見出し画像

丘田ミイ子の【ここでしか書けない、演劇のお話】⑧ 観劇前後のことも語らせて!―劇場×銭湯 オススメマッチング10選―

みなさん、こんにちは!あっという間に桜も満開を過ぎましたが、葉桜は葉桜で余韻が美しい春、みなさんいかがお過ごしですか? 入園・入学・入社シーズンで新生活が始まった方もいらっしゃるのではないでしょうか?始まりの季節にはどうしても緊張や不安が付き物。そこで、今回はガラッと趣向を変えてお届けしたいと思います。
演劇についてのあれこれを語る本連載では、これまでさまざまなテーマを元にわりとガッツリとした情報量でお届けをしてまいりました。なので、今号ではいったんの休憩といいますか、肩の力を抜いて、重い上着も脱ぎ去って、ちょっとゆるりとしていただきたいと思います。かく言う私も現在、休肝日ならぬ休観日シーズン。3月に観劇がドドッと立て込んだこともあり、2週間ほどですが観劇をおやすみしています。
始まりだからといってがんばらなくていいんです。好きでも休んでいいんです。自らにも呪文を唱えるような、そんな気持ちで今日は演劇以外のお話をしたいと思います。
「なーんだ、演劇と無関係の話か」と閉じようとした方!実は全く無関係でもないので、どうぞもう少々お付き合いいただけますと幸いです。

「この劇場の時はここでランチ」「あの街なら観劇帰りの一杯はこの店」
そんな観劇ルーティーンが皆さんにもそれぞれあるのではないでしょうか?
私は東京芸術劇場に行く時には駅構内のSoup Stock Tokyoによく行きます。あとは、ザ・スズナリやシアター711の時には古書ビビビ、吉祥寺シアターなら百年、世田谷パブリックシアターならtwililightと、劇場近辺のお立ち寄り本屋さんもいくつか決めています。
そんなこんな観劇前後の過ごし方の中でも今回はズバリ、お風呂について。実はその人生においては劇場よりも銭湯にいる時間の方が長い私でございます。昨年初めて温泉地や旅行先を含んで年間の回数をカウントしてみたら200を越えており、ちょっと自分でも引いてしまったのですが(笑)、今日はそんな私のオススメの劇場と銭湯のマッチングをご紹介したいと思います!

「お風呂と演劇?やっぱり無関係じゃないか!」と思った方もいるかもしれませんが、私なりに意味があって長年このルーティーンを踏んでいるのです。
と言うのも…演劇を観た後に自分の感想や解釈がまとまりきらなかった時、SNSなどで他の人の感想を読んでしまうことってありませんか?私はめちゃくちゃあります。そこには確かに一人では辿り着けない発見があって、決して悪いことではないのですが、もう少し誰でもない自分がどう感じたかを探りたい、誰にも何にも左右されていない自分の感触と向き合いたいという気持ちもあるんですよね。つまり、観終わった後はなるべくデジタルデトックスができる場所に行きたい。そんな時に打って付けなのが、ズバリ銭湯というわけです。もちろん、観劇前に頭をリフレッシュさせるのもアリですが、以上の理由から私は観劇後に行く方が多いです。とはいえ、公共浴場は抵抗がある方もいらっしゃると思いますので、そういった方はごめんなさい!どうか、「へえこんな場所もあるのね」くらいの軽さで読み飛ばしてもらえたら…。
今回はお散歩も加味して劇場から徒歩30分までを範囲内として私の行きつけの劇場×銭湯コースを10パターンご紹介!では、湯ったりと参りますよ〜!

