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不安定な環境からイノベーションを起こす人材が生まれる。スタートアップが非連続な成長を実現するために必要な「原動力」とは?

New Innovationsは2023年4月に合計54.1億円の資金調達を完了し、OMO 事業のさらなる拡大に向けて動き出しています。引受先となったKDDI株式会社の中馬様と、当社CEOの中尾・COOの山田が対談を実施。投資における考え方やNew Innovationsへ投資に至った背景、今後の期待などについて伺いました。

■投資家プロフィール
中馬和彦(ちゅうまん・かずひこ)
KDDI株式会社 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長
1996年に国際電信電話株式会社(現KDDI株式会社)入社。INFOBARをはじめライフスタイルブランドiida、au Smart Sportsなどを手がける。2014年からジュピターテレコム株式会社 商品企画副本部長として、4K-STBやJ:COM Mobileを立ち上げる。その後、ジュピターショップチャンネル株式会社 執行役員を経て、現職。ベンチャー支援プログラム「KDDI∞Labo」やベンチャー投資ファンド「KDDI Open Innovation Fund」を統括。

スタートアップしかイノベーションを起こせない

──中馬さんはこれまで大企業とスタートアップによるオープンイノベーションや新たな価値創造などを手がけていますが、あらためてスタートアップの果たすべき役割は何だと思いますか。

中馬:とてもシンプルで、スタートアップしかイノベーションを起こせないと考えています。正確にいえば、世の中にイノベーションを起こすからスタートアップなわけで、革新を生み出せないなら、それはただの中小企業。事業を通して社会のペインを解決していくことこそ、スタートアップの果たす役割だといえると思います。

──イノベーションを起こすのがスタートアップである、と。

中馬:我々のような大企業も、かつてはスタートアップだったんです。でも会社の規模が大きくなると、どうしても組織構造が機能の縦割り組織にならざるを得なくなります。そうなると、発想そのものが細分化した業務のオペレーションを前提にした発想になっていくので、そもそもイノベーションが起こせない企業体質になってしまうのが大企業の特徴であり、デメリットでもあります。

なので、KDDI自体では「0→1はやらない」と決めているのです。KDDI ∞ LaboやKDDI Open Innovation Fundを通してスタートアップと連携し、1→10や10→100をサポートするのが、我々の役目だと捉えています。

その際、意識しているのはKDDIの持つアセットを積極的に解放していくことです。ここでKDDIが主軸となって事業を進めてしまうと、スタートアップの成長は間違いなく鈍化します。

スタートアップの成長速度を上げ、二桁成長できる事業体へと浮上させていくためには、資金も必要ですし、我々のネットワークを積極的に活用していただけるよう、サポーターに徹することが有用だと認識しています。

──1年間でどのくらいの出資を行っているのですか。

中馬:現在、年間で40社ほどのスタートアップに出資し、スタートアップのエコシステムを醸成していけるように取り組んでいます。ただ、社会課題やESGに紐づくビジネスを展開するスタートアップに限定して注目していて、いわゆる「〇〇の業界特化版」のような、先行事例を真似て儲けることを目的にしたような事業には投資しません。その事業が本当に課題解決を図ることができ、社会を良くできるのか。こうした視点をもとに出資するか否かの判断をしています。

──KDDIがNew Innovationsへ投資を決めた理由は何でしょうか。

中馬:実はハードウェア系には基本的に投資しないスタンスでした。やはり、プロダクトを量産して数を売っていくのがスケールの原則になっているからです。

そんな中、New Innovationsは小ロット多品種という時代のニーズに合ったものだったので、興味を持ちました。
バーチャルファーストの世界になったとしても、いかにリアルのあり方や世界感をバーチャルにフィードバックしていけるかが大事になってくる。それは将来的にリアルからバーチャルへと主従が変わってもいえることであり、New Innovationsの手がける事業の発展性を見込んで、出資を決めさせていただきました。

スケールの原則に対しても、リアルというのは究極的にアナログなものなので量産で利益を出す方が一般的で、投資家に対してもマーケットの大きさの観点の方が説明しやすい。でも中尾さんは、アナログに適したデジタルのハードウェアを柔軟に構築していけばユニットエコノミクスは合わせられると仰って、正直すごいなと思いましたね。

また、ハードウェアを提供するだけでなく、データドリブンでバリューチェーンの上流までカバーすることがあれば、無限のキャッシュポイントが作れる可能性がある。この点も、間違いなく伸びる会社だなと思う所以ですね。

中尾:日本には製造業という強い社会システムがあるので、ハードウェアを大量生産するにしても、収益を最大化できるものづくりしかやらないにしても、さほど労力は変わらないと思っています。

当社の場合、ハードウェアとソフトウェアを融合させたソリューションを、Tier1企業様に提案して導入事例を作っていき、そこからTier2、Tier3へと下ろしていくビジネスのスキームを作っています。

この方が圧倒的にスケールしやすいですし、デジタルが絡んでいるので、ハードウェアを導入したその先の体験や次の展開までを考えることができるわけです。

山田:ロボティクスの会社として開発のみに貢献するのではなく、業界を革新するくらいのインパクトのあるビジネスになるよう、設計などの上流部分から入っていけるのが強みだと考えています。

