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人生リブート指南(19)謎の湯河原メニュー「坦々やきそば」を知っているかい?

「神奈川県西部から静岡県東部のどこかの町に移住しよう」と考えた私は当初、その中心点である「熱海」にアパートを借り、そちらを現地調査の拠点にするつもりでした。
ところが実際に歩いてみると熱海の市街地は急勾配が非常に多く、クルマが無いと暮らしにくいことが判明。
そこで急遽方針転換し、拠点を置くのをJR東海道線でひとつ東京寄り「湯河原町」に移したんです。
こちらは中心部の全体が平坦なうえ、スーパーやコンビニも多く、そのうえ家賃相場も安かったので。

湯河原は万葉集にも歌われたくらい歴史のある温泉地ですが、知る人ぞ知る「坦々(たんたん)やきそば」なるご当地メニューがあるんです。
それはこの町の商工会が町おこし用に開発したもので、「コクうまピリ辛の担々ソースを使用すること」「地元の特徴を活かした仕上げのトッピングをすること」という二大原則さえクリアしていれば、あとのレシピは各店にお任せなんだとか。
だから飲食店ごとに「わが店オリジナルの坦々やきそば」が存在していて、観光客は食べ比べができるわけですよ。

ちなみに「どうして坦々にこだわるのか?」と言えば、「湯河原温泉の源泉はタヌキが見つけた」と伝えられているから。
この地の山間の河原に湧いている湯で傷を癒したタヌキが、その素晴らしさを人間に化身して広め、そこから「湯河原温泉」が始まった……という伝説が湯河原町にはあるんです。
タヌキと言えば「たんたんタヌキ」でしょ? というわけで、ご当地メニュー名は「坦々やきそば」に決まりました。

湯河原のアパートを借りて東京との二拠点生活を始めて以降、私は色んな店で色んな坦々やきそばを食べました。
中でも一番気に入ったのは、アパートから徒歩5分くらいの所にある、優しいお年寄り夫妻のやっている町中華。
最初に食べたのもこちらだったんですが、私の口には一番合いましたね。

こちらの坦々やきそばの特徴は「桜エビが入っている」ところ。
桜えびは日本で唯一、私の生まれ故郷の駿河湾でしか水揚げされないものですからね、自分でも色んな料理に使ってきました。
だから一口食べた瞬間に「おー、懐かしい」と思ってしまったのでした。
「やきそば=ソースの味が最前面に来るもの」と考える人には「ソースより桜えびの風味のほうが先に来るなんて、こんなのやきそばじゃないよ!」となるかもしれませんが、これはこれで美味しいんですよ。

もうひとつ気に入ったのが「餃子」で、こちらも「良い意味で餃子っぽくない」感じ。
全然脂っぽくなくて、こんがりキツネ色に焼き上げられた皮の食感が「パリッ」としてるんです。
なんか「餃子という名の別の料理」を食べてるような気がしましたが、これもこれで美味し!

湯河原はとても良い町で「ここに住もうかな~」と思ったこともあったんですが、迷ったあげく、別のところに移住しました。
それ以来一度も行ってないんですが、あのお店まだあるのかな~?
サービスとしてミカンをくれるお婆ちゃんと、「安く食べられるようホントはワンコイン(500円)にしてあげたいんだけど、周囲とのバランスがあるんでね~」とすまなそうに言ってたお爺ちゃんが2人で切り盛りしてるアットホームな町中華。
皆さんも湯河原に行ったら探してみてくださいね。

もしもあなたが人生リブートを考えているら、住んでみたいエリアの町歩きを事前にしっかりすることをオススメします。
ネット検索だけでは町の空気まで知ることができませんので。
神様のくれるお駄賃として、坦々やきそばみたいな素敵なメニューに思いがけず出会えるかもしれませんよ!?

画題「今でもたまに食いたくなる、クセになる美味しさなんですマジで」

たんたん焼きそば


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