① 座・高円寺×小杉湯orたからゆ

座・高円寺に来たときにオススメなのが今や各メディアでも引っ張りだこの人気銭湯、真っ白なミルク風呂でお馴染みの小杉湯です。サウナこそありませんが、あつ湯と水風呂の交互浴でしっかりとリフレッシュできます。実はこの小杉湯は私の元ホーム銭湯、一人暮らしをしていた頃に二日に一度の頻度で訪れていた銭湯なんです。なので、今でも時々ふるさとに帰るつもりで訪れています。

ガッツリサウナに入りたい方には、少し距離はありますが野方方面へのお散歩延長で、たからゆまで足を伸ばすのもオススメ。リニューアルオープンしてさほど時が経っていないので、とっても綺麗!あと、可愛らしくデザイン性の高いグッズも充実。私は手ぬぐいを愛用しています。グッズは可愛いですが、サウナイベントは本格派。熱波師さんによるロウリュイベントでは結構な爆熱風が吹き乱れますが、外気浴でのクールスィングも込みなので整い方が違います。また、たからゆはサウナの種類が二種類あり、月毎に男湯と女湯が入れ替わるので行く時によって違うサウナが楽しめるのも魅力。女湯にはパックまで完備!とってもホスピタリティの高い銭湯です。

② 世田谷パブリックシアター/シアタートラム×駒の湯

三軒茶屋で観劇した時に行くのが古き良きレトロ町銭湯、駒の湯。80度くらいのドライサウナでサウナ慣れしていない方も入りやすいです。が、水風呂は温度よりもしっかり冷えた体感温度でキリッと引き締まる。特徴は昭和風情溢れる雰囲気、だけでなく、サウナ内でも昭和歌謡がかかっていること。私は観劇後は無音サウナが有難いタイプですが、なぜかここのBGMは気にならないんですよね。あと、水風呂からの掛け水が禁止で隣の冷水シャワーを使用するシステム。銭湯ではこうしたまさに「郷に入れば郷に従え」の面白さを感じることも多々あり、ローカルルールが銭湯によって異なるのも興味深いんですよね。常連が幅を利かせていて入りづらいことがある。というのも正直な側面ですが、一般的なルールさえ守っていれば気にすることはありません。常連でなくとも、堂々と入ろう!が私のモットーでもあります。

③ シアター風姿花伝×五色湯

昭和27年創業の町銭湯が令和4年にリニューアルオープンしたのが、シアター風姿花伝すぐそばの五色湯。設計を手がけたのは、多くの銭湯ファンを魅了する今井健太郎建築設計事務所。都内では他にも中目黒の文化浴泉、渋谷の改良湯、江古田のえごた湯、千駄木のふくの湯と枚挙にいとまがありません。ここに来た時につくづく感心してしまうのがサウナ・水風呂・外気浴の導線の完璧さと外気浴エリアの造り。恐らくは土地上の制約もあり決して広々した空間ではないのですが、絶妙なポケットに収まるようなフィット感と見上げると独り占めできる空、えもいわれぬ抜け感があるんです。個人的には観劇を振り返るためのもってこいスポット、余韻と想像を広げながら自分の感想を体に落とし込むベスト銭湯として通わせてもらっています。

④ せんがわ劇場×天然温泉仙川湯けむりの里

せんがわ劇場から徒歩6分、500m圏内の神立地に佇むのがここ天然温泉仙川湯けむりの里。いわゆるスーパー銭湯で、文字通り天然の温泉を堪能できます。広々としたサウナも魅力ですが、私のお気に入りスポットは露天エリア。種類の違うお風呂が並んでいて、その横にベッドタイプの椅子が二つあるんです。ポカポカ温まってからの寝転びクールダウンだけでもスッキリするのですが、ここからの眺めもまたポイント。椅子の前に木があって、その葉が風に揺れるのを眺めていると、自分の頭の中がだんだん静かになっていくんですよね。劇評を書く前にわざわざ行ったこともありました。また、ここのオススメ特典はなんといってもバースデー割引!お誕生日は入館料が無料になるので、誕生日は予定がない限り一日中ここにいます(笑)。

