見出し画像

健康診断などで高血圧を指摘されること、よくあると思います。食生活や運動不足、加齢とともに気になっている人は多いのではないでしょうか。しかし、「高血圧というだけで別に症状はないから、そのままでいいや」にしている方は注意が必要です。この記事では高血圧の原因や高血圧によるリスクについて詳しく解説していきます。

高血圧とは?

身体を動かしたり寒さを感じたりストレスを感じた時には、正常な反応で、だれでも一時的に血圧が上がります。この正常な反応とは違い、安静にしている時でも慢性的に血圧が高いの人は注意が必要です。具体的に高血圧と診断される基準値は、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)140㎜Hg以上/拡張期血圧(いわゆる下の血圧)90㎜Hg以上です。上・下の血圧どちらか、もしくはこの両方が基準値を超えていると高血圧と診断されます。

高血圧はなにがいけないの?

では、なぜ高血圧がいけないのか、原因は様々ありますが、ひとつ例えるならば風船を膨らませた状態を想像していただくとわかりやすいでしょう。風船はある程度膨らむと簡単な刺激でも破れやすくなります。高血圧の方の血管でも同じように、風船が膨らむように血管に圧がかかることで、傷がついて破れることで脳出血や大動脈解離などを引き起こします。
また、小さな傷を修復、また修復と続けていくと次第に血管に柔軟性がなくなり、硬く、厚い血管になります。これが高血圧による動脈硬化で、血管が詰まる原因になると心筋梗塞や脳梗塞などに繋がります。
他にも、高血圧で動脈硬化が進んでいると血管の高い圧に押し勝つために、心臓に負担がかかり、心肥大や心不全の原因になります。
さらに高血圧が怖いのは、このようなことが全身の血管や脳・心臓・腎臓・眼などの血管で気づかないうちに進行しているということです。症状が出たら時すでに遅しで、脳梗塞や心疾患、腎不全、眼底出血による失明など治療をしても元の身体には戻れない、取り返しのつかないということもよくあることです。

高血圧の原因と生活改善のポイント

高血圧には、原因の分からない本態性高血圧と、病気など高血圧の原因がはっきりしている二次性高血圧があります。
高血圧の約90%が本態性高血圧であると言われています。遺伝や生活習慣が原因になっていることが多く、生活習慣病の一つです。
具体的には以下のような生活習慣が原因と考えられています。

⑴過剰な塩分摂取

塩分(ナトリウム)はカリウムとバランスを取りながら体内の水分量を調整しています。塩分(ナトリウム)が過剰になると、濃度を一定に保つために、体内に水分が蓄積して、血液量が多くなることで高血圧になったり、むくみの原因にもなります。

生活改善のポイント:食塩相当量 1日6g以下!

⑵野菜や果物不足(カリウム不足)

野菜や果物にはカリウムが多く含まれています。先に説明した通り、ナトリウムとカリウムはバランスを取りながら血圧をコントロールしているため、カリウムが不足すると高血圧の原因となることがあります。
平成27年国民健康・栄養調査では、食塩の1日の摂取量は平均すると9.7gで、私たちは慢性的に多く摂取していることが分かります。

生活改善のポイント:日常的に食塩は多くとっているので、野菜も多めにとる!

⑶肥満

肥満の中でも内臓脂肪型肥満でおへそ周りや下腹にぽっこり脂肪がついている方、具体的にはおへそ周りの周径が男性85㎝以上、女性90㎝以上ある方は注意が必要です。主な原因は①過食による塩分の摂り過ぎ②インスリンの効きが悪くなることで、過剰に分泌されたインスリンが腎臓でのナトリウム再吸収を促進する③インスリンが交感神経や血管収縮するホルモンの働きを高めること。
また肥満の方は、脂質異常症や高血糖も同時に起こっていることが多く、コレステロールによる動脈硬化の促進や、インスリンによる作用などから肥満の方は高血圧になりやすいと言えます。

生活改善のポイント:食事の改善!野菜を多くとりつつ食べ過ぎをなくす!

⑷運動不足

適度な運動による効果は、①ナトリウムの排泄作用を高める②自律神経のバランスを整える③インスリンの効きをよくして肥満の防止、インスリンによる交感神経や血管収縮ホルモンの働きを抑えることです。
運動不足の方では、これらの効果がなくなるのに加えて、血流が悪くなり、さらに高血圧を招く原因になります。

生活改善のポイント:適度な(1日合計30分程度・2日に1回・軽く汗ばむ程度の)運動を継続して続ける!
※安静時血圧が高い方が急に運動を行うと症状が出る場合があるので医師の指導の下で行うようにしてください。

⑸ストレスによる自律神経やホルモンバランスの乱れ

ストレスがかかると、交感神経を優位にして、ストレスホルモンを分泌し、ストレスに対抗できるように身体にアクセルをかけます。このストレスに睡眠不足や疲労、生活習慣によってストレスの許容量を超えると、アクセルが暴走するように自律神経やホルモンバランスが乱れ、高血圧など体の不調を招く原因になります。
逆に、無ストレス状態で、全く活動せずに交感神経の活動が低下すると、いざ動こうとしたときにアクセルがかからず、身体が重い・だるいなどの症状が出やすくなります。休みの日に寝すぎたり、まったく動かないと休み明けに身体がだるかったり、ぼーっと無気力になるのはまさにこの状態です。

生活改善のポイント:適度な運動、1日7~8時間睡眠、リラックスできる時間を作る!また、休みの日に全く動かないのはNG、趣味や運動など少しでも動いたほうが自律神経やホルモンバランスを整えるきっかけになる!

