東大新月お茶の会

「SF・ミステリ・ファンタジーetc...」を掲げる東京大学の総合文芸サークル・新月お…

東大新月お茶の会

「SF・ミステリ・ファンタジーetc...」を掲げる東京大学の総合文芸サークル・新月お茶の会の公式noteです。

マガジン

  • 新入生レビュー企画(2024)

    新入生によるレビュー企画です。ジャンルを問わず、おすすめ作品のレビューを書いてもらいました。

  • リレーレビュー企画

  • BLACK HOLE:VIDEO

    新作映像作品レビュー企画。姉妹企画「BLACK HOLE:NOVEL」「EXTRA」「MICRO BLACK HOLE」とともに、毎月末更新予定。

  • BLACK HOLE:NOVEL

    新作小説レビュー企画。姉妹企画「BLACK HOLE:VIDEO」「EXTRA」「MICRO BLACK HOLE」とともに、毎月末更新予定。

  • BLACK HOLE:EXTRA

    新作コンテンツレビュー企画。ゲーム、漫画などサブカルコンテンツ全般を扱います。姉妹企画「BLACK HOLE:NOVEL」「VIDEO」「MICRO BLACK HOLE」とともに、毎月末更新予定。

最近の記事

新入生レビュー企画② 宮田眞砂 『セント・アグネスの純真』

あらすじ  交通事故で母親を亡くした中学2年の少女・神里万梨愛は、ミッションスクールの聖花女学院に転入し、寄宿舎セント・アグネスで暮らすことになる。セント・アグネスには、同じ部屋に住むルームメイト同士で仮初めの姉妹になるルールがあり、万梨愛のルームメイトは「奇跡の白雪」とあだ名される高等部の白丘雪乃だった。誰に対しても心を開こうとしない万梨愛であったが、雪乃とともに謎を解いていく中で二人は絆を深めていく。 全体レビュー  百合×日常の謎という意外と今まで読んだことのなかった

    • リレーレビュー企画⑥ピーター・ディキンスン『ガラス箱の蟻』

      推薦文 推薦本を提出してから時間が経っているのでもはやどうしてこんな本を推薦したのか記憶が曖昧なのですが、変な小説が好きな人に薦めるならこれが良いなとそのとき読み終わったばかりの本を安直に挙げただけというのがたぶん実情で、昔の翻訳ミステリは慣れがないと読みづらかったかもしれず恐縮ですが、ともかく、変梃なシチュエーションを舞台に正統派英国パズラーを構築したまちがいなく稀有な作品なので、伏線の妙と独特の悲喜劇的ユーモアを楽しんでいただければ幸いです。 (赤い鰊) レビュー 最近

      • 新入生レビュー企画① 早坂吝『VR浮遊館の謎』

        早坂吝『VR浮遊館の謎』 評者:水谷渓  人工知能探偵の相似とその助手である輔は、世界初のフルダイブVRゲーム機を用いた謎解きゲームに挑戦することになる。そのゲームはあらゆるものが浮遊している館で七人の参加者にそれぞれ一つずつ固有の魔法が与えられ、その魔法で他の参加者と戦いながら館に異変を起こしている犯人を当てるというものだった。ゲームの中盤、参加者の一人が身体中の骨を折られた死体となって発見される。それは「骨折りジャック」として巷を騒がせていた殺人鬼の凶行と酷似しており…

        • リレーレビュー企画⑤ 呉勝浩『スワン』

          推薦文 『スワン』は真実にまつわる小説です。悲劇の裏で何があったのかめぐるお茶会で明らかになるのは、単に何があったのかだけでなく、その事実の裏にある葛藤と決断に他なりません。その先に立ち上がる、黒と白とも悪とも正義とも言い切れない、複雑なグラデーションに彩られた人間像には、単なるフィクションとは退けられない、リアリティを帯びた凄みがあります。このような傑作を一人でも多くの人に読んでもらいたいと思い、推薦しました。 (葉月) レビュー 僕らはいつも線を引きたがる。真実と虚構、

        新入生レビュー企画② 宮田眞砂 『セント・アグネスの純真』

        マガジン

        • 新入生レビュー企画(2024)
          2本
        • リレーレビュー企画
          6本
        • BLACK HOLE:VIDEO
          8本
        • BLACK HOLE:NOVEL
          24本
        • BLACK HOLE:EXTRA
          7本
        • リレー小説「繭を継ぐもの」
          8本