⑤ 王子小劇場×やなぎ湯 

王子も良い銭湯がたくさんあるのですが、あえて私がいつもぐっと足をのばすのがこのやなぎ湯です。電車だと東十条、王子神谷が最寄りで王子駅付近からだと車だと5分、徒歩20分くらい。劇場を起点に考えると少し距離はあるけれど、それでもわざわざここに行くだけの価値のある名サウナ。95度前後、さらに20分毎くらいの3連噴射のオートロウリュストーブで結構な熱さなのでハードめが好きな人にとくにおすすめ。内湯とさらに露天風呂もあり、ささやかにも全てがつまった充実の町銭湯。私はここでは外湯にじっくり浸かりながら観劇を振り返り、締めにサウナと水風呂、最後は立ちシャワースペースで頭から爪先までを流します。

⑥ アトリエ春風舎×大黒湯

小竹向原付近にも昔ながらの銭湯が結構たくさん点在しているのですが、中でも私のお気に入りはアトリエ春風舎から徒歩15分ほどのところにある大黒湯です。お風呂の中はもちろん脱衣場も広々していて、いるだけでとても気持ちがいい。ここに立ち寄るときは湯上がりの時間も込みでつい長居をしてしまう。そんな場所です。クラシックな趣があり、時を忘れておこもりしてしまえる空間が観劇後にぴったり。特徴は露天エリアにサウナがあること。なので、外気浴への導線はとってもスムーズです。しっかりめのドライサウナを水風呂で締めてから岩風呂に入るのがミイ子流1セットです。

⑦ 上野ストアハウス×ひだまりの泉萩の湯

ドラマ「サ道」や「湯遊ワンダーランド」でお馴染みの北欧や寿湯など名銭湯が軒を連ねるこの上野・浅草エリアもセレクトが非常に悩ましいのですが、私は上野ストアハウスから徒歩15分ほど、鶯谷駅最寄りのひだまりの泉萩の湯によく行きます。とっても有難いことに萩の湯は朝湯が6〜9時、昼夜は11時〜25時というロングラン営業。観劇後はもちろん観劇前に行くことも、マチソワの間にひとっ風呂というのも叶います。しかも、“都内最大級の公衆浴場”と銘打っているだけあって、スーパー銭湯顔負けの充実っぷり。ドライサウナだけでなく、スチーム式の塩サウナもあるので、高温が苦手な方にもオススメしやすいです。お食事処も充実。入浴効果で整理のついた観劇の感想をメモしつつオーダーした食事を待つ、という時間がとてもお気に入りです。

⑧ 遊空間がざびぃ×秀の湯

木の温もりに心地よく包まれる唯一無二のスペース、西荻窪の遊空間がざびぃ。そこから徒歩5分ほどのところにあるのが秀の湯。その名の通り本当に秀でた銭湯です。サウナ料金の安さ、付属タオル・マットの充実、駐車場完備、そして夜は1時半まで営業という頼もしさにも多々助けられてきました。ソワレ観劇の後、空腹を満たしてからでも十分間に合うというのがとても嬉しい!中でも私のお気に入りは温度高めの漢方薬湯としっかりと月をとらえることのできる露天。脱衣所も広々と使いやすいですよ。

⑨ おぐセンター×梅の湯

荒川区西尾久の古民家をリノベーションしたおぐセンターは、最近知ったばかりのスポット。屋根の息づかいが聞こえてくるような味わいや商店街の雰囲気もとても良く、ただでさえ一気に大好きになってしまったのですが、目と鼻の先に銭湯を見つけた瞬間は心の中でガッツポーズをかましました。そして、驚きなのがサウナ無料。小さいけれどしっかり整うサウナ、水風呂、ジェットバス、外気浴とオールスター揃い踏みでしかもサウナが無料(2回言うほど嬉しい)!銭湯の無料シャンプーだと髪がパサついてしまうこともあるのですが、ここでは好みのシャンプー&リンスを借りることができるのでその心配もなし。次はおぐセンター1Fの食堂でごはんを食べるてから入湯しようと企んでいます。すぐそばの天ふじさんで天ぷらをテイクアウトするものオススメです。

