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【データ公開】2022年 アメリカ中間選挙における政治家のSNS利用動向と日本との比較


●概要

米中間選挙が11月8日に実施されます。

中間選挙とは:4年ごとに実施される大統領選の中間にあたる年に、上下両院の議員、州知事、地方議員などを一斉に決める選挙が「中間選挙」です。今回は、上院100議席の1/3、下院435議席の全てが改選される予定です。また、36の州で知事選が行われます。

我々の調査では、上院:全ての選挙区(通常34+特別1)下院:全435選挙区のうち、3n − 2区 (n = 1,2,3…)、合計164選挙区、知事選:全ての選挙区を対象として候補者のSNS利用の調査を行いました。


※なお、民主党、共和党以外の候補者は除外
※断りがない限り、数値は選挙期間中の増分ではなく、調査日の数値
※米国のデータ:2022/10/2〜18に取得
※2021衆院選、2022参院選のデータ:Facebookの数値を除いてはそれぞれ選挙期間最終日のもの、Facebookのデータは2022/9/21〜10/17に取得
※国会議員のデータ:2022/10/14〜18に取得
※特に断りがない限り、数値は全て中央値



●(日米)全体のアカウント所有率について

4SNSのアカウント所有率を、2022米国議会中間選挙、2021衆院選、2022参院選候補者でわかりやすいように比較してみました。結果としては、日本ではFacebookが退潮傾向である一方Instagramは伸びていました。日本同様、アカウントを放置している候補者は一定数いました。(特にYouTube)

無風区:やっても勝てない、やらなくても勝てるからSNSに力を入れない
接戦区:空中戦が鍵を握ると考えて力を入れる

また、議会議員で比較してみると、米国と最も差が現れているのはInstagramでした。

●米国議会選挙のSNS利用動向について


まずは、候補者を民主党、共和党で比較してみると、


Facebookで共和党、Twitterで民主党が優勢でした。トランプ騒動もあり、共和党の中でも強い保守層はTwitterを信用せず積極的に活用していないのでしょうか。

続いて、候補者を現職、新人で比較してみると


アカウント開設時期の影響が一番大きいと思われますが、Facebook, YouTubeで現職が大きく差をつけていました。逆に、新人にとってTwitter, Instagramは短期間でキャッチアップしやすいSNSといえる可能性も。

新人候補者の中で特に優勢と言われている候補者はSNSの細部までこだわりがあり、統一感を持たせようとしていました。例えば、Instagramのハイライト機能でも陣営のこだわりが伝わってきます。(下記例:優勢と言われている候補者のインスタグラムより)



続いて、候補者を上院、下院で比較してみました。


下院の選挙区人口は76万人程度であるのに対して、上院の選挙区は58万人のワイオミング州から3900万人のカリフォルニア州まで大きな幅があります。
選挙区人口が多い上院議員選挙ではSNSがより活発に利用されているといえます。


●米国議会について

2022中間選挙で改選となる現職議員を民主党、共和党で比較してみると、Twitterで民主党が、YouTubeで共和党が優勢です。

共和党候補者はYouTubeをはじめとした動画コンテンツが多く、民主党候補者のコンテンツには、主に、Twitterを始めとした言葉での投稿が多いことが特徴でした。

また、共和党と民主党の候補者においては、政党間としても打ち出しているメッセージやカラーにも大きな違いが見られました。わかりやすい例で言うと、候補者のWEBサイトの作りです。

共和党候補者のイメージ特徴としては、強さ:かっこよさ:リーダーシップ:成功:ビジネスマン:資本主義:バイデン政権に対する候補者の政策主張 をイメージさせるようなキーワードが多く散りばめられていました。

共和党候補者のWEBサイトより

一方で、民主党候補者の候補者のイメージの特徴としては、優しさ:平和:アメリカンドリーム:理想主義:自身のストーリー(政治家一家ではない、8人兄弟の間で育った暮らしなど)のような候補者自身の物語に基づいたイメージの伝え方やメッセージが多く散りばめられていました。どことなく写真の表情の雰囲気にも政党カラーの違いが見られます。

民主党候補者のWEBサイトより


続いて、現職議員を上院、下院で比較してみると


候補者同様、SNSにおいては上院議員の発信力、影響力の高さが際立っていました。また、YouTubeの差が顕著です。



また、現職議員に限定して、選挙用アカウントと公職用アカウントで比較
してみると、


米国議会選挙では、現職議員は公職用アカウントを選挙活動に使用しておらず、公職用アカウントと選挙用アカウントとの間には1.5~6.3倍の開きがあることがわかりました。

また、WEBサイトに関しても同様に、現職の国会議員には、公務用と選挙用のHPを2つ所持されています。公務用の語尾のIDが、上院議員は、https://〇〇.house.gov/ 、下院議員は、https://〇〇.senate.gov/ と共通なので、おそらく政府から支給されるものと考えられます。

例:Marco Rubio氏の公務用HP:https://www.rubio.senate.gov/


主な違いとしては、公務用では、議会活動の報告やインターンの募集等のコンテンツを置き

例:Marco Rubio氏の公務用HP:https://www.rubio.senate.gov/

選挙用のWEBサイトの方は、寄付や支援を募る呼びかけを行い、より議員の人柄やパーソナリティを感じれるように使い分けています。

Marco Rubio氏の選挙用のHP:https://www.rubio.senate.gov/

●州知事選挙について


候補者を民主党、共和党で比較してみると、Twitterで民主党、YouTubeで共和党が優勢でした。

続いて現職、新人で比較してみると

米国議会選挙と同様の傾向がありました。


また、州知事選挙、米国議会選挙(上院、下院)の候補者を比較すると、



上院議員と州知事は、選挙区の大きさは同じですが、州知事候補者のほうがより多くのフォロワーを得ていることがわかります。関心の高さが反映されているのでしょうか。


また州知事候補者の特徴として、上院と下院との間でPRのクオリティに差が見られました。わかりやすい例だと、公式ウェブサイトです。クオリティやデザインの高さで言うと、州知事>上院>下院の順でした。下院候補者は、写真やテーマカラーやフォントの統一感がなく、全体としての候補者のイメージや世界観が伝わりにくいサイト使用になっている印象が多いです。上院議員に比べるとあまり力を入れていない様子です。