不自由な環境に身を置くことが、イノベーションの源泉になる

──続いて、イノベーションを起こすための人材育成について教えてください。

中馬:大企業という組織は、役割分担によって効率的かつ安定的な事業の運営をすることができます。ではイノベーションを起こすためにはどうすればいいかというと、逆のことをすればいいだけです。

レイヤーに応じた業務を割り振るのではなく、個々人が裁量を持って仕事ができる環境を作ること。私が所属するビジネスインキュベーション推進部は、社員一人ひとりの役割を決めていません。スタートアップには明確な役割分担はなく、特に初期の頃は少数精鋭で営業からマーケティング、採用、ファイナンスなどあらゆる業務をこなさなければならない。

立ちはだかるハードシングスの連続を、社員同士が切磋琢磨していくことで事業を伸ばしていく。これこそがスタートアップの特徴であり、イノベーションを起こす人材が育ちやすい環境だといえるでしょう。

──イノベーションを起こすために持っておくべきマインドセットはどのようなものだとお考えですか?

中馬:人間って役割がないと不安になる生き物だと思っています。何でもやっていいと言われると収まりが悪いというか、必死に自分の居場所を探すためにもがくんです。それがいわばイノベーションの源泉。革新的なアイデアは不安定な環境や、渇望感が原動力になってイノベーションは生まれるのではないでしょうか。

コロナ禍の激しい淘汰が起きたことで再認識した「原理原則」

──それこそ、2020年から続くコロナ禍で社会的な秩序が一変し、多くの業界でビジネスの変革が求められましたよね。

中尾:コロナ禍という予期せぬ事態が起きた当初は、事業も大きな影響を受けました。root C 事業では、toC向けは加速したものの、toB向けはダメージを受ける形となったんです。

社会を揺るがすような環境の変化で鍛えられたのはコーポレート機能でした。会社を存続させるためのファイナンスしかりですが、「世の中の原理原則」を再認識させられたと感じています。

今まで積み上げてきたものが、コロナ禍で一気に吹き飛んでしまい、別のアクションを取らざるを得ない状況に陥りました。

そんなとき、社会に必要とされるサービスやプロダクトは何かを考えられたことで原点回帰できたというか。結果、そこで起こしたアクションでキャッシュを作ることができ、経営状況も次第に正常化していった。

このような経験を味わえたことで、会社としても強くなれた気がします。

山田:コロナ禍である2020年は社員が10人ほどで、経営者と社員を分ける枠組みもないような小さな組織でした。代表の中尾も自ら動き、チーム全体で危機を乗り越えていきましたね。

また、弊社に限りませんが、コロナ禍で人材のスクリーニングができるようになりました。ある種のスタートアップに漠然とした憧れや理想を求めて応募してくる人材よりも、コトの本質を捉え、地に足つけて仕事に取り組むことができる人材が評価されるようになってきたと感じています。

スタートアップは大企業のアセットを使い倒すこと

──大企業と組んでイノベーションを起こす環境を作っていくには、どのようなことを心がければいいのでしょうか。

中馬:大企業は使いようだと思っていて、スタートアップが求めるなら、どんどんアセットを使い倒してもらいたいですね。

2017年に子会社化したソラコムがグロースしたのは、KDDIの持つ多様なネットワークをうまく活用して、事業とのシナジー効果を生み出せたからなんです。営業先の開拓やグローバルへの展開などもKDDIのアセットをフルに活かせたからこそ、日本発のIoTプラットフォーマーとして加速度的な成長を遂げられたわけです。

山田:実際に当社でもいくつか実績が生まれ始めています。例えば、root CをKDDIのオフィス内に設置し、従業員の生産性が明確に向上するのかどうかの実証を近日開始予定です。他にも、当社のOMOソリューションは世界に拠点をお持ちのお客様が多く、かつモバイルデータ通信を求められることが多いため、グローバルローミングに対応した通信モジュールを提供いただいたり、通信会社であることの基盤を活かした連携をさせてもらっています。これまで当社だけではご提案が難しかった企業様へのアプローチが可能になっていることも大きいです。

中馬:スタートアップごとにやり方はあるし、経営者によっても放任主義がいい、過干渉の方がいいなどそれぞれ関わり方が異なります。私としても、どのやり方が正解とかはなく経営者に合わせた接し方を意識しています。

KDDIはメタバース事業を成長させ、コモングランドレイヤーを実現するために引き続き取り組んでいくので、New Innovationsとシナジーを生み出せるように、今後も中尾さん、山田さんと話し合っていきたいと思います。ぜひ愚直に頑張ってください。

●採用情報
New Innovations は、OMO領域における事業企画及び技術者を積極採用しています。人型ロボットをはじめ様々な開発に携わってきたシニアエンジニアや、幼少期からロボット製作に携わり国内外のロボットコンテストで優勝した若手人財まで、幅広いメンバーが活躍している開発組織です。
ご応募お待ちしております。
https://hrmos.co/pages/newinov/jobs


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