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死語の「同病相憐れむ」を「傷の舐め合い」と言い換えられるか?

高校生に国語を教えていると、たびたび死語を発見します。
若い人には知られていない言葉。
高齢者には使っている人がいるから、瀕死語ですね。
死に瀕している言葉。先日も見つけました。

「同病相憐れむ」

私が教えている若者は「聞いたことない」と言いました。

私「『傷の舐め合い』はわかる?」
若者「はい」
私「それと同じ意味だね」
若者「ああ……」

「同病相憐れむ」の意味、わかってくれたようです。
では、「同病相憐れむ」イコール「傷の舐め合い」なのか?
私の脳裏に一つの映画が浮かびました。

「リーサル・ウェポン」

今から35年前に公開されたアクション映画。
大ヒットしてシリーズ化されました。私も確か「3」まで見ましたよ。

メル・ギブソン演じる刑事リッグスは妻に先立たれて自暴自棄になっています。死をも恐れない彼は、家族思いで危険なことはしたくないマータフ部長刑事とコンビを組むことになります。こちらはダニー・グローバ―が演じています。

型破りと慎重派。正反対な2人のバディもの。
サイコーにおもしろいシリーズです。

この映画に傷の舐め合いの名場面があったことを思い出しました。

リッグスと、ㇾネ・ルッソ演じる女性刑事が、身体にできた傷を互いに見せ合い、マウントとり合っているうちに、ラブシーンになだれこんでいくところ。

ネットで検索すると、「シリーズ屈指の名場面」と出てきます。私もこのシーン、笑ったなぁ。

「『リーサル・ウェポン』は不朽の名作」とも書かれていましたので、この場面、世界一有名な「傷の舐め合い」かもしれません。

このシリーズを見ていた人に、「傷の舐め合いのシーン、良かったよね」とふったら、「ああ、あの……」と、きっと思い出してもらえるでしょう。
でも「同病相憐れむシーン、良かったよね」と言ったら、「どのシーン?」と聞き返されてしまいそうです。

そんな思いが私の頭の中をかけめぐり、私は若者に、
「ちょっと訂正する。『同病相憐れむ』と『傷の舐め合い』は意味の良く似た言葉だけど、まったく同じではないから」と言い直しました。

といっても、このシーン、「舐め合い」というより「自慢し合い」なんですけどね。

「傷」のようにマイナスととられがちなものも、ポジティブに披露すれば、いいことがある!

私には教訓に思えた映画です。

読売新聞縮刷版 1992年12月31日

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