(下記例:下院候補者サイトより)


一方で州知事の中でも、優勢と報道されている候補者ほど、打ち出したい候補者のイメージの統一感があり、WEBサイトやネット周りのコンテンツにはしっかりと力を入れている印象を受けます。

特に優勢と報道されている州知事候補者サイトは、候補者の表情が見える写真がトップに表示され、すぐに候補者のPVが再生できるように紐づいていることが多いです。一眼見てどんな候補者なのか、写真や動画でイメージや人柄がすぐに伝わる工夫がされています。

(下記例:優勢と言われている候補者サイトより)



●日本との比較

最後に、米国議会選挙(上院、下院)、2021衆院選、2022参院選候補者を比較してみます。

結果として、衆議院、参議院は選挙区の大きさに大きな違いがない(平均:衆43万、参77万)のでフォロワー数にもほとんど差がないこと(参院選全国比例/選挙区の差は1.2~2.0倍)が明らかになりました。


YouTube総視聴数の違いは、2022参院選でYouTube活用が活発になった(政治家がYouTuberになり始めた、YouTuberが立候補した)のが主因だと考えられます。


また、4SNSにおける各候補者のフォロワー数、チャンネル登録者数のそれぞれの和が全体に占める割合を示してみると(このグラフでは総視聴数ではなく、チャンネル登録者数を用いています)


米国の選挙では、FacebookはTwitterと遜色なく活用されている一方で、YouTubeは重要視されていないことがわかります。日本では従来Twitter一辺倒の傾向がありましたが、2022参院選ではYouTubeの活用が非常に進みました。役職の位が上になるとTwitter/Instagram比が小さくなるのは世界的に見られる傾向でした。


米国議会議員(上院、下院)、衆参国会議員を比較してみます。


下院と参議院の選挙区人口がほぼ同じであることを考えると、日本はまだまだ利用への意識が低いことがわかります。


日本では、Twitter + YouTubeの比率が高い一方で、米国では、議員になるとTwitterでの発信の比重が高くなっていました。


●地域差について


選挙区が多い4州については全選挙区調査すると


TexasでFacebookが盛んだったり、New YorkでInstagram, YouTubeが伸びていたりと地域差がありました。


●男女差について

男女/政党別に比較してみると、
Twitterでは女性が男性に大きな差をつけてフォロワーを獲得しています。




共和党男性候補者はFacebook、共和党女性候補者はYouTubeで強い、2022参院選における男女差はYouTubeではほぼ同じで、それ以外では女性が男性の1.5倍程度でした。


●接戦区/無風区について

接戦区/無風区:Facebookでは1.25.7倍、Twitterでは3.912.1倍、Instagramでは1.224.7倍の開きがありました。


知事選においても同様な傾向は見られましたが、接戦区と無風区の比の大きさは、上院>下院>知事でした。


●Twitterについて

上院議員選挙は選挙区の大きさから除外し、下院議員、衆議院、参議院選挙でTwitterフォロワー数の内訳を比較してみると、フォロワー数4桁(1000~9999)の割合は同じ程度でした。

●YouTubeについて

同様にYouTube総視聴数の結果です。


最後に:

今回の中間選挙は、バイデン大統領の1期目後半の政権運営に大きな影響を及ぼすことになります。大統領の任期4年間のうち、最初の2年間の政権運営に対する中間的な審判を下す選挙として位置付けられる中間選挙ですが、与党が敗北すれば議会運営が難しくなり、大統領の求心力低下も免れません。今回の調査結果を見てみると、日本に比べると、米国議会選挙では、ソーシャルメディアを総動員した選挙戦略は既にアメリカの選挙マーケティングの主流となっていることがわかりました。(数十年前の2008年大統領選挙でのオバマ現象も、記憶に新しいのではないでしょうか)また、国によって、重視されているSNSプラットフォームにも違いがありました。米国の選挙では、FacebookはTwitterと遜色なく活用されている一方で、日本では、Twitter + YouTubeの比率が高くなっており、特にアメリカでは、YouTubeは重要視されていないことがわかりました。上記でも述べたように、YouTube総視聴数の違いは、2022参院選でYouTube活用が活発になった(政治家がYouTuberになり始めた、YouTuberが立候補した)のが主因ではないかと考えられます。

全体としては、日本はまだまだ利用への意識が低く、日本の選挙術においては、今なお昔ながらの街頭での演説、選挙カー、紙ものが今なお大半を占めています。加えて実際に、SNSが有権者の直接的な票に結びつくエビデンスもまだまだ浅く、”周りがやっているから仕方なく”という有権者から減点されたくない意識のもと運用している候補者がほとんどでしょう。しかしながら、様々な課題はあるものの、ソーシャルメディアは候補者陣営にとって、有効ツールであることは間違いありません。無党派層や政治への関心を向上させる可能性もあるため、政治参加の観点からもソーシャルメディアは魅力的なツールとしても注目を集めています。

徐々にではありますが、ネット選挙解禁初期から政治家のSNS利用が日本に定着してきたように、今後の選挙戦術の中心として、ソーシャルメディア活用は位置づけられていくことでしょう。引き続き、今後も調査をしてきます。

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