いしい

世の中のだいたいのことについて解像度低めです。とても面倒くさい性格です。2023年1月…

いしい

世の中のだいたいのことについて解像度低めです。とても面倒くさい性格です。2023年1月から始めたピアノと、半世紀以上続けている読書と、いろいろの日々を綴っています。

最近の記事

基礎練習

娘は絵を描くことが好きで、それを仕事にもしているのだけど、 「最近スランプで~」と話し始めた。 「正面とか後ろ姿は描けるけど、上から見下ろしたり、下から見上げる構図が壊滅的にダメ」と言う。 娘の言う「壊滅的にダメ」は一般人からすれば「どこが?」というレベルだけど、音楽然り芸術という分野においては満足という言葉がないので、どこまでいってもダメなものはダメなんだろう。 私は絵を描くこと自体が壊滅的にダメだけど、真上や真下からの構図は実際難しそうだと想像がつく。 「前も似たよう

    • HappyBirthday

      これまでお誕生日のお祝いは、必ず当日に家族全員でしてきた。 朝その人が出かける前までに起きてきて「お誕生日おめでとう」と言い、夜ケーキを買ってきて(もちろんプレートが乗っている)、ロウソクを立て、火をつけ、「Happybirthday to You」と歌い、ロウソクを消す。 残業があろうがなかろうが、彼氏がいようが彼女がいようが、家族優先。 今まで一度も欠かしたことがない。 そんな家族そろっての行事も、先日の娘の誕生日が最後。 娘は来月には引っ越していくし、何より新しい家族

      • メモ

        この4月、新入職者をふたりお迎えした。 メモの取り方を見ていると、その人がどのくらい仕事できるのか、なんとなくわかる。 メモが整然ときれいかどうかの話ではない。 その人にとってメモが使えるものかどうかといったことだ。 いままで一番仕事ができた人は、私の言うことを端からすべてメモしていた。百均の小さなメモ帳。ものすごく汚い字で、分類することもなく、ただひたすら順番に書いていた。その人のすごいのは、私が「前にも説明したかもしれませんが」と言うと、瞬時にそのページを開くことがで

        • 正直な拍手

          あるピアノ協奏曲のコンサートに行った。 一曲目、オーケストラの金管に厚みがあるのでピアノが埋もれてしまうことがあるのだけど、クライマックスでとうとうピアノがかき消されて、オーケストラの音しか聴こえなくなった。 盤上の熱演はまるでパントマイムのようで、ピアノの音は届いてこない。 オーケストラの気遣いが感じられず、少し独善的ですらあった。 そうこうしているうちに演奏が終わった。 最後はともかく、カデンツァは素晴らしいものだったし、私は精一杯の拍手を贈った。 でも、隣に座っていた

        基礎練習

          こどものための

          レッスンに通い始めた最初のころ、先生が平吉毅州の「想い出」を聴かせてくださった。 とても美しい小品で、聴きながらセンチメンタルな気分になったことを覚えている。田舎の一本道の夕暮れ、友達と遊び足りないような、早く家に帰りたいような、遠い日の想い出。 情景がありありと浮かぶ演奏に、先生ってすごいなぁと思うと同時に、いつか絶対この曲を弾いてみたい、と密かに誓った。 今の自分よりもう少し上の実力で弾けそうな曲をよく検索するのだけど、初級~中級くらいの子供のための曲に佳品がとても多

          こどものための

          隠れ家的医院

          今月のはじめ、突然音が二重に聞こえるようになった。 片耳ずつだと普通に聞こえるけど、両耳だとほんのちょっとずれて聞こえる。そのまま症状が固定してしまうのが一番怖いのですぐに耳鼻科受診した。 ところが、聴力の検査では問題なく、鼓膜にも問題がなく、他に検査してもこれといって悪いところがない。 少年のように快活ではきはきした女医さんが「花粉症でしょう」と言う。 いや、鼻も詰まってないし、目も痒くないし、花粉症の症状は皆無だ。 仮にそうだとしても、なぜ花粉症で音が二重に聞こえるのか、

          隠れ家的医院

          新しい縁

          近々結婚する娘とそのお相手は、「今どき」の人だ。 結納はなし(婚約指輪はもらっていた) 結婚式はしない。 いわゆる新婚旅行には行かない。 子どもはもうけない。 家計費は完全に折半で、お互いの収入は(ぼんやりとしか)知らない。 食事は作らない。 娘が「(いろいろ手続きが面倒くさいから)名前を変えたくない」と言えば、「じゃぁ自分が変えてもいい」とお相手が言ってくれたらしい、秒で。 他にも既成概念にとらわれない、よくいえば柔軟な考えの人だ。 先日、結婚指輪のお直しが終わって、そ

          新しい縁

          短いおはなし

          リヒナーの「短いおはなし」という曲に取り組み始めて早2か月。 あと1,2回でOKいただけるかなーというところまできた。 練習曲だと、わたしのぶすくれ具合(この曲好きじゃないオーラをわりとわかりやすく出してしまう)で先生も大目に見てくださることもあるかもだけど、この曲は最初に「じっくりやりましょう」と宣言されて、実際に細かく教えていただいている。 どんなニュアンスで弾きたいのか。 そのためにどうすればいいのか。 こんなに短い曲なのに、きちんと「仕上げる」ということの大変さを身

