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「大地のえくぼ」とひきこもりの若者

2年ほど前、ある朗読会で聴いて、号泣してしまった物語があります。

それは安東みきえさんの短編集「呼んでみただけ」の中にある

「大地のえくぼ」というお話です。


朗読を聞いたお客さんの中で、号泣していたのは、私一人でした。


「大地のえくぼ」 あらすじ


(本を見ないで書いてますので、つたない文章でごめんなさい)

「大地のえくぼ」とは、地面にぽっかりあいた大きな穴なのですが、名前をつけられたせいか、魂が宿り、人格がありました。

孤独だった大きな穴に、スモモの木町から逃げてきた若者が落ちてきて、一緒に暮らすようになりました。

人間社会で傷つき逃げてきた若者は、穴の中の柔らかい土の上で眠り、スモモを食べ、空をながめるうちに、その暮らしがすっかり居心地良くなっていました。

「大地のえくぼ」にも、若者やスモモへの愛情が生まれていました。

若者が「人間のいる町には戻らない、これからも穴の中で暮らしたい」と言うのを聞いた「大地のえくぼ」の心に強い想いが湧きあがってきました。

「大地のえくぼ」は大きな地響きとともに、自ら土の壁を崩し、穴を埋めてしまいます。

穴は無くなってしまい、若者は出ていかなくてはなりませんでした。

最後「大地のえくぼ」は、若者はどうなったのか?気になった方は読んでみてください。

(図書館で借りれると思います。または中古)

私が号泣したわけ


わたしには、引きこもった「若者」とうちの息子が重なりました。

うちの息子も、家に8年ちかく(不登校4年+無所属4年)隠れていたのです。

(その本に出会った時点では6年目でした)

息子が外で傷ついてきたのだから、家を安全な場として暮らしてほしいとできる限りのことをしてきたつもりでした。

でも本当にこのまま、これでいいのだろうか?という思いもあったのです。

「大地のえくぼ」は若者への愛情ゆえに、最後は自分の形を、変えてしまいました。

穴の中で若者が人生を終えてはいけないと思ったからです。

わたしも息子に対して、同じように思いました。このまま可能性をつぶしてはいけないと。

わたしにとって、本当に心が動かされ、ターニングポイントとなる物語でした。


リアルな我が家の物語


息子の存在は、私の人生を大きく変えるキッカケになりました。

息子に癒されてほしかったけれども、それ以前に自分でした。

大きな穴のように虚しい心の傷を癒すために必死になりました。

それまでの自分の形を崩して埋めていくようなことをしていました。

そして、わたし自身が癒され変わることができました。

きっと何かが、息子にも影響したのでしょう。

自分の人生に投げやりだった息子が、新しい一歩をあゆみはじめています。

新しい人々に出会い、社会につながりはじめています。


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