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推しが勧めた星野道夫「旅をする木」を読むと推しをもっと好きになった

”推しが推したもの” を好きになるかどうかは怪しいけど、”推しが推したもの” に触れることによって推しをもっと好きになるのは確実だ。

若い頃、私が好きになる女性は、なぜか私が好きなものと遠いものが好きだった。フラメンコとかミュージカルとか漫画「寄生獣」とかピアノとか松任谷由実とか・・・

色々勧められたけど、ハマることはなかった。
だからといって、嫌いになったり距離を置こうと思ったことはない。むしろ、新たな一面を見るようで新鮮だった。

面白いから今すぐ見てみて!(はぁと)

と言われたテレビで放送された映画を途中から予備知識なしで、めっちゃくつろぎながら見ていたら、真田広之が井戸が写っているテレビを見ていて、その井戸から髪の長い白装束の女性が這い出てきて、段々真田広之に迫り、テレビから出てきた日にゃ、うにゃあ~!みたいな変な声出たこともあったけど、それはそれで楽しめた。

このときばかりは、もっと好きになったというとやや嘘っぽいけど、こういうのが好きな一面もあるのかと好き度合いがちょっとだけ色濃くなった。

だから、別れたのはそれが原因ではない。
あれは・・・

好きな人と好きなものが一緒とわかったときは、距離がグッと縮まる感じがするけど、好きな人の好きなものが好きになれなくても、隙間ができたり、ATフィールドが全開になったりすることはないように思う。


先日、広島のローカルアナウンサー河村綾奈さんがインスタで紹介していた星野道夫「旅をする木」という本を読んだ。ちなみに、この本は三浦春馬さんの愛読書でもあったとのことで話題になっていたらしい。

どんな本といえば、アラスカを中心に活動されていた写真家の星野道夫さんが書いた旅行記のような随筆。

写真家ということもあり、写真付きなのかと思いきや写真は1枚もない。それなのに行ったことのない街の様子や人々の顔が浮かぶ細やかな描写の力で、部屋にいながらにして旅に連れて行かれる。

細やかな描写力に加えて、堅苦しさも威圧感もなく、やわらかで優しい想いが綴られていく。それだけに、読後は穏やかな気分になる。

結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味をもつものは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である(p.230~p.231 ワスレナグサより)

狙って書いたのではなく、素直に自分の気持ちを綴っただけとは思うのだけど、素敵な言葉が並ぶオススメできる一冊だ。

・・・が、私はこの本、あまり好きになれそうにない。

星野さんの生活をありのまま語られているのが魅力ではあるが、重くて暗いエピソードも多い。友達のブログなら受け止めるが、基本が根暗なので、これ以上暗いほうへ傾きたくはない。

だからといって、インスタでこの本を推していた河村アナと距離を置こうとは思わない。むしろ、色分けされた付箋が貼ってある本に、テレビ、ラジオで見る彼女とは違う一面を垣間見たようで、ますます推そうという気になっている。

”推しが推したもの” を好きになるかどうかは微妙だけど、”推しが推したもの” に触れることによって推しをもっと好きになる。

そのことを再認識させられた一冊だ。


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