間違えないの一歩先
この前、先生に言われて気づいた。
いつの間にか、レッスンで、構えることなくスッと弾き始められるようになってた。
以前は、まず鍵盤に指を置くのにすごく時間がかかり、やっと鍵盤に置いた指をまた外して、深呼吸して、気合を入れて、指を置いて、またやめて…と日が暮れるんじゃないか、というくらい弾き始めるのが大変だった。
緊張で手が動かない。
弾くことが怖い。
ピアノに拒否されてる。
いつもネガティブスタートで、弾かずに帰ろうと思うことさえあった。
いつからそうできるようになったのか全然覚えていないけど、いつの間にか「お願いします」と言った5秒後くらいには指が動くようになってた。
緊張していないわけではないけど、頭が真っ白になるというほどでもなく、指が震えることもあるけど、「震えてるな」と思いながら弾き始める。
そこそこ練習どおりにいくこともあれば、てんでダメなことも多いけど、そのことに必要以上に落ち込むことは少ない。
たまに「あれ?鍵盤どこだっけ?」となっても、先生がすかさずアシストしてくれるので、遠慮なく甘えて教えていただく。
少し図々しくなったんだな、きっと。
いいことかどうか、わからないけど。
あまり躊躇なく弾き始められるようになったのは、まず「慣れた」のだ。
先生にも、ピアノにも、レッスンにも。
ピアノのレッスンってどういうふうに進むものなのか、自分はどうすればいいのか、どう準備したらいいのか、最初は全然わかってなくて、いつもあまりにも手探りだった。
覚えている限りでは、先生もはっきりと方向性を示すようなことはなくて、それは先生が方向性を示さないという方向性だったからなんだけど、それがわからなかったうちは、ともかく何もかもふわっとしていて怖かった。
練習で質問ポイントを明らかにできるようになったのもある。
できるところできないところを切り分けられるようになった。
それをもとに意志的にレッスンを受けられるようになってきて、怖さよりも意欲が少し前に出てきた。
一番大きいことは、間違えないことが目標じゃない、ってわかったこと。
こんな当たり前のことが、わかったようでいて全然得心してなかった。
間違えないように弾くのはもちろん最低限のことではあるけれど、前はそこだけに意識が集中していた。間違えることよりも、間違えた後のリカバリがうまくないので、結果的に間違えたくないという気持ちが強かった。
でも、別に間違えてもいいんだ。
先生はレッスンの初日から一貫して「間違いは問題じゃない」と言い続けていらした。
間違えないことが目標じゃない。
その先を見なさい、ってことだった。
ようやくそれがわかって、弾き始めが恐くなくなったのかもしれない。