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【note連載版】ライトノベル回顧2023|レビュー:『双子まとめて『カノジョ』にしない?』 白井ムク 著(ファンタジア文庫)

新月お茶の会の自称ラノベ担当・はじめまことが、今年1年のラノベ界隈を振り返る。週にひと月を取り扱い、12週間で1年を振り返ることを目的とする。蒸発した場合も『月猫通り2183号』に掲載予定なのでご心配なく。毎週土曜更新予定。

【あらすじ】
 品行方正、成績トップの同級生美少女・宇佐見。
 校内で俺をライバル視して突っかかる彼女には放課後、別の顔がある。
 彼女は放課後、ゲーセンで遊び、学校では想像できない無邪気な笑顔を見せるのだ。
 俺は宇佐見と仲良くなるため、校内では寄り添い、放課後は一緒に遊ぶ。
 それぞれの場所で仲を深め、ついに……学校帰りの宇佐見から告白が!?
 俺も思いを受け止めて、ゲーセンから帰る彼女に想いを伝え返す。
 これで彼女と両想い……と思ったら、そこにもう一人の彼女が現れて!?
「えっ、告白したの私だよ!?」
「でも……いま告白されたのは、うちだし」
 彼女の名前は、宇佐見千影と光莉。
 じつは双子だった!?
 同時に告白成立してしまった結果……双子からの提案で、まさかの両方と付き合うことに!?
 時に日替わり、時に3人で。
 大人気ラブコメ『じつは義妹でした。』著者・白井ムク&イラストレーター・千種みのりがおくる双子同時アプローチラブコメ!!

 先週レビューした『二番目な僕と一番の彼女』に引き続き、三週間ほど前に投稿したMICRO BLACK HOLEの連作レビューでもこの作品を扱ったが、こちらで詳しく扱っていく。

 タイトル・あらすじからは見えてこないが、才能というものに対して正面からぶつかる良作である。

 「記憶力が高いだけのモブ」を自称する、才能はあるがそれが人を傷つけることを知り隠すようになった主人公。突出した才能を持つが故に学校に行っていない自由奔放な双子の姉。学校で優等生として振る舞う一方で、姉や主人公の才能に若干コンプレックスを抱える双子の妹。この3キャラが集まって才能の話をしないわけがない。

 個人的には「記憶力が高いだけのモブ」という単語があまりにクリティカルなので主人公への共感がすごいが、この作品の良いところは凡才な昔の女(作中では幼馴染と書かれていた気がするが僕のポリシー的に幼馴染じゃなかったので昔の女と呼称する)の存在だ。この昔の女、主人公にトラウマを植え付けるだけでなくまだヒロインとして息をしている。才能の隣に立てるだけの最低限のスペックというなかなか辛い話を押し付けられ、主人公に並び立てるだけのスペックを持った双子と比べられる可哀想なポジションだが、一人の幼馴染好きとして幼馴染属性のこの運用方法は天才的だと思う。ただ漠然と当て馬にするのではなく、幼馴染という属性を存分に活かした魅力的な負けヒロインの構築がされている。脱帽だ。世界中の作家がこれくらい魅力的な負けヒロインとしての幼馴染を書ければ世界はもっと平和になるのに。

 さて、作品のテーマに関して長々語ってしまったが、ラブコメとしても大変優秀なこの作品で、サブヒロインばかりにライトを当ててしまうのも失礼というべきだろう。

 まずは主人公。言動が良い。「人を平等に愛せるのは神様だけ」とか全てのハーレム主人公に聞かせるべき名言である。やはりキャラのスペックが高いと描ける言動の幅が広がるのでキャラが良くなる。

 ダブルヒロインのラブコメとしても当然のように美味しい。双子なので自然とヒロイン同士の関係を書けるのは当たり前なのだが、前述の設定により自然とヒロイン同士の棲み分けができるタイミングと同時に出せるタイミングが存在する。きちんとそれぞれに「告白の返事」と「キス」をしたのもポイント高い。ここらへんをテンポ良くやってくれると読者としても安心できる。最近のラブコメはキスをしたくらいでは終わらないのだ。

 さて、なんか色々と筆が走りまくっていたらメインヒロイン二人について個別で述べる文字数がなくなってしまった。二人ともめちゃくちゃ可愛いよ。

(はじめまこと)

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