⑹喫煙

たばこには数千種類もの化学物質や有害物質が含まれていて多くの病気の原因となります。これらが身体に入ると血管を傷つけて動脈硬化の原因になったり、交感神経を優位にしたり、酸欠状態になることで血液を多く産生することで、血圧が上がる原因になります。たばこはその他にも高血糖や脂質異常の原因にもなりますので、喫煙はまさに百害あって一利なしです。

生活改善のポイント:禁煙する!!受動喫煙でもたばこを吸ったのと同じ影響があるので、周りの人にも協力を依頼したり、禁煙が難しい場合は取り返しのつかないことになる前に、一度禁煙外来を受診してみることをお勧めします。

⑺加齢

加齢とともに水分量が少なくなり柔軟性がなくなるのは、肌や髪だけでなく血管にも同じことが起こっています。健康な人でも誰もが年とともに動脈硬化が進んでいくので、特に働き盛りの30~40代以降からは忙しい中でも少しづつ身体をケアしていく必要があります。

生活改善のポイント:30~40代以降の方は年が増えるごとにリスクが大きくなっていくため、⑴~⑹を特に注意して生活改善をしていく!

血圧高めの人が日常生活で特に気を付けてほしいこと

ヒートショック

血圧は、朝低く昼頃高くなり夜にかけて低くなる日内変動や、暑いときは低く寒いときは高い寒暖による変動など様々な影響を受けて変化しています。中でも気を付ける必要があるのが、急激な温度変化による血圧変動で、これによる健康被害をヒートショックといいます。ヒートショックが引き金になって亡くなる方が年間1万9千人いると推計されています。これは、熱中症による死亡者数1581人(平成30年)、交通事故による死亡者数2839人(令和2年)などと比べてみてもいかに多い数かということが分かると思います。

では、どのようなときにヒートショックが起っているのか?

冬場の気温差が激しくなる時期にヒートショックが発生していることが多いです。
中でももっとも危険なのは冬場の浴室です。暖かいリビングから寒い脱衣所や浴室に入ったときの血圧の急上昇、またその状態から熱いお風呂に入ることで血圧の急低下、温まった状態で再び寒い脱衣所に出た時の血圧の急上昇。これらの急激な温度変化が血圧を大きく変動させることで心筋梗塞、不整脈、脳梗塞、脳出血などを引き起こし、そのまま亡くなってしまうことが多く発生しています。
他にも、トイレに行くときも特に夜中は注意が必要です。トイレも寒く、血圧が上がっている状態で、いきむことでさらに血圧が上がり、そのあと立ち上がった時に急激に血圧が下がりそのまま倒れてしまうこともあります。特に夜中では誰にも気づいてもらえず時すでに遅しということも少なくありません。

ヒートショックを起こさないために

【入浴の際に気を付けること】

・暖房器具などで部屋の温度差を少なくする

・すぐにお風呂に入らず、先に身体を洗うかかけ湯などで徐々に体を温める

・湯温を41℃以下で設定する

・長湯をしない入る前と後に水を飲んでおく

まとめ

健康診断などで「血圧ちょっと高いから気を付けてください」と診断されていても特になにもしていないという方おそらく周りにも多いんじゃないかと思います。実際に高血圧というだけでは、重い症状はなく、あったとしてもちょっと調子が悪い程度で、すべての人が病気になるというわけではないので、ほったらかしにしがちになると。ただ、年を重ねていったときに、ある日ヒートショックを起こして、心筋梗塞や脳梗塞で倒れてしまい、治療をしても身体に半身まひなどの障害が残ってしまったり、最悪の場合そのまま亡くなってしまうことも考えられます。
そのリスクも考えて、高血圧を防ぐだけではなく、将来、健康に暮らしていくためにも、心当たりのある方は少しづつでも生活を変えていただければなと思います。

現状のようなコロナ禍でも高血圧はリスクを高めるデメリットですからね、逆にいまは健康を見直すチャンスだと思って私ももう少し痩せたらなと思います。


参考文献

STOPヒートショック(外部サイト)

熱中症による死亡数 人口動態統計(確定数)より-厚生労働省HP(外部サイト)

交通事故統計-警察庁(外部サイト)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?