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スタートアップにおける1人目採用は「採用負債」を意識すべき!どんな人材を仲間にするか見極めるポイント【イベントレポート】

2023年12月12日(火)に、New Agencyを提供する「Social Change Lab合同会社」の代表 種市 慎太郎が東京・水道橋にある東京都認定インキュベーション施設StartupSide Tokyoにて開催されたスタートアップ向けトークイベントHRセミナー:1人目の仲間を採用するポイントに登壇しました。

本セミナーでは、スタートアップの経営陣やビジネスサイドと会話しながら推進する戦略人事支援を得意とする種市が、スタートアップが1人目の正社員を採用するためのルートと、そこから生まれる採用戦略について解説しました。

スタートアップの採用活動は「採用負債」を意識すべき

技術負債という言葉をご存じでしょうか。

技術負債とは、効果的なソリューションではなく簡単なソリューションを選ぶことで生じる追加作業のコストを意味します。スピードを最も重視した決断の結果を表現する用語として用いられ、特に素早い決断とアジャイルな実装が求められるスタートアップで使用されることが多い言葉です。

技術負債は一概に悪いものではありません。技術負債を背負ったからこそ生まれる価値もありますし、ある程度のスピードがあるかどうかは事業の成功を左右するからです。

しかし、良い決断と早い決断の間にはバランスが必要です。技術的負債を招く決断がネガティブな結果を生むのか、あるいは負債を負う価値が充分にあるのかは、何を決断するのかによって決まります。

セミナーでは、これと同じことが採用領域においても言えることをお話しました。

スピードを重視して安易に採用を行った結果、事業の方向性やマネジメントの方針が決まってしまい、会社としての強み・弱みがスタートアップの検証速度や事業展開に対してマイナスに働く「採用負債」を負ってしまった状態です。

採用負債を負ったことで事業がうまくいかなくなってしまった状態とは、具体的には以下のようなことを示します。

1:開発組織を組成できない(開発が営業側に追いつかない)
→営業は強いけど、プロダクトは作り込まれてないスタートアップに

2:プロダクトが売れない(営業組織がうまく立ち上がらない)
→プロダクトはすごいが、エンタープライズや、大型の提携に苦戦するスタートアップに

3:経営者が常に多忙で経営者の時間がボトルネックに
→経営者しかできない仕事が多く、権限移譲が進まないスタートアップに

特に1人目の採用は会社においてさまざまなことを決定付けるため、採用負債の種類や大小に大きな影響を与えます。メンバーのカルチャーや会社の特性は、経営者やCEOの性格や専門領域だけでなく、最初の社員の得意不得意やマネジメントスタイルによって決まるためです。

「自分たちがどんなデメリットを抱え、採用が事業にとってプラスになったのか答えが出るのが数年後になるというのも『採用負債』を考えるにあたって難しいポイントです」と種市も語りました。

最初のうちは1人で戦うことに不安を覚え、会社の理念やビジョンに共感して一緒に会社を成長させてくれる人材に頼りたくなるでしょう。しかし、こうして決まってしまったものを後から変えるのは本当に難しいため、それ以上に「この人を採用することで、どのような採用負債を抱えることになるか」考え、適切な人材を採用することも大切なのです。

シード期の1人目採用、3つのパターン

上記の理由から、特に早い事業成長を目指すスタートアップでは最初の採用戦略の選定が非常に重要になります。

また、もしそこで得た負債が事業に影響しそうな場合に効率的に修正を行うためには、それぞれの選択肢にどのようなメリットとデメリットがあり、修正するにはどのような方法があるのか理解していることも重要です。

ここではCEOと事業の特性、企業文化からスタートアップがシード期に採用すべき人材の採用戦略を見ていきます。

シード期の1人目採用には、3つのパターンがあります。

1:プロダクトファースト採用
2:ビジネスファースト採用
3:CoS(chief of Staff)採用

1:プロダクトファースト採用

CEOタイプ:ビジネスサイド特化型
事業特性:競合が多くプロダクトの実装力で勝負が必須な業界
企業特性:エンジニアよりも営業の方が花形な会社

まずは、エンジニアマネージャーやリードエンジニアを採用するパターン。これは営業の持つ影響力が強く、エンジニア職があまり目立たない会社に多く当てはめられます。こういった事業は開発組織に加わるエンジニアの採用が難しく、それによってプロダクト作りが遅れてしまう可能性が高いからです。

また、CEOがビジネスサイドに寄った人間の場合も、1人目は技術分野に詳しい方を入れるべきでしょう。

2:ビジネスファースト採用

CEOタイプ:プロダクト/管理サイド特化型
事業特性:競合が少なく、初期はプロダクトの価値で売れる事業
企業特性:営業より開発者や管理サイドが花形な会社

次に、BizDevや営業マネージャーの採用に力を入れるパターン。1とは逆に、プロダクトそのものが強みになることから、営業よりも開発者や管理サイドの影響力が強い会社で取り入れるべき採用戦略です。

こういった会社は経営者自身があまり営業が得意でないケースが多く、例えプロダクトが良かったとしても事業が伸びない可能性があるからです。

3:CoS採用

CEOタイプ:経験豊富なCEO/ドメインエキスパート/ジェネラリスト
事業特性:ニッチまたは参入難易度が高く、CEOの経験が事業の強みになる
企業特性:専門チームが多数所属する会社

最後に、CoS(Chief of Staff)や営業事務を入れる場合。CoSは、アメリカのスタートアップなどで増えつつある職種であり、一般的にはCEOが自らの業務に集中しパフォーマンスを最大限発揮できるように、サポートを行う役割とされています。

これはCEOがビジネス・技術のどちらにも詳しいケースや、CEOの強みやスキルがそのまま自社の価値になる事業で取り入れていただきたい採用戦略です。法学や医療など、専門的な知識が必要な業界では特に有効でしょう。

自社はどのタイプに当てはまるのか、ぜひ検討してみてください。

質疑応答&クロストーク

セミナーの質疑応答では、集まっていただいた皆さまからその場で質問をいただき、回答をしました。参加者の方の中には、いま現在プロダクトを開発しており、これから1人目採用をするかが悩んでいるという方も。

現状を深掘りながら実際にどのパターンに当てはまるか考えていきました。

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