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祖母の悲しい夢


4年前、祖母が亡くなった。88歳だった。70歳位までの祖母は、自分にも周りにも厳しい人だったが、孫の私にはいつでも優しかった。祖父が死んで以来、祖母は少しぼけて、仏のように穏やかな人になっていた。
最後、祖母は老人施設で生活していたが、その前の数か月間は自宅で介護していた。寝たきりではなかったが、父一人での介護は心配で、私はしばらく実家に帰って手伝っていた。
ある朝、祖母を起こしに行った。声をかけると、はっと目を開いて言った。
「夢、見てたわ」
「どんな夢?」
「おばあちゃんの行ってた分校になぁ、大きい桜の木があったんよ。夢の中でおばちゃんは1年生位で、友達と桜の木の周りをグルグルグルグル走ってるんや。みんなキャーキャー笑ってなぁ」
夢見心地で、ほころんだ顔で話す祖母を見ていたら、思わず涙が出た。
「楽しそうな夢やなぁ」
と、私は祖母に気づかれないよう必死に涙をこらえて、起きるのを手伝った。


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