見出し画像

#05 付き合って幸せなのは一瞬!?/好きじゃない人も付き合うと好きになる?【ニューロ横丁2軒目:恋愛②】

 恋愛をしている人は、どこか幸せそうな空気をまとっていますよね。実際に恋愛は幸福度(ウェルビーイング)を高めるのに、最も関連性が高いことが証明されています。しかし、脳科学的に「人の幸せは長くは続かない」ということも事実です。

 今回は、人を好きになることに関連した、幸福や恋愛の必要性について深掘りしていきます。

永遠に続く幸せはない!?パートナーがいると幸せの基準は上がっていく!

 彼氏や彼女がいる人は、シングルの人よりも幸せに見えることがありませんか?

 ベルギーの研究で、実際に幸福感に最も影響をもたらすのは「年収」や「年齢」「仕事」など、複数の項目がある中で「パートナーと同居しているかどうか」であることがわかっています。人との繋がりは「社会的資本」などと言うことがありますが、パートナーがいて孤独でないということは、私たちの脳にとって幸福度を上げることと結びついていると証明されています。 

 しかし、実際パートナーと付き合っていく中で、幸せに満ち溢れた感情は長くは続きません。逆を言うと、パートナーと別れてしまった後の悲しみや不安といった、ネガティブな感情もずっと続くわけではありません。

 人間の脳が、どのようにして幸せを感じ取るのか、さまざまな研究がされている中で、「プレディクションエラー仮説」というものが一番有力だとされています。これは、「私たちが何を幸せに感じるかどうかは、自分の脳が予測していることと、実際に起きることとの間のギャップによる」というものです。

 例えば、同じ「100万円を貰える」としても、1,000万円貰えると思っていたのに100万円を貰うのと、10万円貰えると思っていたのに100万円を貰うのとでは、後者の方が喜びは大きいはずです。前者のように、予測との誤差がネガティブになると悲しい、反対に予測との誤差がポジティブになると嬉しいというように、脳が予測していたものとは異なるエラーが、幸せに関連していると言われています。

 ここで重要なのは、私たち人間は一度経験をすると、脳の予測が変わってしまうということです。

 恋愛でいうと、片思いをしているときに「あの人と付き合えたら幸せだろうな」と考えるとします。実際に付き合ってみると、自分が予測していたよりも楽しいことがたくさんあり、最初は幸せを感じます。しかし、付き合い続けるにつれて、予測(恋愛においては理想)も上がっていくため、それ以上のものがないと、幸せを感じなくなってしまいます。その理由は単純で、プレディクションエラー(予測誤差)が生じなくなるからです。

 これは恋愛だけではなく、「収入」などに関しても同じ現象が起きると言われています。

 脳は学習をしていく臓器であるため、一度経験をすると、その幸せの基準は上がっていき、その基準を超えないと、「幸せ」というものを感じなくなってしまいます。それにより、恋愛に関わらず、人の幸せは長くは続かないと言われているのです。

脳の機能を高めるためには恋愛が大切?

 学習をしながら予測の精度を高めていくことは、脳の大事な機能ですが、恋愛をすることは、予測の力を伸ばすことにも繋がると言われています。

 ある実験では、自分のパートナーが痛めつけられている姿を見るのと、知らない人が痛めつけられている姿を見るのとでは、前者の方が脳が共感を示し、自分も同じように痛い思いをしている脳活動が起きることがわかっています。

 この共感は予測力と同じで、より愛が深まっていくと、より相手に起きていることが自分の身に起きているように感じやすいとされているからです。

 「相手にこういうことが起きたら、こういう感情になるだろう」ということを、脳が予測しているから起きる共感であり、その予測は愛の深まりとも関連していると考えられています。

付き合ったら好きになる?人を好きになる瞬間とは?

 「人を好きになるのに理由はいらない」なんていう言葉を、一度は聞いたことがあるはずです。「背が高いから」「顔が好みだから」というような、明確な要素があって人を好きになることもあるかもしれませんが、その反対で「付き合ってみたら、ここが好きになった」というようなことも多いのではないか、とされています。

 自分から見て、全く同じくらいの好感度を持つ2人の人がいるとします。そして、どちらか一方を選び、付き合うとします。すると、付き合った人への好感度は上がり、選ばなかった人への好感度は下がることがわかっています。

 それは、選んだという事実だけで、「この人には価値がある」というように脳が学習をする機能が働くからです。前回の「サワーグレープス」=手の届かないものに対して、自分の中で価値を下げてしまう現象と似ていますね。

まとめ

 恋愛をすることやパートナーがいるということは、幸せに関係しているといえます。しかし、脳は予測をしていくため、永遠の幸福というものはなく、いいことがあれば期待値も上がり、その期待値を超えないと幸せにはなれません。そのような脳の学習機能があるからこそ、相手の気持ちを学んでいくことができます。

 また、好きだから愛が深まることもあるかもしれませんが、付き合ったから、選んだから、という「行動」が先にあって、後から「好き」という感情が湧き上がってくることもあります。


📻今回のエピソード

ポッドキャストでも聴くことができます。是非お聴き下さい。

🎙ポッドキャスト番組情報

日常生活の素朴な悩みや疑問を脳科学の視点で解明していく番組です。横丁のようにあらゆるジャンルの疑問を取り上げ、脳科学と組み合わせてゆるっと深掘りしていき、お酒のツマミになるような話を聴くことができます。

  • 番組名:ニューロ横丁〜酒のツマミになる脳の話〜

  • パーソナリティー:茨木 拓也(VIE STYLE株式会社 最高脳科学責任者)/平野 清花

  • 配信スケジュール:毎週火曜日と金曜日に配信

🤝VIE STYLE採用情報

現在、全方位的に世界に挑む仲間を募集中です🙌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?