。
「完成品の工場が海外にあっても、今までは生産財や機能性部品は日本から輸出していた。
ところが近年のサプライチェーン(供給網)の乱れで現地調達に切り替える動きがある。ジェトロが海外ビジネスに関心が高い約3100社に聞いた調査では、円安が経営にプラスになると答えた企業は16.5%しかなかった」

――食品は円安で輸出が増えるメリットがありそうですが、中国は日本産水産物の輸入を禁止しました。
23年上半期の食品輸出は好調だったが、7月の貿易統計で中国向けは前年同月比23.9%減った。7月上旬に中国が示唆した日本産水産物に対する検査強化の影響と考えられる。今回の輸入全面禁止措置により、今後、水産物輸出にさらなる影響が生じることが懸念される」
中国に代わる市場を掘り起こすことが重要だ。メキシコのバイヤーを宮城県や福島県に連れて行ったところ、水産物や日本酒が好評だった。
欧州連合(EU)が原発事故後に導入した日本産食品の輸入規制を撤廃したのも、安全性をPRする上で追い風になる。欧州ではユズなどの果実が人気だが、水産物も輸出取扱認定施設が増えており、輸出拡大の可能性がある」

――食品以外で期待できる分野はありますか。
中国などで需要
ヘルスケアとライフスタイルが狙い目だ
例えば中国や東南アジアの富裕層には日本の質の高い介護が魅力だ。
介護関連の商談会は人気で中国に進出した介護施設もある。
中国では日本企業の大人用紙おむつが売れている
日本にはおしゃれで機能的な生活用品をつくる小さな企業がたくさんあり、これらも期待できる。この分野は米中の影響も考えにくい。
日本の中小企業のうち自社で直接輸出したことがある企業は1.2%しかない。市場調査や輸出実務などを支援し、輸出の敷居を下げることが重要だ」
(聞き手は編集委員 柳瀬和央)
いしぐろ・のりひこ 2015年に経済産業省を退官。NEC副社長を経て現職。
 

【国家政策】

●朝刊1面トップ 株式購入権を付与しやすく
政府、外部人材の確保後押し 新興向けに条件を緩和

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
政府はスタートアップが高度人材を確保しやすくするよう制度を改める。
スタートアップ向けの税制優遇を巡り、社外のエンジニアなど外部人材に
税優遇を受けられるストックオプション(株式購入権)を付与しやすくする。人の流れを強化し、新産業や新規雇用の創出につなげる。

(引用)

●米中、経済安定へ協力模索
商務相会談、半導体定期協議で合意「安保」以外で緊張回避

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
【ワシントン=飛田臨太郎、北京=川手伊織】
米国のレモンド商務長官が28日、北京で中国の王文濤商務相と会談した。
対立する半導体の輸出規制などで定期的に協議することで合意した。

対立の激化で米国は半導体製造装置の対中輸出が半減し、中国経済は停滞する。両国とも過度な緊張回避で国内景気を安定させたいとの思惑は一致している。(総合2面参照

(引用)
レモンド氏は半導体規制など対中経済政策を所管する。
2022年10月、先端半導体の技術や製造装置を中国に輸出するのを禁じた。
今年1~6月の製造装置の対中輸出額は前年同期比でおよそ半分に減った。

中国は23年、米半導体大手マイクロン・テクノロジーからの製品調達を制限し、半導体材料の輸出も許可制にした。
米政府は8月上旬、半導体や人工知能(AI)、量子技術を対象にした対中投資規制を導入すると発表。
中国は対抗措置を辞さない構えを示し、対立がさらに深刻化する懸念が生じている。

●増える外国人材、どこから?中国は減少、東南アジア軸に

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
少子化による人手不足で外国人材が不可欠の存在となった。
円安や賃金水準の伸び悩みで新興国と日本の賃金格差は縮んでいく。
今後は中国からの来日は減り、ベトナムなどの人材が増える見込みだ。
各国との移民受け入れ競争の中で日本は「選ばれる国」でいられるだろうか。

