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ブンガクと鉄パイプ

みんな大好きえいきらさんの小説『’95 till lnfinity』がついに最終章に入りました。
思えば結構長く読者をしておりまして、「えいきらさんの記事のふりかえりしたーい!」って言ったらいいよーって言ってもらえたので、好きな記事をあげていきます!

でも読み返していたらけっこう……ご本人も出てくる方も大胆にローをアウトしてる話が多くて( *´艸`)。なので、できるだ~けソフトなところをチョイスしてみました。



『’95 till lnfinity』
'ドラッグ×青春'小説の鉄板と言えば「トレインスポッティング」ですが、「’95 till lnfinity」を読んだときは日本人でこれ書ける人いるんだ!!!と衝撃でした。
サイテーの中にある”あの時間あの瞬間”にしかない輝きみたいなものが、ちくちくささる………トップオブストリートブンガクです!

世界で最も隔離された街、西オーストラリア州パース。 スケートボード、レイブにドラッグ。その街でともに育った3人の少年、カイロ、 トーニと”俺”。

スケボーのトップアマとして期待されていたカイロは東海岸に行き、そして行方不明となる。互いがそれぞれの人生を歩み、三十路に差しかかろうとするある日、 ちんけなドラッグディーラーとなったトーニと警察本署で働く”俺”が数年ぶりに出会う。
カイロが戻ってきているというトーニの言葉に”俺”は激しく動揺し、止まっていた時がまた動き出す。

『’95 till lnfinity』あらすじより抜粋


~小説のセンスについての考察~*記事紹介はまだまだ続くから飛ばしてよーし。

小説のセンスってなんだろう?と考えた日々があった。
ダサい小説はきらいで自分の小説のダサ臭さに辟易してて、消臭!消臭!とあがいてたとき『’95 till lnfinity』は一片のダサさもなくぱーんと現れた。
まず、自分が思う小説の‘ダサさ’について。

‘ダサい小説’の対義語は‘おしゃれ小説’ではなくて、‘ダサい小説’の反対はあくまで‘ダサくない小説’。

‘おしゃれな小説’は登場人物、設定、ストーリー、言葉の選び方に気をつけておしゃれエッセンスを振りかければ、それなりに書けると思う。
そしてそれは簡単にダサい小説になってしまう。
対して、‘ダサくない小説’を書くことは非っ常にハードルが高いと思う。

なぜなら‘おしゃれ小説’はお出かけ着、気合いの入ったデート服で、‘ダサくない小説’はおしゃれ番長の普段着だからだ。ちなみにおしゃれ番長は部屋着までおしゃれだ。
おしゃれなんて個人の感覚の話で、万人受けするものなんてない、という前提ではあるけど。

そういう意味で自分にとっては『’95 till lnfinity』は最高に‘ダサくない小説’で、正直言うと、この書き方を盗みたいと思って盗めなかった小説だ。

難しい言葉も言い回しもなく、風景と感情が一本の線の様にすーと目の前に伸びていく感じにはちょっとした爽快感があった。
自分はパースに行ったこともないしスケボーもドラッグもやったことないのにその光景が見えてくる。

『’95 till lnfinity』は回想の視点でも書かれている。おじさんやおばさんが回想し始めると途端に糠味噌臭くなる小説は多いのに、匂わない!匂わないけど、そこに言いつくすことのできない感情があるのは分かる。
こういうのは表面的なところを真似しても、すぐボロが出るだろう。
根本的に違うのはおそらくセンスだ。
’ダサくない’は簡単なようで簡単じゃないから、すごいなって。

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そんなファーストインプレッションがあって、ずっと注目してます。
その頃はえいきらさん、小説しかアップしてなかったから、この人本職はコラムニストとかで、なんか執筆系のスマートな職業に就いてるっぽいイメージを持っていたんですが。

それが一変したのが………
佐世保時代の話が出てきたあたりから……

楽しいえいきらファミリーと愉快な仲間たちが出てくるのは『土方界のプリンス』『パパとポン刀、時々空気銃』
『不死身のまっちゃん』の話も好きですね。先輩後輩の話とかも、面白いよ、面白いけど……

そこで気がついてしまったΣ(゚Д゚)
えきらさんは……佐世保のDQN。


きっかけは『’95 till lnfinity』なんだけど、このあたりからだいぶえいきらさんにハマった(笑)。
なんだろう、ギャップ萌え?

逆に『’95 till lnfinity』なかったら引いてたと思う。
ちょっとこの人からんではいけない人かなって。
でも、めちゃくちゃ親近感わくことがあって、 

ちょっと街中で知り合ったドイツの水兵さんを家に連れてきて寿司食わせる(日本食ブームなんてはるか先の話の1980年代に、英語なんか喋れるわけがないパンチパーマの日本人に40分もかけて家に連れてこられ、寿司食いねぇ寿司食いねぇと次々と生魚を食べさせられる…あの時のドイツ人の気持ちを聞いてみたいものです。)ような、面倒見のいい父で
引用:土方界のプリンス01

の記事を見て「うちも!」って。

いや、うちの父も街であった新婚旅行中のドイツ人カップルをひっかけてきて、家で寿司をふるまってるんです……。生魚責め(笑)。

時を同じく80年代、かたや佐世保かたや中部の山地でよもやこんな偶然があろうかと。

でもいちばんインパクト強かったのは、中学生でアヘンと邂逅ですね。

えいきら:で、俺さすがにね、中学校3年生の2学期でアヘンは無理だなと思って。
だってアヘン戦争って歴史でやった、アヘンじゃないですか。
qbc:体にどういう風に悪いかとかではなく?
えいきら:巨大な清帝国が潰れちゃったやつですよ。

引用:【無名人インタビュー】クーロン黒沢大好き!薬物逮捕歴ありタイ移住40代より

アヘンの誘惑に、清が潰れるほどやばいんですよ!って発想が可愛い!そりゃ大変だっ!

で、くだんのインタビュー記事がこちらです。
イチオシ!
えいきらさんを知りたい方におススメ。

これ読んだ感想「え、思ってたよりマトモな人じゃん」(・Д・)!タイトルは、なんかスゴイですが…


『一生背負いう十字架』のシリーズでもえいきらさんの感覚っていうのが、出てると思います。
法的にアウトかセーフかとか置いといて、自分の存在が誰かの人生に影を落としてしまったこととか、どう向き合えばいいのか……。切実さは身につまされますね、自分事として。

 
読書歴とか音楽ってセンスをつくる大事な要素だと思うので、えいきらさんが紹介してるのは結構チェックしました。
葉っぱ関係の書物も多いけど、若い頃読まれてた作家とか気になって。
でも日本語しか読めないんです( 一一)。
村上龍がお好きと書かれてて、noteでもうひとかたセンスがいいって思ってる作家も龍が好き。センスがいい人は龍を通るのかしら。
村上龍、あまり得意ではないんですよね……。’ダサくない小説’にはドライな感覚っていうのは、必須なのかもしれないと思ったり。


それから最近アップされた特派員記事!
タイのゆるさとかいいですね。

ところ変われば( ゚Д゚)なエピソードも多いのですが、アナーキーで優しいパパが素敵なのがこちら。


最後にーーー


書いてるもののジャンルも違うし、なんなら生息区域だって違うのに自由に書かせてくださったえいきらさんの心の広さに感謝します!
どうぞご健筆とおいしいお酒を。

タイトルですが、えいきらさん鉄パイプお好きだろうと思ったんですがなんと金属バット派でした!



読んでくれてありがとうございます。