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【公開記念連載コラム】<『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどんな作品?>(6)「名作“独立”系アニメーションの世界へようこそ 『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』前夜祭上映作品紹介」

ニューディアー配給で9月12日公開の『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』。公開までいよいよ1週間となった本作について、不定期コラムとして作品紹介をしています。

第六弾は、渋谷のシアター・イメージフォーラムで今月5日より開催される前夜祭企画「世界の名作“独立”系アニメーション特集」上映作品の紹介です。

2010年代は、個人作家を中心に小規模な制作体制で作られた長編アニメーションが、世界の映画祭や賞レースで大規模作品に負けない存在感を放ち、高い評価を得た時代です。この前夜祭企画では、そのような世界的動向を紹介。この特集をふまえたうえで『新しい街』を観れば、より一層作品の理解が深まるはずです。

過去のコラムはこちら「【公開記念コラム】『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどんな作品?」

『父を探して』(アレ・アブレウ監督/ブラジル): 9月5, 9日 各日21時

本作は数々の賞を獲得し、アカデミー賞の長編アニメーション部門にもノミネートされた名作長編です。『インサイドヘッド』『アノマリア』『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』『思い出のマーニー』と並び、南米で作られた作品としては初めて、アカデミー賞同部門にノミネートされました。

戦後のブラジルが舞台となる本作は、生き別れてしまった父親を探す少年の目線を通じて世界の意味を再考させ、私たちのエモーションを揺り動かします。

色鉛筆や絵の具、パステルなど様々な手法によって描かれるシーンの数々は、清濁あわせもつ作品の世界観を見事に表現し、戦後ブラジルの問題を寓話的に語りました。サウンドトラックは、故ナナ・ヴァスコンセロスをはじめとするブラジルの一流ミュージシャンが多数参加。人気ラッパー エミシ―ダによる主題歌も名曲です。そんな音にも注目ください。

『明日の世界 ドン・ハーツフェルト作品集』 (ドン・ハーツフェルト監督/アメリカ)9/6, 10日 各日21時

「棒線画の魔術師」ドン・ハーツフェルトは、助成金制度のないアメリカで自らの作品が生み出す収益によって活動しているという意味で、まさしく“独立”系のアニメーション作家と言えるでしょう。

彼は短編を制作し、それを上映ツアーや配信などを通じ収益化し、次回作の制作費用とすることで、20年以上も作品制作を継続しています。アカデミー賞にも2度ノミネート、アメリカのインディペンデント文化を愛する人であれば知らない人はいない存在です。

ハーツフェルト作品の特徴には、棒線画のような単純なキャラクターがあります。それは、具体・詳細が示されないことによって、観客は自分自身の人生や記憶、感情を投影することができます。それによって、物語へと、キャラクターの人生へと、引き込まれていくのです。今回は10年代を代表する長編アニメーションとの呼び声も高い『きっと全て大丈夫』、そしてアカデミー賞短編アニメーション賞ノミネートの『明日の世界』を上映します。

『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』 (セバスチャン・ローデンバック監督/フランス)9月7, 11日 各日21時

グリム童話を大胆にアレンジすることで、女性のありかたについての現代的なドラマとして蘇らせたのが本作『手をなくした少女』です。

本作は長編作品にもかかわらず監督が全編を作画。墨絵で描かれることによって生まれる躍動感溢れる線がそのままキャラクターたちの実存的な感情へとつながっていく、アニメーションならではの魅力があふれた作品となっています。『新しい街』のフェリックス監督も、その手法の実験性と生命感に大きなインスピレーションを受けたと語っています。

作画スタイルと女性の苦難を描いたという点においては、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』を連想させ、手を無くす少女という展開は『この世界の片隅に』とも共通しており、本作は日本の現代アニメとの関係にも興味深いものがあります。

『コンシューミング・スピリッツ』(クリス・サリバン監督/アメリカ)9月8日 21時

鬼才クリス・サリバンが15年の歳月をかけ完成した初の長編作品です。TIME OUT NY誌による「史上最高のアニメーション映画」でも、第38位に選出されています。

切り紙アニメーションを中心に、立体やドローイングなど様々な技法を組み合わせて作られた映像が、監督が幼少期を過ごしたアメリカ郊外の独特の空気感を作り出しています。

とある郊外で暮らす家族を中心に、それぞれに問題を抱えた人々が繰り広げる群像劇を描く本作は、生々しく、しかし神話的でもあります。要所で挿入される音楽は感傷的なムードを演出し、観客の心に突き刺さっていきます


前夜祭企画「世界の名作“独立”系アニメーション特集」は、9月5日より1週間、各日21時より上映。通常料金は一般1,300円ですが、『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』の前売鑑賞券をお持ちの場合1,000円にて鑑賞いただけます! 当日、前売鑑賞券を買って割引を受けることも可能ですので、あわせてご覧ください。

5・10・11日には土居伸彰(ニューディアー代表)によるトークも。詳細は以下のリンクから!

そしてこの前夜祭企画が終了した翌日9/12(土)より、『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はシアター・イメージフォーラムを皮切りに、出町座、テアトル梅田、上田映劇、横浜シネマリン、名古屋シネマテーク、シネモンド(金沢)、神戸アートビレッジセンターにて全国順次公開となります!公開初日と2日目には各日先着70名様になんと原画をプレゼント!初日19:10の回上映終了後は若林恵さんを迎えたトークも開催されます。特典付きの本編BDも同日より劇場限定で発売。また、YouTubeでは特別メイキング映像も絶賛公開中です。ぜひご覧ください! 

本作の最新情報は、公式ツイッターアカウントをチェック!

https://twitter.com/ND_distribution

前売券も劇場窓口・メイジャーにて販売中。先着でポストカード5枚セットもプレゼント! お早めにお買い求めください。


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