(引用)

【経済・景気】

中国恒大、債務超過13兆円 開発用地22兆円だぶつく
債権者協議を延期

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

将来の住宅開発のために中国各地で仕入れた用地がだぶついている

(リード文)
【上海=土居倫之】経営再建中の中国恒大集団の債務超過額が6月末時点で6442億元(約13兆円)に膨らんだ。
負債総額は2兆3882億元(約48兆円)にのぼり、販売のめどがつかないまま抱える1兆860億元(約22兆円)の開発用不動産が重くのしかかる。

住宅価格の下落が本格化すればさらなる評価減につながり、
債務超過の拡大は避けられない。

恒大が27日発表した2023年1~6月期連結決算は最終損益が330億元の赤字だった。中国の不動産規制(きょうのことば)が導入された2020年夏以降、
業績が急激に悪化した。

中国上場企業として過去最大の4760億元の最終赤字となった21年12月期と比べて赤字額が1割以下に縮小したのは、住宅用地など開発用不動産の評価減を21億元にとどめたためだ。
21年12月期には3736億元の評価減を計上した。

(引用)

Deep lnsight 中国、「不況」が招く対外強硬

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
中国の経済が苦境に直面している。
不動産が不況に陥り、金融リスクの火種がくすぶり出した。
景気の減速により、16~24歳の失業率は2割を超えた。
国際通貨基金(IMF)の予測によれば、2023年の成長率は5.2%だが、
24年には4.5%に沈む。

少子化で低成長を強いられることは、中国も分かっていた。
だが、これほどの不動産不況や若者の失業は想定外だったはずだ。

生活を豊かにしてくれるから、中国の人々は共産党の支配を受け入れてきた。この前提が崩れたら、共産党体制がきしんでしまう。
そんな不安が、習近平(シー・ジンピン)政権の対外行動をさらに強硬にする恐れがある。

(引用)

●中国、新車値下げ合戦再びVW系やテスラ、7月販売低迷で需要喚起

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

上汽VWの販売店では、電気自動車(EV)などを期間限定で値下げしていた(8月、上海市)

(リード文)
中国の新車市場の値下げ競争に再び火がついた。
7月の新車販売(輸出を含む)は6カ月ぶりに前年実績を下回り、需要喚起のため独フォルクスワーゲン(VW)系などが相次ぎ値下げに踏み切った。
市場が成熟に向かう中、企業間や車種ごとの優勝劣敗がさらに広がりそうだ。
8月下旬、上海汽車集団とVWの合弁会社である上汽VWの店舗は、
平日の昼間にもかかわらず新車の品定めに来ていた客が複数いた。

販売員は「値下げで客数は増えた。売れ行きもいい」と話す。
上汽VWは7月から主力の電気自動車(EV)「ID.3」を期間限定で3万7000元(約74万円)値下げし、約12万5900元からとしたほか、8月には多目的スポーツ車(SUV)9車種で最大6万元分の特典をつけた。

(引用)

【企業・経営】<社説> 日本車に技術革新を迫る中国勢の台頭

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(全文掲載)
日本の自動車大手各社が、世界最大の市場を抱える中国で苦戦を強いられている。背景にあるのが中国メーカーの躍進だ。
「安かろう、悪かろう」や「日本や欧米の模造品」といった旧来のイメージを覆すクルマを続々と生み出している。
日本勢には脅威であり、早急な対抗策が求められる。

4~6月期の販売実績はトヨタ自動車が7年ぶりにシェアを下げ、
日産自動車とホンダも販売を落とした。
不動産大手の中国恒大集団が米国で破産法の適用を申請するなど中国景気には不透明感が漂うが、日本車が苦戦する理由は現地メーカーとの競争の激化だ。
かつては主に日米欧のメーカーが中国でシェアを争ってきたが、
この数年で急速に成長してきたのが電気自動車(EV)に強みを持つ比亜迪(BYD)など現地企業だ。
米アリックスパートナーズは中国が主要市場に成長して以来初めて、
早ければ2023年にも外資系と地場系のシェアが逆転する可能性があると指摘する。
中国勢の勢いを支えるのは、自動車産業で起きるイノベーションを先取りする取り組みだ。中国は新車販売におけるEVの比率がすでに主要市場の中では最も高く、23年には3割前後に達するとの見方が強い。
日本は22年に2%にとどまる。