        記事

          リレーレビュー企画④周藤蓮『吸血鬼に天国はない』

          推薦文  えー、どうも今回「吸血鬼に天国はない」の1巻を推薦しました鳥羽ノラです。 推薦した理由はシンプルで自分がこの作品を好きだからです。シンプルだね。 まぁ内容としてもボリュームたっぷりで結構レビューしやすいかなと思ったのもあります。 ほんとだよ。嘘じゃないよ。この理由はちょっとしかないってだけで嘘じゃないよ。 9割9分9厘、周藤蓮先生の作品を読んで欲しいっていうオタク心だけど。  こんな感じで自分を魅了してる作品の一つですので、ぜひ葉月さんも気に入ってくれると嬉しいで

          リレーレビュー企画④周藤蓮『吸血鬼に天国はない』

          リレーレビュー企画③ らきるち『絶深海のソラリス』

          推薦文 みなさんは『絶深海のソラリス』というライトノベルをご存知だろうか。『このラノ2015』の作品部門では名だたる名作に次いで6位という脚光を浴びておきながらも、その年以降音沙汰がないためにタイトル通り深海の底に埋もれてしまったかのような、隠れた名作ライトノベルである。ソラリスという題からも察せられるSFとしても緻密な世界観と、気づいたら愛しくなっている魅力的なキャラクターたち。そしてなによりドライブ感のある文体から繰り広げられる異形な展開の数々にはページをめくる手が止まら

          リレーレビュー企画③ らきるち『絶深海のソラリス』

          リレーレビュー企画② 駄犬『誰が勇者を殺したか』

          推薦文  当作品はファンタジーの世界観を上手く活かしながら、タイトルの意味が読むにつれて二重三重に意味を持っていき、かつ登場人物の関係性も一冊の中で綺麗にまとめられているということで、いずれかの要素一つをとっても間違いなく名作と言える作品です。結末がわかってしまえば新鮮な驚きは大きく減るにも関わらず、複数回読んでも楽しめるというレベルですね。そして世間の評価もそれにふさわしく高かったと認識しているわけですが、この作品がいわゆるミステリの要素を含むにもかかわらず、僕自身は全くミ

          リレーレビュー企画② 駄犬『誰が勇者を殺したか』

          リレーレビュー企画① 『十代に共感する奴はみんな嘘つき』

          推薦文  十代に共感する奴はみんな嘘つき、そう言い切ってしまえるだけの鋭さで女子高生の生活を描き出した傑作。私が十代の女子高生ではなく、二十代の男性であるということはさておき、最果タヒの描きだす人間の解像度は非常に高い。また、電波系に近い文体によって生み出される文の軽さと攻撃的な内容というギャップ、詩的表現を小説に落としこむ手腕には、詩人でありかつ作家である最果タヒのらしさが溢れているように感じられる。 (ここまでが推薦の表の理由で、裏の理由としては最果タヒの小説を評価す

          リレーレビュー企画① 『十代に共感する奴はみんな嘘つき』

          『トラペジウム』

          BLACK HOLE:VIDEO 2024年5月 この映画の公開当初、Twitterでたいへんよろしくない感想が話題になっていたのを目にしたかもしれない。あなたがそれを理由に本作の鑑賞をやめたというのであれば、いますぐ全てを忘れ、劇場に駆け込み、本作を鑑賞するべきである。そして劇場を出てから自分の頭を4回殴り、スマホを捨てろ。  本作は、アイドルを題材にとった青春物語である。  主人公・東ゆうがアイドルグループ結成のための「素材」として打算100%で作った素人の友人た

          『トラペジウム』

          『冬期限定ボンボンショコラ事件』米澤穂信(東京創元社)

          BLACK HOLE:NOVEL 2024年5月 小市民を志す小鳩くんはある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。  本作は、この衝撃的なエピソードから始まる。小鳩くんの小市民を目指すうえでの相方である小佐内さんは犯人探しを始め、小鳩くんは自分が轢かれた件について考えるとともに、小鳩くんと小佐内さんの原点となった、そして今回の事件と妙に符号する、過去の事件について思いを馳せることになる。この過去の轢き逃げ事件は小鳩くんにとって初めての失敗経験となって、その結果彼は事件を嗅ぎ回

