【note連載版】ライトノベル回顧2023|毎週レビュー企画:2023年4月編
この企画では、新月お茶の会のラノベ担当を自称するはじめまことが、各月のライトノベルを振り返り、印象深かった作品や界隈で盛り上がった作品・話題について語りつつ、その月の面白かった新作2シリーズを選んで1000文字前後のレビューをしていく。なお、対象作品はレーベル公式サイトの「n月の新刊」の分類(ラノベの杜スタイル)を基準とし、実際の発売日や発行日は無視するものとする。なお、ここで紹介される新作を私が全て読んでいるとは限らない。また、「界隈」とはX(旧Twitter)におけるラノベ界隈のことを指す。
4月序盤では、まず「スニーカー4月刊のタイトルの風紀が終わっている」というのは比較的早くから話題になっていた。カクヨムの現代恋愛がそっちの方角に流れているので産地の政治情勢にある程度影響を受けるのは仕方ないと思う反面、リスクヘッジができていないとも思う。とはいえ、web発のラブコメの書籍化が増えた時期に「ラブコメはファンタジーと比べてコミカライズが伸びにくい」などと言われていたことを考えればビジュアル映えするエロコメが増えるのは自然の摂理のようにも思う。一作タイトルを挙げるなら鏡遊の『女友達は頼めば意外とヤらせてくれる』を刊行している。大丈夫なのか。時代が追い風だから張り切っているのか。
新作ではないが、電撃では『ウィザーズ・ブレイン』の9年ぶりとなる新刊が発売された。今年はフルメタ新刊やシャナ新刊など、ライトノベルにも大きなリバイバルブームが来た年だ。この辺に関してはもう少し先の記事で触れたいと思っている。
PASH!文庫の『さぁ、悪役令嬢のお仕事を始めましょう』も大きな反響を呼んだ。PASH!文庫の新作第1弾となった今作だが、それ以降もPASH!文庫の新作はどれも界隈の評判が良い。新興レーベルの滑り出しとしてはこれ以上ないほどだろう。
中盤から終盤にかけては、私好みの作品が大量に刊行されたためこの月はとても思い出深い。バイアスもあるが界隈の評判も良かったように思うので、どんどん紹介していく。
まずはGA文庫。桜木桜の『「キスなんてできないでしょ?」と挑発する生意気な幼馴染をわからせてやったら、予想以上にデレた』が強かった。幼馴染ざまぁ等という暗黒の歴史を吹き飛ばす素晴らしいなろう発幼馴染ラブコメ。
次にガガガ文庫。石川博品の『冬にそむく』が大評判となった。コロナ禍を暗示する冬の中、デートを重ねていく二人の静かなラブコメディ。さすがの石川博品である。持崎湯葉がやっと最近羽ばたきつつあるなか、石川博品もそろそろ一般に知られるべき存在ではなかろうか。あとこれは個人的な話だが季節ものはその季節に出してほしい。おかげで買ってから読むまで6ヶ月以上を必要としてしまった。今年の夏が早すぎたせいでもあるが。
また、劇場版が大好評だった『グリッドマン ユニバース』は水沢夢によるノベライズも大好評だった。去年九月の『リコリス・リコイル』や『鬼滅の刃』大ヒット時にライトノベルの売上ランキングが占拠されたことなど、アニメや漫画と比べたライトノベルの市場規模の小ささを感じさせられる。常々メディアミックスの種として見られるライトノベルだが、こちらもこの手のメディアミックスを基点として新たな読者を開拓していきたいところだ。
そしてファンタジア文庫。『神様のいない日曜日』の入江君人の新作『蜘蛛と制服』が素晴らしかった。蜘蛛と女子高生と子守唄が織りなす、透明と静謐と狂気の物語。さすがの入江君人である。ところで続刊は?
MF文庫Jからは『男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと』が出ている。界隈では発売から少ししてから話題になった印象。詳しくは下のレビューを見てほしいが、とにかく主人公がかっこいい。なるほどこれくらい主人公をかっこよくすれば百合に挟まっても不快感がないんですね。百合に挟まる男って百合に挟まっているだけでやたら嫌われていますけど大抵の場合百合に挟まれるだけの何かがあるはずなんですよ。
オーバーラップ文庫からは、第7回オーバーラップweb小説大賞銀賞の『バズれアリス』が出た。追放テンプレとダンジョン配信にコロナ禍とグルメものまで盛り合わせた全部のせの作品だが、設定がうまいので綺麗にまとまっている。さすがアニメ化作家。というかカクヨムでダンジョン配信が流行り出したのはちょうどこの時期だったのだが、オーバーラップはまさか2年前からどこかのタイミングでダンジョン配信が流行することを予測していたのだろうか。
大判ではDREノベルス『月花の少女アスラ』の評価が高かっただろうか。やはり血塗れ美少女主人公の需要とポテンシャルは常に高い。ダクファンの戦記ものというところも界隈のツボに刺さりそうなジャンルである。なろうのアクセス解析を見た感じ、公募でなければ書籍化まではそこそこ伸びても書籍化まではいかなかった可能性が高い。こういう作品を最初の公募で取れているあたり、なかなかに編集部のポテンシャルは高いのではないかと感じる。
【↓今週のレビュー作品】
(はじめまこと)
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