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女子と語学力(17) 〜ワタシガ ネイティブナミノ エイゴリョクヲ ミニツケタノハー〜 え!?ただのあなたの育ちの良さ自慢!?

大学時代のコヤママツコ先生(仮名)の授業の思い出について書きたい。

ボンドガール(大木凡人に似ていた国立大を卒業後社会人経験を経て入学してきた同級生だが年上の女性)は、度々必要もなさそうなのに、コヤママツコ先生(仮名)の研究室へとグループで訪れることに力を入れていた。私は心の底から驚いた。何やら「先生に顔を売る」ため、「我々のグループはとても頑張っているのですよ」と先生にアピールし、どうぞ良い評価をおつけください!とお殿様(コヤママツコ教授(仮名))に示すためにパフォーマンスとして行っている気配が濃厚だったからだ。それはまるで、私がこよなく愛する岡山県出身のお笑い芸人、千鳥の大吾の父親が、大吾の地元である、岡山県の小さな島の親分に「綺麗な形の石を拾って見つけ出して献上している」かのような姿だった。コヤママツコ(仮名)先生に顔を売る、ボンドガールの牛乳瓶の底のような眼鏡の中に、彼女の「生きる術(すべ)」のようなものがじんわりと光っているのを感じた。

ボンドガールの振る舞いに対し、ネイティブ並みの英語力を海外で身につけることができたことを度々授業でうわごとのように言っていたコヤママツコ先生(仮名)は、何やらとても得意げな表情を示し、その時、同じ研究室におられた「金髪碧眼(ここが重要!)」の同僚と思われるアメリカ人の先生に対し、「この大学の学生たちは他の日本の大学とは全然違うのよ!とても勉強熱心なのよ!」というようなことを大変にナチュラルな英語で仰られ、ボンドガールが献上したチョコをつまみ、金髪碧眼の先生に渡したのだった。その時の、得意満面の表情ときたら!コヤママツコ(仮名)先生が一刀両断で断罪する「他の日本の大学」のことを、彼女は本当に知っていたのだろうか。経歴から察するに、彼女は海外で生活をしたのち、他の日本の大学とは全く異なる素晴らしいカリキュラムを誇る大学である(笑)ICUに進学し、そこで修士号、博士号を獲得し、その後、母校であるICUにおいて「女性にとっての最高等級(©️プレミアムモルツ)」の職業である、私立大学の「大学教授(正規、雇用の期限なし、キャリア的には最高。自己実現を成し遂げ、自分らしさを最大限に発揮でき、推定年収は1,000万円をたやすくこえる職業)」に就いたと思われるので、彼女が思い切りけなす「日本の他の大学」の実情を知っているとは到底思えなかった。

彼女は、日本で生まれ育った、日本国籍であろうと思われるご子息、ご子女を、全員、アメリカンスクール(ASIJ)(American School In Japan、の略称と思われる)に進学させたことに凄まじいプライドを持っていた。ある時、ヒップホップアーティストのようないでたちの男性の学生が、彼女の授業を履修していたのだが、何かの拍子で「あなたはASIJ(エーエスアイジェェイ、と英語らしい発音)の出身なの?」という話になっており、「私の子どもたちもそうよ!ASIJ(エーエスアイジェェイ、とナチュラルな発音)は、他の日本の学校とは全然違うのよ!」というようなことを、これまた、凄まじく得意げな表情で語っていた。その時、コヤママツコ(仮名)先生の鼻は、ピノッキオよろしくにゅるりと伸び上がり、その鼻が本館(という校舎の建物)の天井を突き破り、宇宙の彼方にまで届いていくような高さであった。

私にはコヤママツコ先生(仮名)の鼻が成層圏を突き破る様子が見えた。

私はそんな彼女に、徹底的に蔑まれた、暗記中心の教育しか受けたことがなく、自分で考えることもできず、英語も話せない日本の地方の公立小学校、中学校の出身者だった。

彼女はことあるごとに日本の英語教育がいかにダメかを語った。日本の英語教育の問題点は、「英語教師の能力が圧倒的に不足している」ことが理由であることを、ため息まじりに語った。日本の英語の入試問題が、いかに馬鹿げているかを語った。日本の暗記中心の教育では、思考力を育てることができない、と語りそして嘆いた。そしていつも得意げに「ワタシガー ネイティブナミノー エイゴリョクヲー ミニツケラレタノハー」と、自らの英語力を誇りに誇りに誇りまくっていた。

私は彼女に問いたかった。あなたの、その、最高等級(©️プレミアムモルツ)の、子どもたちを全員ASIJ(American School In Japan)に通わせられるほどの高額な給料(※ASIJの学費は年間250万円を超えるノダ!https://www.asij.ac.jp/admissions/tuition-fees)は、あなたが馬鹿にしている、暗記中心の教育しか受けられず、思考力を育てることができなかった日本生まれの日本育ちの母が、狭い団地の片隅で、手帳にびっしりと収支状況を書き、外食は月一回のラーメンと餃子が最大の贅沢で、「ジャスコ」が当時の最大規模のショッピング施設で、ヤンキーに教育実習生が性的暴行を受けるもそのことが一切なかったようにされてしまうような環境で育った人間(私)による家計から、年間120万円、4年間で480万円(今はもっと高い)、自分の場合は留学後教職免許を再度取ったため、長く大学にいたので720万円(外車が買えるレベル)を必死に支払った、そんな母親が管理する家計から出された費用の一部があなたの給料になっていると。

そんな私たちの「育ち」を、英語力のレベルの低さを、目の前にいる「日本のレベルの低い教育だけを受けて思考力を育てられなかった」学生に対して言ってくるその神経はどこからくるのかと。20年以上経った今でも、改めて問いたい。彼女をひとけのない、体育館の裏に呼び出したり、会議室に呼び出して後ろ手に鍵を閉めたりして問いつめたい(前にパワハラ上司にやられた)。

日本生まれで日本育ちの英語ができない学生たちを見下していた、ICUの、英語力が日本人としてはあり得ないほど高度であった一部の教職員、学生たちに、本気で問いたい。あなたがもし、日本人として最高等級の英語レベルを身につけられたのは良いとして、身につけられなかった、私のような人間を見下す必要はないと。英語力を持っていることの良い面を上回る、その、人を見下す視点の暴力性に自覚的であるべきだと。あなたたちがもし、英語力によって、社会で優位なポジションに立てているのであるとするならば、あなたたちの価値基準によって「低い存在」であるとみなされ、英語が全くできない日本生まれ、日本育ちの日本人が、英語ができないことによってあなたたちはその立場を得ているのだと。ゆえに、英語ができない人々を見下し、小馬鹿にする必要があるのかと。海辺に落ちている、綺麗な石を朝から探し、拾って、ぜひ私に欲しいくらいだと。石は、いらないが。

ICUの学生の一部は確かにやけに裕福な人々だったが、4月に入学した、地方出身の学校出身者もそれなりに多かった。高額な教授の給料の多くは、その、コヤママツコ先生が見下す、非常に「低レベルな」教育を受けた上で、英語力にハンデがあるにもかかわらず、試験を通過した人々によって払われていたことをどうか知って欲しい。そして、日本で最も高額な私立大学の一つであるICUで学ぶための学費を払うために、日々の生活を切り詰め、学食で食べる白飯すら高く感じて炊飯ジャーを持ち込もうかと真剣に悩んで、チキンカレーならご飯も食べられるのでいつもチキンカレーを食べていた学生(私)がいたことを。420円のカレーすら高いと感じ、日々の食費すら工面することに苦労をしていた学生たち(私)がいたことを。

女子と語学力(18)に続く!


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