アリックスは同価格帯の車種を比較すれば、外資系より中国系の方が先端技術を多く取り入れているとも指摘する。
自動車産業ではかつてビッグスリーといわれた米国勢が、台頭する日本勢から低燃費や効率的なリーン生産技術を学ぼうとせずに低迷した。
この歴史の教訓を忘れてはならない。

影響は中国内にとどまらない。
1~6月期には中国が日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。
日本など西側諸国が相次ぎ撤退したロシア向けが増えた影響が大きいが、
欧州にもじわりと浸透している。一過性の動きと見るべきではない。

では、日本勢はどんな手を打つべきか。
まずはEVやソフトウエアという新しいクルマの価値の源泉にもっと投資すべきだろう。中国のEVから学ぶべき技術やノウハウもあるはずだ。
既存のニーズに応えるだけでは、技術革新に乗り遅れる「イノベーションのジレンマ」に陥りかねない。
自動車産業は日本経済を支える存在だ。
新たなライバルの出現に奮起を期待したい。

AESC、ホンダにEV電池供給マツダやBMWにも 日産以外、5割に上げ

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
車載電池大手のAESCグループ(神奈川県座間市)は供給先を増やす。
2024年以降ホンダのほか、マツダや独メルセデス・ベンツグループなどに電池を供給する。
増資などで調達した資金で工場を新設。
主要取引先の日産自動車以外に供給網を広げる。
サプライヤーが多様なメーカーに電池を供給する電気自動車(EV)時代を象徴する動きが広がってきた。

AESCの前身は日産とNECなどが設立した「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)」。10年に発売された日産のEV「リーフ」向けの電池を初代から供給してきた。
19年に中国の再生可能エネルギー関連企業のエンビジョングループ(遠景科技集団)が買収し、同社が80%、日産が20%出資する資本構成となっていた。
自動車メーカーのEV移行を背景に、AESCは車載電池への投資を増やす。
日本や米国などにある車載電池の既存工場に加え、6カ国に新工場をつくる。26年までに生産能力をEV約600万台分に相当する年400ギガワット時と、現在の20倍に高める。

(引用)

【デジタル・IT】

●〈Google25 テック覇者の未来〉(上)訪問「1000億回」が変えた世界 情報量3万倍、未来も予測

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
米グーグルが9月、会社設立から25年を迎える。
世界シェアの9割超を握ったインターネット検索サービスを軸に事業領域を拡大し、四半世紀で社会や経済に対する影響力を飛躍的に高めた。
世界を変えたグーグルの光と影を追う。

インド東部ビハール州。
長年にわたって深刻な洪水に見舞われてきた貧困州で6月、
住民に警戒を呼びかける新たなシステムの利用が始まった。
人工知能(AI)を活用して1週間先までの被害を予測し、対話アプリや街頭のスピーカーを通じて知らせる。

(引用)

新システムを支えるのがグーグルだ。
地域ごとの被害状況や予測を精緻に把握できるようになる」。
システムの運用を担うNPOのラジェッシュ・サルマ研究員は期待を寄せる。
グーグルは検索を通じた過去の情報の提供だけでなく、未来の予測にも踏み出した。

●AI半導体急伸、溶ける境界
インテルとエヌビディア 互いの得意領域侵食

2023/8/29付 日本経済新聞 朝刊

(リード文)
人工知能(AI)ブームでデータセンター向けの高性能半導体の需要が急伸している。CPU(中央演算処理装置)最大手の米インテルとGPU(画像処理半導体)最大手の米エヌビディアは性能向上を求めて互いの得意領域を侵食し始めた。半導体の2強が市場をすみ分ける時代は終わりを迎えつつある。

