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好きなことを追いかけてきた人生から、思いもしなかった老舗魔法瓶会社の社長へ。【ピーコック魔法瓶工業】

ピーコック魔法瓶工業は1950年に大阪府福島を拠点として創業、電気ポットやステンレスボトルなど真空断熱の技術を活かした様々な製品を販売することで知られる企業です。
社長の山中千佳氏は、創業家の長女として生まれるも、2歳上の兄がいたため家業とは無縁に生きてきましたが、順当に経営を引き継いだ兄が体調を崩したことで急遽4代目社長に就任しました。

ピーコック魔法瓶工業株式会社 山中千佳社長

これまで、自分の好きなことを仕事にするために生きてきた山中氏。社長になることなど夢にも思わず最初は反発したものの、結局周囲に説得される形で就任しました。 それならばいっそ、「社長」を好きな仕事にすればよい!と考えを切り替え今に至ります。
もともと人と接すること、交わることが好きな性格であったことから、お客様や社員と積極的にコミュニケーションをとっていくうちに、老舗ゆえの会社の硬直化を感じると同時に、これまで通りの経営では会社が成り立って行かないことに気づくことができました。
今では、会社を時代に合わせて進化できるよう改革を行うことが生きがいとなっています。


転職を経てピーコック魔法瓶工業に入社、そして社長に

もともとアパレル関係に興味があり、大学卒業後は総合商社で繊維系に携わる仕事に就いたものの、同僚と行った沖縄旅行で初めてゴルフのラウンドを回り、大はまり。
負けず嫌いの性格も相まってサラリーマンでありながらゴルフ漬けの生活を 送るようになり、好きが高じて大手ゴルフショップの店員に転職、さらにゴルフを極める為に親会社のゴルフ部門へ。思ったことを行動に起こす実行力は、このころからすでに備わっていました。

2006年3月、当時社長である父(山中茂弘氏)の要請により、父の跡を継ぐ兄(山中佳弘氏)を助ける為にピーコック魔法瓶工業に入社。家業に専念することとなります。
入社後は経理部門に配属され、簿記を一から勉強しなおし、父・兄・自分のトロイカ体制で事業に貢献しました。

2015年5月に3代目社長であった兄・佳弘氏が体調を崩したことに伴い、急遽4代目社長に就任することとなりました。(注:佳弘氏は現在快復)
経験も知識も備わっておらず、そもそも社長になることなど思ってもみなかったことから固辞しましたが、当時会長であった父や周囲に説得され、自分しかいないことを悟り引き受けました。


社長業を好きになろうと決意 女性目線での社内改革

就任当初は会長のもと帝王学を学びながら社長業を行いましたが、2018年末に会長が急逝し、事実上の独り立ちとなりました。
社長就任後、持ち前のコミュニケーション力で多くのお客様や社員の声を聞くことができましたが、経営は順風な一方で業界自体が古く、これまで通りの経営の延長では大きく変化する社会に順応しきれずジリ貧になるとの危機感を抱いていました。そんな中で独り立ちを迎え、どうせやるならより良い会社を目指して改革を行うための覚悟を決めました。

業界内に女性の経営者はまだ少なく、それゆえにピーコック魔法瓶工業は女性の感覚を活かした開発を行うことを決意しました。
ネットショッピングの普及により個人志向の波が来ていることから、新たにマーケティング部門を立ち上げ、時代のニーズに合ったお客様視点のモノづくりと、適切なプロモーションに注力する方針にしました。
また社員に向けて、これまでの経営理念をブラッシュアップし、ONEチームならぬ「ONEピーコック」となるための指針を打ち出しました。この指針には女性活用の積極推進も含まれており、社内に新たな視点を取り入れることに成功しました。
さらに、世界的な潮流であるSDGsに対して、主力商品のひとつであるマイボトルをサステナブルな社会に貢献するツールとして定義しなおし、普及に努めました。


お客様や社員の喜ぶ顔が社長業の原動力に

これらの改革を行っている最中、2019年末からのコロナ禍により、魔法瓶業界も厳しい状況となりました。
しかし新時代に備えた社内改革が功を奏し、外出制限やリモートワークによる新たなニーズにいち早く対応することができました。さまざまなシーンに向けた「ホットプレート各種」「おうち居酒屋シリーズ」「リビングポット」「ゲーミングタンブラー」など、これまでにない切り口で開発された製品が、おうち時間の充実を求める市場と合致し、落ち込みを最小限に食い止めることができました。

卓上で串揚げ-テーブルフライヤー
魔法瓶の酒器-おうち居酒屋シリーズ(グッドデザイン賞受賞)

社長という役割だからこそ、お客様や社員の喜びにつながる施策を打つことができ、その喜ぶ顔がまた社長業への原動力になるのだということを痛感しました。
まだまだできていないことも多いものの、その実現に努力することが今の生きがいです。

若いころにハマったゴルフはいまでもライフワークです。最近は業務多忙で行けないことが多く、それがちょっとストレスになっていますが、今日も大好きなお酒を色々な人と楽しむことで活力をもらいながら、社長業を行っています。