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ナショナル・シアター・ライブを勝手におすすめしてみた

こんにちは!おちらしさんスタッフの水口です。

先日、おちらしさんWEBでもご紹介したナショナル・シアター・ライブが、
9月24日からシネ・リーブル池袋にて再度アンコール上映イベントの開催が発表されました!
しかも今回は、東京のみならず、名古屋のミッドランドスクエア シネマと、札幌の札幌シネマフロンティアの2劇場でも11月19日から行われることに!!

今回は、再アンコール上映イベントに合わせて、ナショナル・シアター・ライブのおすすめ作品3つを勝手にご紹介しようと思います!

そもそもナショナル・シアター・ライブって何?

イギリスの国立劇場、ナショナルシアターが製作した舞台、その中でも厳選されたものを映画館で観られるというもの。イギリスでは2009年に開始され、日本でも2014年から行われています。

本来なら、イギリスまで行かないと(場合によってはチケット入試困難でイギリスでも)観られない作品が、国内の映画館で観られます。何より価格が4000円程度と、イギリス遠征+現地のチケット代と比べれば断然安いので、本当におすすめです。

また、舞台作品の映像化でありがちな「何故そこを映してくれない…」といったことがあまりないうえに、開演前や休憩中には演出家・スタッフのインタビューなどもあり、作品をたっぷりと楽しむことができます。

わたしは2018年の『フォリーズ』で初NTLiveを体験して以来、作品・映像のクオリティの高さと、映画館で低価格で観られる気軽さにすっかり虜になり、これまで8回ほど鑑賞しました!
それでは、わたしのおすすめ作品を紹介していきます!

おすすめ作品①『リーマン・トリロジー』

アメリカの投資家で2008年の「リーマン・ショック」の発端となるリーマン・ブラザーズ。移民としてやってきた19世紀、栄光を手にした20世紀、そして凋落を迎える21世紀、150年以上に渡る一族の物語をたっぷりと魅せます。

中でも特筆すべきは、長い歴史の物語に関わる数多くの登場人物たちを3人のおじさま俳優だけで演じ分けます。俳優さんご自身に近い年齢の役もあれば、時には少年・少女を演じることもありますが、観ているうちに違和感を抱かなくなってしまうのは、俳優たちの実力の賜物ですね。
また、音楽も生演奏のピアノのみ、舞台装置も2008年の倒産時のビルの一室を思わせる無機質なセットのみで展開していき、とてもシンプルになっていますが、シンプルさゆえにどんな場所にでもなってしまう面白さも堪らなく好きです。

3幕で構成され、休憩時間を含めるとおよそ4時間もかかる超大作ですが、一瞬たりとも飽きることなく、どんどんと物語に惹きこまれてしまいます。
時間の長さに躊躇っている方がいらっしゃったら、是非、足を運んでみてください!!それ以上の面白さが待ってます。

最近、翻訳本も発売開始されたので、鑑賞と併せて翻訳本にもチャレンジしてみたいですね!

おすすめ作品②『戦火の馬』

第一次世界大戦のために売られてしまった馬を取り戻すために志願兵の年齢に満たない少年が戦地へと向かう様子を中心に、馬の目線を通して第一次世界大戦の戦禍が描かれます。

映画版も製作された作品ですが、舞台版の面白さは何と言っても馬や動物の表現方法!馬を始めとする動物たちは全て木製のパペットになっており、どれも人が外から、或いは中に入って操ります。
登場人物たちが馬や動物に対して、どのような扱いをしているかによって、そのパペットの見え方が変わってくるのも、この作品ならではの表現になっています。動物たちに愛情を持って接している人には本当に本物の動物のように見えます。対して、「道具」として扱っている人たちや、その果ての動物たちの姿は、生命があるものとしては見えなくなってしまいます。

時代・テクノロジーの転換点でもあった第一次世界大戦・そしてその中での悲劇と、かすかな希望が描かれる作品です。こちらも是非、映画館の大きなスクリーンで味わっていただきたいです!!

おすすめ作品③『フォリーズ』

ナショナル・シアター・ライブでは珍しいミュージカルの演目です。『スウィーニー・トッド』や『イントゥ・ザ・ウッズ』、『メリリー・ウィー・ロール・アロング』などを手がけたスティーブン・ソンドハイムによる大作ミュージカルです。

1920~40年代にレヴューショーで栄華を極めたニューヨークの劇場・ワイズマン劇場が解体されることを機に、かつて活躍した女優たちとその夫・愛人たちが集います。
栄光を手にしセレブとなった人もいれば、都会から離れて専業主婦となった人もいたり、彼女たちの状況は様々。

MGMのミュージカル映画や、ジークフェルト・フォリーズをオマージュとした華やかなレヴューシーンが次々と展開されます。その一方で、華々しさとはかけ離れた現実の苦い経験、老いや別れ、叶わぬ恋、描いていた未来との違いなども同時に語られていきます。
そしてこの作品の面白さは、ショーガールだった頃の彼女たちが、過去の記憶のように、あるいは劇場の中に居続けた亡霊のように、舞台上に同居しているところ。若かりし頃の姿と歳を重ねてからの姿の両者が同居しているからこそ、登場人物たち・そして音楽が何層にも意味を持って来るので、本当に見応えたっぷりです。

実は、このNTL版の『フォリーズ』が本当に好きなんですが、その理由には宝塚が好きだから、ということも大きく影響しているように思います。
というのも、『フォリーズ』も宝塚歌劇も、若い女性たちが中心となってレヴューをやること、そしていつかはその夢の世界から離れなければならないことなど、共通点が多いんです。また、レヴューシーンも宝塚でもこの作品と同じものがオマージュとなっているものも多く、観ている最中に嬉しくなってしまう場面も多々ありました。(ヅカヲタな方へ向けて言えば、岡田敬二先生や酒井澄夫先生のレヴューや『華やかなりし日々』(2012)などを履修すると、より一層楽しめると思います)

終わりに

さて、ナショナル・シアター・ライブのおすすめ作品を勝手にご紹介してまいりましたが、「観たい!」と思える作品はございましたか?
アンコールとして、再上映の機会が定期的に行われていますが、権利関係の問題から、一度きりしか上映できない作品・今回を機に観れなくなってしまう作品も結構あります。(わたしも3年前の『エンジェルス・イン・アメリカ』を見逃したことをいまだに後悔しています…。)
感染状況がまだまだ不安な状況ではありますが、ぜひ、観に行ってみてください!!


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