(引用)

「生成AI時代のまったく新しいプロセッサーを作り出した」――。
8月上旬に米ロサンゼルスで開かれたCG(コンピューターグラフィックス)分野の国際会議「シーグラフ」。
基調講演に登壇したエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)はデータセンター向けAI半導体の最新モデルを披露した。

米海軍の伝説的な女性プログラマーにちなんで「グレース・ホッパー」と名付けたAI半導体には、エヌビディアが初めてデータセンター向けに自社開発したCPUを搭載した。
同社の主力GPUの「H100」と組み合わせた場合、AIの学習の速度を従来の約4倍に高められるという。

GPU1年待ち
AIの学習には大量の情報の並列処理を得意とするGPUが用いられるが、その制御を担うのはCPUだ。
従来は両者の間の情報のやりとりがボトルネックとなり、GPUの性能が十分に引き出せないケースがあった。
グレース・ホッパーでは通信方式を刷新し、CPUとGPUの間の通信速度の上限を従来の7倍に引き上げた。

CPUの分野では素子の数が1年半~2年で2倍になる「ムーアの法則」が行き詰まりをみせる。エヌビディアはGPUの改良をけん引することで生成AIの急速な進化をインフラ面から支えてきた。

世界のスーパーコンピューター上位100機種のうち、GPUを採用する機種の割合は2018年前半の16%から23年には58%に高まった。
生成AIの開発企業の間では高性能GPUの奪い合いが続く。
エヌビディアのH100は需要に供給が追いつかず、納入は1年待ちとされる。既存のGPUを含めてデータセンターの性能を最大限に引き出すには「CPUにも工夫が必要になっていた」(日本法人の沢井理紀氏)。

データセンターでは異なる開発元の半導体を併用するケースが多く、各社は他社製品との接続性を重視してきた。
エヌビディアはこうした慣例に反し、グレース・ホッパーの設計では自社製品との連係に軸足を置いた。AI半導体の需要を総取りする狙いが透ける。

英調査会社オムディアによると、エヌビディアの22年のデータセンター向けGPUなどの世界シェアは9割弱にのぼる。
別の調査ではインテルのデータセンター向けCPUの世界シェアは7割だった。グレース・ホッパーの量産は始まったばかりだが、エヌビディアがCPU市場でもインテルのシェアを切り崩す可能性がある。
守勢に立つインテルも手をこまぬいてはいない。
6月には高性能GPUを搭載したデータセンター向けAI半導体「GPU Maxシリーズ」の出荷を始めた。
AIを使った画像解析など、特定の用途ではエヌビディアのH100を上回る処理能力を発揮するという。

自前主義捨てる
Maxシリーズを構成する半導体はインテルの7ナノ(ナノは10億分の1)メートル品に、台湾積体電路製造(TSMC)が製造する5ナノメートル品を組み合わせた。
21年に古巣に戻り、名門企業の再興を託されたパット・ゲルシンガーCEOは自前主義を捨ててエヌビディアを追い上げる。

カナダの調査会社プレシデンス・リサーチによると23年のAI半導体の市場規模は前年比30%増の218億ドルになると見込まれている。
半導体市場全体に占める割合は3%ほどだが、需給逼迫を背景に高値での取引が続く。スマートフォンの販売不振などで半導体市況が悪化するなか、AI向けは数少ない「ドル箱市場」となっている。

実際、エヌビディアが23日に発表した23年5~7月期決算で売上高純利益率は46%に達した。足元の時価総額は1兆1000億ドル(約160兆円)を上回り、
インテルに約8倍の差をつける。

近年は音声や動画などデータ量の大きい素材を生成AIに学習させるケースが増えている。
最先端のAIの開発に必要な計算量が過去十数年で100億倍になる一方
同じ期間のスパコンの計算能力の伸びは数百倍程度にとどまるとの試算もある。基盤となるAI半導体にはなお技術革新の余地が大きい。

                                                                                                       以上

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