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古いものが今に。古来の素材には無駄がない。 WINGS EVENTREPORT

こちらは、2021年12月18日に開催された #HEROCAMP  の裏側で伴走しておりました学生&運営によるWINGSチームによるイベントレポートのご紹介です。こちらのレポートは、WINGSチームの相部 水紀がお届けしております!


《素材に魅せられた人たち》 EVENT REPORT

2021年12月18日開催 #HEROCAMP より


これまでの生活のあり方が見直されている今。2020年にレジ袋の有料化、某コーヒーチェーン店によるプラスチックストローの廃止など、身の回りの商品が環境に配慮したものへとシフトしつつあります。

そんななか、最近、近代化の影に隠れてきた古来の素材が再び注目を集めているのをご存知でしょうか?このイベントでは、そんな古来の素材を使ったものづくりを行っている2人の女性から竹や絹の魅力について語っていただきました。



【SUPER GUEST プロフィール】

● MiYOさん

MiYO-organic-」代表。DINING+代表 食器ソムリエ。名古屋の創業44年の店舗プロデュース会社HOWA.INCの家業2代目。
2017年に「DiNiNG+」を立上げ、ホテルやレストランの食器やブッフェのスタイリストとして活躍中。2020年、環境に配慮したライフスタイルブランド「MiYO-organic-」を立上げ、竹製のホテル向けアメニティや地球にやさしい家庭用の日用品を展開している。

● 石坂美由紀さん

MUSKAAN代表
熊本県生まれ。多摩美術大学美術学部工芸学科卒業。専攻である現代陶芸を通して、民俗学や文化人類学に興味を持つ。ロンドン芸術大学セントラルセントマーチン校にてサスティナブルファッションを学んだことをきっかけに、エシカルファッションブランドMUSKAANを立ち上げる。自然豊かな日本の風土が生んだ美意識や精神性を、絹織物という染織工芸の中に探る取り組みを続けている。
ファッションビジネス学会Fashion good研究部会会員。



「養蚕という産業自体に無駄がない」


まずは美由紀さんが絹を扱うようになったきっかけについてお聞きしました。

美由紀さん:「かつて日本は生糸の輸出量が世界一だった歴史があり、それぞれの地域に根ざした豊かな絹織物文化が根付いていました。しかし、現在、どんどん生産者が苦しい状況になっています。そこで、このような文化をファッションとして次世代に繋いでいきたいと思い、ファッションブランドを始めました。」

また、養蚕のサステナビリティについても話されていました。

美由紀さん:「養蚕は、自然の循環の中で動いているものであり、たくさん作ることもできない。また、虫の命をいただいていることから、日本では養蚕信仰も手厚いんです。祈りとともにあるから、無駄にするということが起きないんですよね。このような絹織物文化の精神性や美意識を含めて全て、ファッションとして何かできたらなという想いでやっています。」

絹織物文化の中に潜む地域文化の継承。絹を作り出す養蚕という産業自体が持つサステナビリティ。絹という一つの素材に対して、文化や産業を超えて奥深く迫っているのはさすがです。



「竹ってすごい。
 根っこから葉っぱの先まで全部使える」


続いては、MiYOさんが竹という素材に出会ったきっかけについて聞きました。

MiYOさん:「竹の歯ブラシを作ろうと思ったきっかけは、2018年12月に北海道に出張に行ったときでした。ホテルのアメニティのプラスチックの歯ブラシを使っているときに、ふと、『あ、夜一回使っただけで捨てるんだ』と気づいた瞬間がありました。そこで、環境に配慮した歯ブラシを作ろうと思ったんです。そこからプラスチック以外の素材を考えていくなかで、竹は唯一枯渇しない資源としてのポテンシャルを持っていることについて知りました。

また、現在うちの会社は母が起業した会社の一事業部として活動していて、創業時に初めて作ったものが竹で作った割り箸であったこととも結びつき、竹を扱っていくようになりました。」

さらに、竹の魅力についてこのようにお話ししています。

MiYOさん:「竹って根から葉っぱの先まで全部使えるんです。バイオエネルギーとして使えるし、製剤として使えるし、葉っぱにも抗菌効果があって、おにぎりも入れたりして。昔からの知恵で本当にいろんなものに使える素材なんです。」

竹はお箸に使われていることから身近な素材として知ってはいましたが、まさか根本から葉っぱまで様々なものに活用されているとは思いもしませんでした。先程のみゆきさんの絹の話もそうですが、古くからある素材には無駄がない。これぞまさにサステナブル。



「これからのものづくりへのアイデア:地域間でリソースを回す」


後半では、「これからものづくりをする際に何から考えればいいのか」という問いに対してお話をしてくださりました。

美由紀さん:「産業間ではなく、「地域間」でリソースを回すというのが循環のアイデアの一つですね。例えば、蚕の餌である鍬(くわ)は、土壌も空気も改善する効果がある。葉はお茶や粉末にしてケーキにしたり。また、実はジャムや蚕のエサの食べ物になるし、染料にもなる。さらに、蚕は、繊維を取るだけでなく、シルクプロテインなどのメディカルや美容の側面でも使える。一つの素材がいろんな使い方をされているんです。それってゼロウェイストにもなるし、無駄がないし、循環しやすい。

一つのファッションという産業で考えるとサステナビリティは難しいけれど、産業間を超えて考えていくと回っていきやすい。地域間の産業の中でだと、いろんな人とつながるし、振り向いたら点と点が繋がっていたようなアイテムが生まれたらいいなって思いますね。」


絹という素材を考えた時、私はお洋服の原材料としての絹しか思い浮かぶことができませんでした。しかし、絹という素材は医療、美容、食品などでも様々な場所で活躍していることを知り、視野が広がりました。一つの素材を丸ごと、無駄なく、多様に使える絹はなんて素晴らしい素材なんだろう。素材に魅せられた瞬間です。



素材に魅せられた人たちに魅せられた


古くからある絹や竹といった素材。

天然素材だから捨てても環境への負荷が少ない。それだけでもサステナブルだと思っていました。

しかし、古くからある天然素材は、素材を丸ごと、無駄なく使えることから、より広範囲にわたってサステナブルな素材であることに気づかされました。

一方、実際にサステナビリティに基づいてものづくりをしようと思うとコストがかかったり、消費者に受け入れられにくい側面があり、サステナブルなものづくりは決して簡単なことではありません。しかし、そんな難しいチャレンジにも、不安な色を一切見せず、前しか見ていない二人のお姿はとても力強く、そして美しく輝いていました。

新しいことをやることはいつだって難しいと思います。しかし、難しいとばかりいって、石橋を叩いていても何も変わらないかもしれません。一度決めたら進む。そこには壁がたくさんあるかもしれませんが、自分を信じて進んでいくうちに仲間が増え、夢の実現に近づいていくのかもしれませんね。

素材に魅せられた人たちに、私も魅せられた。

そんな愛と勇気に溢れる時間でした。


執筆:【WINGSチーム】相部 水紀 プロフィール
立教大学卒業。オランダ留学を機にサステナビリティに関心をもつ。ファッションや食などサステナブルなライフスタイルについて日々情報収集することが趣味。



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