⑩ 番外編 ポレポレ東中野×アクア東中野or松本湯

観た後に感想がまとまらないのは演劇に限ったことではありません。映画を観た後も余韻の中で色々と考えを巡らせたくなりますよね。ポレポレ東中野は私が都内で一番好きな映画館でもあるのですが、実は2大名銭湯があるのもこの街。映画を観終わった後に「さて、今日はどっちにしよう」といつも迷ってしまうんですよね。

まず、全ての水が天然地下水でありながら、純度の高い軟水を極めるアクア東中野。大正創業の老舗銭湯ですが、サウナには最新のオートロウリュヒーターが増設されており、しっとりしながら汗をかくことができます。また、ここの名物は水風呂の他に広々とした屋外プールが併設されていること。サウナ→水風呂からの広いプールに入ると、体感温度が丁度よく身も心も伸び伸びとリラックスできるのでオススメです。

お近くの松本湯も負けてません。個人的に松本湯に行ったらこの洗礼を受けてほしいと思っているのが、冷冷浴。温かいお湯と冷たい水に交互に入るいわゆるの温冷浴ではないんです。松本湯には水風呂の種類が二つあり、一つは水深が深くよく冷えたもの、もう一つは美泡水風呂と呼ばれているもので温度がそれぞれ約15度、28度とあるんですね。サウナに入ってからまず冷たい水風呂に深々と入り、体が冷え切る前に温い水風呂に入るとなんと不思議、突然どこからか風が吹きます。「何言ってるの?」と思うかもしれないのですが、外気浴で体に風が抜けていくようなあの感覚が内湯で再現されるんです。これが冷冷浴!是非体感してもらえたらと思います。

一風変わった今号、いかがでしたか?
今回はキリよく10選に収めてみたのですが、他にも、三鷹芸術文化センター×千代乃湯、浅草九劇×湯どんぶり栄湯など、オススメマッチングはたくさんあります。オススメ銭湯だけで言うともっとありますし、同時に「この劇場の近く銭湯があったらなあ」という街もあります。(強いて言うなら、演劇の街・下北沢に女性の行けるサウナ銭湯が爆誕することが今の願いです!)みなさんも「ちょっと風呂でも」と気が向きましたら、今いる劇場の近くにどんな銭湯があるかググッてもらえたら…!
ちなみに出先で銭湯を探す時に私が何年も活用させてもらっているのが、俳優としても活動されている【銭湯サウナ芸人】串谷ミキヲさんのインスタグラム。一目で土地名がわかるpostがとっても便利!また、銭湯は男湯と女湯でサウナやお風呂の種類や温度管理など結構造りが違うんです。私が書いたのは女湯の情報なのですが、串谷さんのアカウントからは男湯の詳しい情報にもリーチできますので、男性の方はぜひご活用下さいね。
それでは、今年度もみなさんどうか自分のペースで湯ったりとHave a nice theater &bath time!!

連載「丘田ミイ子のここでしか書けない、演劇のお話」
▼▽過去記事はこちらから▼▽

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
丘田ミイ子/2011年よりファッション誌にてライター活動をスタート。『Zipper』『リンネル』『Lala begin』などの雑誌で主にカルチャーページを担当。出産を経た2014年より演劇の取材を本格始動、育児との両立を鑑みながら『SPICE』、『ローチケ演劇宣言!』などで執筆。近年は小説やエッセイの寄稿も行い、直近の掲載作に私小説『茶碗一杯の嘘』(『USO vol.2』収録)、『母と雀』(文芸思潮第16回エッセイ賞優秀賞受賞作)などがある。2022年5月より1年間、『演劇最強論-ing』内レビュー連載<先月の一本>で劇評を更新。CoRich舞台芸術まつり!2023春審査員。

X(Twitter):https://twitter.com/miikixnecomi
note:https://note.com/miicookada_miiki/n/n22179937c627


▽舞台公演や映画のチラシが、無料でご自宅に届きます!▽

17,100名の舞台・美術ファンにお届け中!「おちらしさん」への会員登録もお待ちしています! おちらしさんとは⇒https://note.com/nevula_prise/n/n4ed071575525