          『冬期限定ボンボンショコラ事件』米澤穂信(東京創元社)

          『絆光記』(アイドルマスター シャイニーカラーズ)

          BLACK HOLE:EXTRA 2024年5月 アイドル育成ゲームに登場する46歳の名前のないおじさんがやたらと魅力的なイベントシナリオこと、『絆光記』の話をします。  物語の表の主人公であるアイドルユニット・イルミネーションスターズは、往年の名作をリメイクしたある映画作品の宣伝大使に任命されることになります。映画の魅力を伝えるためのイベントの一貫として、イルミネの三人は同年代ながら全く異なる仕事をしている少女たちと交流することになります。キャリアデザインの交流、ってやつ

          『絆光記』(アイドルマスター シャイニーカラーズ)

          『涙は目覚めの後で』(崩壊:スターレイルVer2.2)

          BLACK HOLE:EXTRA 2024年5月 RPGのプレイヤーとは、主人公がとりうる選択の可能性にほんの少しの指向性だけ与えることができる妖精のような存在である、という思想があります。  おそらく大空スバルの『ドラゴンクエストⅧ』実況で聞いた言葉だったと思うのですが、「DQ8は記憶喪失で自我の薄弱な主人公をプレイヤーが導き誘う物語だったから、自らの正体を知って『自分』を取り戻した彼がプレイヤーをもはや必要としなくなったことで物語は終わる」という趣旨の話がめちゃくちゃ好き

          『涙は目覚めの後で』(崩壊:スターレイルVer2.2)

          『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

          BLACK HOLE:VIDEO 2024年5月 「人間ドラマがつまらないからさっさと怪獣を出せ」という感想を投げかけられなかった怪獣映画は少ない。とくに、本作も属する「モンスターバース」は毎回のように人間ドラマの退屈さを批判されてきたシリーズだ。そんな中、前作『ゴジラVSコング』(2021)で完全に「バカ映画」路線へと舵を切ったアダム・ウィンガード監督は、この批判を躱すために、驚くべき解決策を提示した。つまり、退屈な人間ドラマを撤廃し、「怪獣ドラマ」を話の主軸に据えたのであ

          『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

          江戸川乱歩関連ミステリ:『乱歩殺人事件「悪霊」ふたたび』/『時空に棄てられた女 乱歩と正史の幻影奇譚』

          BLACK HOLE:NOVEL 2024年5月 今年は江戸川乱歩生誕130周年。そのためか、今年に入ってから江戸川乱歩を題材にしたミステリが2作出たので、続けてレビューしたい。 『乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび』芦辺拓(KADOKAWA)  こちらは江戸川乱歩の中絶作「悪霊」に題をとったミステリである。江戸川乱歩の「悪霊」自体を作中作として挿入し、江戸川乱歩自身が登場する現実パートにおいて、「悪霊」作中の事件の真相と「悪霊」が中絶作となった理由が明かされる。現実パート

          江戸川乱歩関連ミステリ:『乱歩殺人事件「悪霊」ふたたび』/『時空に棄てられた女 乱歩と正史の幻影奇譚』

          『天狗屋敷の殺人』大神晃(新潮社)

          BLACK HOLE:NOVEL 2024年5月 横溝正史オマージュという文言に惹かれて読んだ。「犬神家状態」という言葉があらすじに書かれていたので、安易に横溝ネタを連発するような作品だったら、と警戒していたが、横溝正史に寄せすぎることも「横溝的」要素を詰め込みすぎることもなく、オマージュの仕方に好感が持てた。「犬神家の一族」だと思っていたら「・・・」だったという一捻りが面白い。  オマージュ云々はさておき、作品単体として見ても好印象である。犯人が何となく分かってしまうなど

          『天狗屋敷の殺人』大神晃(新潮社)

          『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』

          BLACK HOLE:VIDEO 2024年5月 まず何より、メリハリの効いた映像的演出がひたすら素晴らしかった。とにかくアニメーションという技法の豊かさを見せつけてくる。これだけで劇場に3回くらいは行く価値がある。  キャラクターが極端な前傾姿勢で疾走する様子はちょっとシュールにも見えたが、同じく極端な横長になっているシネスコの画面によく合っていたし、全力で勝利を求めるウマ娘たちの「前のめりな」姿勢を強調してもいた(または、現実の競走馬が走るシルエットに近づけているのだろう

          『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』