見出し画像

静かな家

娘が引っ越してから、ウチの中の空気が変わった。
少し冷たく、少し暗く。
娘は太陽のような存在だった、明るく、暖かく、中心にいる太陽。

たとえば、いま食卓はとても静かだ。
会話がないわけではない。
むしろ会話が途切れることはなく、終始和やかに穏やかに進んでいく。
そして、3人が均等に話している。
無理して話しているわけではないけど、空白を埋めようとする感じはある。
娘がいたときは、会話の切り出しはいつも娘で、3人は会話を受けて話すか、たんに聞いているか。
割合としては、娘6:息子2:私2:家人0。
娘は愚痴を言うときもどこかユーモラスで、聞いていてあまり疲れないし、話を広げやすい。
話題が豊富で、気を遣うこともできて、可愛い(これは親の欲目)
ウチの中で万年咲いているひまわりでもあった。

いまの我が家というのは、太陽が沈んで静かな月夜にいるような感じだ。
これはこれで私は悪くないと思っているが、男ふたりは存外寂しいようだ。食事が終わると私は自室に引き上げてしまうが、ふたりはそのまま話をしていることがある。
男同士の会話が増えたのが微笑ましいというか、面白いというか。
そこにもちゃんとコネクションが存在してたんだな、という発見があった。

3日に一度くらい、食卓で娘の話が出る。
それぞれに娘と自分だけのエピソードをぽつぽつ話したりする。
娘は家族の中でまるでハブのような役割をしていた。
もちろん、ハブが完全になくなったわけではないけど、だんだんとハブのない三角形でゆるく繋がる形に落ち着いていくだろう。

私が案外寂しさを感じていないのは、娘がしょっちゅうLINEを送ってくるからかもしれない。
そこは男ふたりにはないアドバンテージ。
健康不安のアドバイスを求めてきたり、ちょっとしたTwitterの話題だったり。
いつまでも心配の種が尽きない反面、そんなLINEもとても可愛く楽しいので、トレードオフかな。
その話を食卓で少しお裾分けする。
「うまくやってるじゃん」
嬉しそうなホッとしたようなふたりの表情が最高のおかずだ。




読んでくださってありがとうございます。よろしければコメントもお気軽にお願いいたします。