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まさかの展開で始まるドキュメンタリー。☆Taku Takahashiが観た「殺人者への道」

著名人の方々にネトフリで観た作品を聞く連載がスタート。その初回ゲストはミュージシャン/DJである☆Taku Takahashiさん。m-floのメンバーであり、最近はオーディション企画「THE FIRST」から生まれたBE:FIRSTのプレデビュー曲「Shining One」を手がけたTakuさんは、映画やドラマ通としても知られています。今回紹介いただく作品は、ドキュメンタリー作品「殺人者への道」です。(ネトフリ編集部)

☆Taku Takahashi
DJ、プロデューサー。98年にVERBAL、LISAとm-floを結成。国内外でのDJ活動でクラブシーンでも絶大なる支持を集め、LOUDの“DJ50/50”ランキング国内の部で3年連続1位を獲得し、日本を牽引する存在としてTOP DJの仲間入りを果たす。2011年に自身が立ち上げた日本初のダンスミュージック専門インターネットラジオ「block.fm」は新たな音楽ムーブメントの起点となっている。LISAが復帰しリユニオンを果たしたm-floの最新アルバム「KYO」が好評発売中。

えん罪で釈放からの別件逮捕。まさかの展開で始まるドキュメンタリー

この作品は「Netflixで人気の作品」に出てきたので観始めた作品です。トゥルークライム系はあまり興味なかったのですが、もともとドキュメンタリー好きなので「ちょっと観てみよう」と。

本作は、性的暴行と殺人未遂で18年捕まっていたスティーブン・エイブリーという人が、DNA鑑定で無罪だと証明されて解放されたところから始まります。でも、そんな彼が別の殺人容疑でまた逮捕されて、終身刑になってしまうんです。でも、色んな人たちが「不当逮捕じゃないのか?」と思っていて、彼の無実を証明するために動き始める。そんなドキュメンタリー作品です。

でも、この作品って「おもしろがっていいのかな?」というところもあるんですね。というのも、現実でも結末が出ていない、現在進行形のドキュメンタリーなんです。ですので、僕は「スティーブン・エイブリーが本当に犯人なのかどうかはわからない」と考えるようにしてます。正直、本音としては「犯人ではないんじゃないかな」とは思っています。でも、殺害された女性の家族のことを思い浮かべて「もし彼が本当に犯人だったら……」と考えると、慎重にならざるを得ない。

けれども、もしエイブリーさんが無罪だったら、この事件の被害者は殺された方とエイブリーさんの2人になってしまう。いや、エイブリーさんの甥っ子も共犯者として捕まってしまっているので3人になってしまうんです。

実はアメリカってえん罪の数がすごく多くて、それが社会問題になっているんです。そこも含めて、スティーブンさんがえん罪である可能性は高いんじゃないかなと思っていて。弁護士たちもそう思って戦っていくのですが、戦局は難しい。何が難しいのかというと、もう判決が下った後なんですよ。それをどう覆すのか?という話になっています。

イライラ、ムズムズ。でも続きが気になる

本作を観ていると、当時の捜査や取り調べがずさんに行われていた様子にはイライラし、その一方で「やっぱり犯人なのかも?」と思わせられる部分もあってムズムズしてしまい、ついつい次が気になります。

検察側は隠ぺいや捏造すれすれのうまいところを行ってるんですよ。だから弁護士たちは「再審議してください」って言うんだけど、その再審議の壁がすごい厚い。もうなかなかうまくいきません。

シーズン1に出てくるアップル創業者スティーブ・ジョブズに似たルックスの弁護士もいいんですけど、とにかくシーズン2で新しく出てくる弁護士がヤバいんです。一緒に捜査してる気分になれるのが楽しいですね。

法廷劇を通して、アメリカ社会を知る。そのメリット

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スティーブン・エイブリーを取り巻くこの一連の出来事は、アメリカの郊外に住んでいる貧困層を取り巻くよくある社会問題なんです。あまり教育を受けていなくて不利な立場にいる方々は、こうした目に遭いやすい。スティーブンさんも人柄自体はおとなしめに見えるのですが、アメリカの典型的な「俺は男だから、やられたらぶっ飛ばし返すぞ」みたいな気質の人。だから安易なプロファイリングをしてしまうと、犯人像として簡単にハマってしまうんですね。

これはアメリカの激しい格差社会がもたらした事件だと思うのですが、こうした問題は残念ながら日本でも今後起こる可能性があると思うんです。なのでこのドキュメンタリー作品を観て、前もって他の国がどういう状況になっているのかを知っておくことは何かの役に立つんじゃないかなと思っています。例えば、どうしたら貧富の差を広げないようにするかをみんなで考えるヒントにもなるかもしれない、と。

今回スティーブン・エイブリーはNetflixがドキュメンタリーを作ったことによって世間に注目されていますが、他にもえん罪で収監されているのに注目されてない人たちもいっぱいいるはずなんですよ。この法廷劇が結果としてどうなるかは分かりませんが、それでもNetflixが本作を作ったことそれ自体にすごく意味がある。きっと歴史的に大事なターニングポイントとなる作品なんじゃないかと思います。

他にもある、☆Taku Takahashiさんによる作品紹介記事:
▶︎アメリを彷彿とさせるヒーローもの?☆Taku Takahashiが観た「アンブレラ・アカデミー」
▶︎音楽の歴史をサクッと学べる。☆Taku Takahashiが観た「THIS IS POP: ポップスの進化」

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