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インターネットの言論空間に「信頼」と「安全」をつくりたい――Yahoo!ニュースが取り組んでいること

Yahoo!ニュースは、信頼される公共性の高い情報流通の場として、多様な情報や意見が健全に流通することを大切にしています。多くのユーザーのみなさまから安心してご利用いただけるよう、日々の運営にあたっています。これらを実現するための組織として、Yahoo!ニュースには「メディアトラスト&セーフティ」を推進するチームがあります。担当する今子さゆりに話を聞きました。
(取材・文:Yahoo!ニュース)

――Yahoo!ニュースのトラスト&セーフティを推進するチームは、いつ、どのような背景で生まれたのでしょうか?

今子:2017年にプラットフォームにおける情報の質の向上を考えるチームとして始まりました。不適切な記事や写真が表示されるなどの問題に、本腰を入れ対策しようとしていた時期でした。

最初に着手したのは、記事の品質を維持・向上させるための仕組みの一つ、「Yahoo!ニュース 記事入稿ガイドライン」の策定です。記事をご配信いただく新聞や雑誌、TV局など情報提供元であるコンテンツ・パートナーのみなさまは、それぞれにメディアとしての編集方針や基準をお持ちです。Yahoo!ニュースはパートナーのみなさまとの信頼関係のもとで運営しており、各社の基準を最大限尊重しています。

一方、多くのユーザーのみなさまの目に触れるYahoo!ニュースへの配信にあたっては正確性に問題があったり、不利益を及ぼしかねない記事の配信はご遠慮いただく仕組みを作っておく必要があります。そこで、パートナーのみなさまに最低限お守りいただきたいことを記事入稿ガイドラインとして作成し、遵守をお願いすることとしました。ご配信いただく各記事がガイドラインをお守りいただけているかについて、Yahoo!ニュースによる事前確認はしませんが、パートナーのみなさまとの契約前に、企業情報、コンテンツ内容や取材・制作体制などについて審査を行い、不適切な記事が配信されることのないようにしています。また、契約後にも適宜事後審査を行っています。こうした仕組みの全体については、「Yahoo!ニュース 運営方針」にてご説明しています。

透明性を高めるために、やってきたこと

――サービス運営にあたって、社外有識者の方からご意見をお伺いしているとのことですが、例えばどのようなテーマで意見をお伺いするのでしょうか?

今子:ジャーナリズム論やメディア法の専門家、弁護士などさまざまな分野の有識者らからご意見を伺い、対応方針を決めていくことがあります。近年では少年事件の報道自社に関するニュースの届け方などについても有識者の方々からご意見を伺い、方針を定めました。コメント欄での誹謗中傷対策については有識者会議を2020年6月に設置し、ユーザーのみなさまに安心してご利用いただくための自主ルール策定を進めました。ここでの議論は同年12月の提言書という形でまとまっています。こうした取り組みに加えて、プラットフォーム事業者による誹謗中傷対策の自主的取り組みについて透明化が必要であるというアドバイスも受け、メディア透明性レポートを公表しています。

――信頼される公共性の高い情報流通の場としていくための取り組みとして、どのようなものがありますか?

今子:実質的な内容を伴わないにもかかわらず、見出しで過度に目を引く言葉を使った――いわゆる「釣り見出し」や、センセーショナルな記事にアクセスが集中してしまう傾向があります。こういったものは、必ずしも質の高いコンテンツとして評価されているわけではないと言われています。この課題を解決するために、アクセスによるPVだけではない評価指標の構築を目指した「記事リアクションボタン」を2021年6月に導入しました。例えば「この記事いいよね」「よくないね」とユーザーのみなさまが直感的に押すボタンではなく、内容を高く評価できると判断したときにクリックできる仕組みを作りました。「学びがある」「わかりやすい」「新しい視点」の三つのボタンを設置しています。

同年11月には、パートナーのみなさまへの配信料支払いにクリック率データを活用し始めました。さらに試行錯誤していく必要があると思っています。

――いま、Yahoo!ニュースを含むプラットフォーム運営に対して「透明性」が求められています。透明性を高めるための取り組みとしては、どのようなものがありますか。

今子:先ほど申し上げた、「メディア透明性レポート」があります。このレポートでは、Yahoo!ニュース コメントなどの投稿の監視体制や機械の力を活用した対応について説明し、具体的な削除件数などを年度ごとに公開しています。

「Yahoo!ニュース 運営方針」もあります。パートナー企業のみなさまとの関係、Yahoo!ニュースのコンテンツにはどのようなものがあるのか、主要な掲載面、品質管理の体制や取り組みなどについて説明しています。さらに、年次報告として主要な取り組みをまとめた「Yahoo!ニュース この1年の取り組み」も透明性向上に向けた取り組みです。ここでは、Yahoo!ニュースが行った特に公共性の高い具体的な取り組みを紹介しています。

渉外的スキルと法務部の経験が生きている

――これまでの経歴と、現在の業務に生きている経験などがあればお聞かせください。

今子:現在の業務には、対外的な説明など渉外的なスキルとサービスの法的側面も含めた理解が必要です。私は2000年に入社して長らく法務部にいたので、その経験が活きていると思っています。前者については、2000年代、著作権法がインターネットの時代に対応しきれていないという課題感より、著作権法を時代に合わせて変えていく必要性について、各所で説明をしたり議論をした経験が役立っていると思います。後者については、メディア事業の担当としてYahoo!ニュースの契約などにも携わっていたので、その経験が役に立っています。

――今後の展望を教えてください。

今子:目まぐるしく変化するインターネットメディア環境において生じているさまざまな課題にどう対応し、信頼されるニュースプラットフォームとして発展していくかについて考える仕事です。明確な答えのない中で、有識者のみなさまにお伺いしながら、社内でも法務部など他部門を含め議論をして、一定の方向性を導き出すなど大変さはありますが、やりがいもあります。ユーザーのみなさまに少しでも信頼いただけるよう頑張っていきたいですね。

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