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【アルバム紹介】OPEN WORLD EP / RoughSketch(2020)

はじめに

今回は、Notebook RecordsよりリリースのOPEN WORLD EPを紹介します。

速いぜ!

Gabber Kick

2曲目を除き、曲のジャンルはいわゆるGabber(Gabbaとも。欧州と米国で表記ゆれがあるそうな。)、その中でもSpeed Coreに当たるかなと思います。オランダはロッテルダム生まれのコテコテ=クラブミュージックで、今日の楽曲の根幹を決定づける1領域となっています。

特にガバキック。Gabberでは、鼓膜に臓腑にのしかかるような歪んだキック音が終始楽曲を支配します。歪みはリズムを飛び出し、ついにはメロディーラインに食い込んできます。

生楽器でない音源は、こういう圧・速さ盛り盛りの曲で特に活きてきます。「パーカッションを歪ませる」という発想自体、楽曲制作がデジタル移行して初めて生まれるものだと思います。(曲の速さについてはmustではないのですが、青天井で上げられるのでBPM4桁の曲なんかもあったりします。Speed Coreは、中速(?)くらいのGabberを指すことが多いらしい。)

そういうわけで、「デジタルゴリ押しガバキック」「シンプルな曲構成・音色数」といった特徴を携え、生まれてから20年ほど経つジャンルにも関わらず今でも大人気(!)のGabber。今回のEPも特盛の激しい曲で構成されており、憂さ晴らしにはこれ以上ないアルバムとなっています。

曲紹介

1曲目。表題曲のOpen Worldは、突き抜けるリードで軽快に始まり、Gabberの中ではかなり明るい曲調です。シームレスな世界観を表現するかのようで、聴きやすく作られていると思います。しかしながらGabberの重厚なキックも入っていて、やっぱりGabberなわけです。
このEPに共通することですが、いいところで休憩が入るのも聴きやすさを支える一因だと思います。

2曲目。Nihongo Hardbass (feat. Neodash & Kymbined)
なんでしょうこれは。狙ったダサさで、一度慣れてしまうと嵌ってしまうパターンでしょう。要注意。エレピの小休憩も虚しく、癖を全身で味わうような曲に仕上がっています。
前述の通りこの曲だけは別ジャンルで、曲名にもある通りHard Bassに該当します。ロシア生まれのジャンルですがGabberのシーンとも相互交流があったようで、この曲も後半では(控えめながら)Kickがガバキックになっています。

3曲目のThe Way to Schipholは穏やかでメロディアスな立ち上がり。そのまましんみり終わってもいいし、ボーカルが入ってもいいなというところ。
もちろんそんなことにはならず、急旋回してGabberに突入していきます。
この曲のdropが冒頭に述べた「もはやメロディのキック」です。ほぼドラムパターンのみで構成され、ガバキックが際立つ構成になっています。
聴き進めていくと、このdropが最初の穏やか部分とサンドイッチになっており、両者を行ったり来たりします。ガバキックがメインかと思いきや、メロディアスも無駄にしない曲の進行です。緩急がうまい。

4曲目の777。これです。こういう曲があるからGabberを聴きたくなります。

レーベルからclipが公開されているのでぜひこちらでもお聴きいただきたいですが、最後の曲にふさわしい物量で、悩みや疲れが吹き飛ぶようです。他3曲と比べても速い曲で、BPMも景気よく777(!)です。爆速のリズムに音が敷き詰められており、2分という曲の短さを感じさせない満足感になっています。
放送禁止用語サンプリングボイスも、これだけ連呼されると気にしようがありません。それどころじゃない。日常から抜け出して大暴れするにはピッタリの曲です。

おわりに

以上4曲、『OPEN WORLD EP』でした。EPなのであっという間に聴き終わってしまいますが、ガバキックを気軽に楽しむのに丁度いいアルバムです。息抜きに頭を空にして全身で聴くことをおすすめします。

ガバキックを聴いていると、街中でたまに見かけるカーオーディオ大音量迷惑車でさえ中途半端な気がしてきます。なにもかも。
このくらい圧倒してうるさければかえって許されたりして。

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