          短いおはなし

          恥の閾値

          ストリートピアノでワルトシュタインを弾いている人がいた。 でも、それがワルトシュタインだとわかるまでに、ものすごく時間がかかった。 たどたどしいというほどではないけれど、流れが切れていて、しばらくは現代曲かと思うほどだった。 でも、演奏は堂々としていた。 堂々と大きな音を出し、堂々と間違えていた。 その場の微妙な空気に負けていなかった。 何より楽しそうだった。 楽しそうに全身で弾いていた。 共感性羞恥でこちらがやられそうになって、最後までは聴けなかった。 単純に、すごい

          恥の閾値

          遠くの国

          昨年の今ごろは大河ドラマからリタイアしていた。 鎌倉殿に没入しすぎて期待値が上がり切っていたところに来た家康。 すでに3話目くらいから見続けようという気持ちが萎えていて、えびすくいをシラーっとした気持ちで眺めるうち、今年はもういいか、となった。 そこから10か月。 ややクールダウンして変に期待していなかったから、とは思わないが、今年の大河ドラマは面白い。 毎回45分があっという間だ。 短い予告に描かれるさらなる悲劇に慄きながら一週間を待つ。 来週が待ち遠しい、というのは健やか

          遠くの国

          ひとの時間

          先生の教えてくださったことがするする流れていって、私に何も定着しなかったら、それは先生の時間を無駄に使ったことになるのか。 今まで考えもしなかったし、そんなに深くとらわれているわけではないけど、無防備な心にすっと入ってきた考えがずっと居座り続けている。 ピアノは好きだし楽しいので、よっぽどのことがない限り辞めたりはしないし、先生もよっぽどのことがなければ断ることもないだろう。 先生が、レッスンの時間を無駄と思うかどうかは私の問題ではない。 そもそもそんなふうに考えることもお

          ひとの時間

          リンク

          ピアノの椅子の高さが決まらない。 いまは高めにしている。 よく言われる、肘と手の高さが床と平行になるようにしたのでは低く感じる。 肘が少し高いほうが弾きやすい。 以前は教科書通りに前腕と床が平行になるように椅子の高さを決めていた。 しばらくして、手首が下がっているほうが弾きやすいことに気づいた。一番いい場所を探すうちに、椅子を限界まで高くすることになった。 それでもわずかに足りずに、薄い低反発のクッションを敷いたりした。 体格は人によってさまざまだ。 背の高さは言うに及

          自分を傷つけるもの

          何でもないひと言にいつまでもくよくよしがちだ。 そのひと言は話の肝ではなかった。 というのは、後になって思い返して「それは肝ではなかった」と気づいたのだが、その言葉はいつまでもショックだった。 何気なく出てきた言葉だからこそ本音だったろう。 その言葉の意味するところも、それが本音だったろうことも、繰り返し繰り返し心の奥から取り出しては確かめる。 しばらくその時の気持ちがうまく言葉に置き換わらなかった。 ショックはショックなのだけど、ただ衝撃を受けただけではない。 最初に

          自分を傷つけるもの

          回り道

          練習曲に16分音符が登場し、また新たにそびえたつ壁。 指が全然回らない。 20数個くらい16分音符が続く右手が全然弾けず。 ともかく練習した、細分化したり、ゆっくりにしたり、リズム練習とか、いろいろ。 でも、打率2割くらい。 10回のうち8回くらいは引っかかってしまって弾けない。 レッスンの時も案の定弾けなくて、右手の弾き方、練習の仕方を教えてもらえるものだと思っていたら、「そこはたぶん右手じゃなくて、左手が原因だと思います」と先生に言われた。 え?弾けないのは右手なんだ

          ドラマが苦手 続き

          ドラマが苦手、という話の続き。 拘束感以上に苦手なのは、届く情報がダイレクトすぎることだ。 言ってる意味が分からないかもしれないけど。 私が好んで本を読むのは、受け取る情報をある程度制御できる(という錯覚がある)からだ。 読書家には小説を映像化して理解する人とそうじゃない人がいるが、私は3割くらい映像化して読んでいる。 たとえば、風景はかなり細かく思い浮かべている。場所や季節、天気、温度や匂いも細部まで想像する。でも人物はかろうじて年齢と性別がわかるくらいの映像は頭にある

          ドラマが苦手 続き

          ドラマが苦手

          noteに今クールのドラマに関する記事がたくさん上がっている。 ドラマどころかテレビからも離れてしまった自分は、いまもこんなにドラマを楽しみに見る人がいるのか、と不思議な気持ちで眺めている。 最後に見た(民放の)連続ドラマは何だったのか、wikiで調べてみたら「ショムニ」だった(古) しかも、最後のシリーズは見ていないから、2000年くらいでテレビでドラマ視聴はしなくなった。 この時期のドラマはこれしか見ていないし、この前に全話見たのは「愛していると言ってくれ」 その前

          ドラマが苦手