見出し画像

「核武装」or「戦争反対」? 思考停止の感情論だけでなく、冷静に歴史を振り返り日本の立場を考えてみよう

昨今の世界情勢から、日本の安全保障も見直そうと考える人たちが一定数現れはじめた。どうやらひとは愚かだから、21世紀になっても話し合いだけで争いは解決しないらしい。だからこんな極東の島国でも軍備を整えないとやべーと考えるのは当然の反応だろう。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が今後、中国による台湾や尖閣諸島での「力による現状変更」に繋がると懸念している人が86%だったことがこの土日に行ったJNNの世論調査で分かりました。(中略)アメリカの核兵器を自国の領土内に配備して共同運用する「核共有」について聞いたところ日本も「核共有に向けて議論するべき」が18%「核共有はするべきではないが議論はするべき」が60%「核共有の議論はするべきではない」が18%でした。

しかしながら、「中国の脅威から日本も核保有を!」「アメリカと核共有を!」といきなり何段もすっ飛ばしたことを考えるのは危険だ。かといって逆に「戦争放棄!」とずっと叫んでいれば平和でいられるというのもまた脳内がお花畑もいいところである。これは、どちらも冷静な判断ではなく、ただの反射的な感情に振り回されているにすぎない。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

ドイツの名宰相ビスマルクの言葉だ。これは個人の在り方に対してではなく、国や組織の在り方について示している言葉だと思う。つまり、きちんと日本の歴史を振り返らなければ、また先の大戦と似たような過ちをぼくたちは犯してしまうだろう。

まずは歴史を振り返り、冷静に日本の現状を理解しよう。「核武装」も「戦争放棄」も両端に振り切った極端な意見である。極端な思想というのは、かなりのリスクを伴う。それを今から語る。

ぼくの結論は最後に示すが、これはぼくの一個人の意見であって、ぼくの結論そのものより、過程を読んでいただきたい。読まれた方には感情論ではなく、何かしら考えるきっかけとなれば幸いである。

同胞を虐殺したアメリカ・日本が侵攻した中国

ぼくは昔から単純に疑問に思っていたことがある。それは、東京大空襲や広島、長崎への原子爆弾投下により無辜の民を何十万人と虐殺したアメリカにはなんら反米感情を持たず、日本が侵略した中国には当然のように反中感情を持つひとが多いのはどういうことなのかと。また、右翼と呼ばれる人たちも、一枚岩ではないにせよ、親米反中保守が圧倒的に多い。これもおかしくないか。

画像1

同胞を虐殺したのは完全にアメリカなのに、なぜアメリカには尻尾を振って同じ東アジアの中国に対しては脅威を感じているのか。

歴史的に日本は周りをボコしてきた国

そもそも。中国はこれまでの歴史において、日本本土へ侵攻したことはない。元寇はモンゴルであって漢民族ではないのだ。それですら本土を蹂躙されていない。しかし、逆に日本は過去何度も大陸への侵攻を行なっている。

豊臣秀吉による朝鮮出兵は、明の援軍もあって16世紀おける世界最大規模の国際戦争だった。また、中国の正式な属国であった琉球王国は侵略して自分のものにしてしまったし、第二次世界大戦では重慶を爆撃して現地の一般市民を虐殺した。当の日本人はどれもあまり知らないことだが、これは史実である。

画像2

「平和ボケした日本で〜」とは日本人の間だけでよく言われているけれど、それはここ数十年の感覚であって、日本は過去、それはそれは周りをやたらとボコしに行く国だった。そのあまりの狂いっぷりに「よくぞ、白人に刃向かってくれた!」と称賛する国もあれば、「あいつら野蛮すぎ!日本こわい、危険!」と非難する国もある。前者を日本の右寄りの人たちが好み、後者を日本の左寄りの人たちが好む。ぼくはそのどちらも自覚し考えた上で前に進むべきだと思っている。

日本の特殊性①世界を震撼させたKAMIKAZE

日本という国はかなり特殊な国民性を持っている。まず、第二次世界大戦で日本人が世界を震撼させたことがあった。それはKAMIKAZEだ。第二次世界大戦の日本人は兵士でもない一般市民すら特攻して自爆した。これは世界的に見てかなり特殊なメンタリティーというのは知っているだろうか。

たとえばイスラム国では自爆テロをさせる為に非モテ男子たちを集め、「自爆して死ねば、天国で72人の処女の美女がおまえを愛してくれる」と洗脳して、どうにか自爆テロを遂行させていた。

また、独ソ戦でナチスドイツをソ連軍が数で圧倒できたのは、スターリンの指示で前線の自国兵に容赦なく機関銃を向けていたからだ。少しでも後退しようとしたら容赦なく後方から同胞に向けて弾丸を撃ち込まれるので、生きる為にみな必死に前に向かうしかなかった。狂った独裁者は海外には多いが、一般市民は仕方なしにといった感じである。

しかし日本の特攻は、非モテ男子の欲望の果てでもなければ、機関銃を向けられていたわけでもない。しかも負け確にも関わらず、時間稼ぎのためだけに特攻したのだ。命と引き換えるにはあまりに安い対価。それでも敵の侵攻を一歩でも遅らすために突撃していった。こんなヤバい精神性を持つのは日本人くらいだ。

沖縄戦では義烈空挺隊としてアメリカの飛行場に特攻、無数の砲撃を掻い潜った1機の日本兵が暴れ回って射殺されるまで破壊工作を行った。圧倒的な戦力差を誇るアメリカ軍もこれらのまったく命をかえりみない日本軍に対して震え上がった。

画像11

そんな日本に周辺国がビビり散らして反日になるのは当然と言えば当然だろう。まわりにビビられていることをもっと当のぼくたちは理解した方が良い。

日本の特殊性②周りの空気によって全体の動きが一気に変わる

中国は古来より中華思想を持っている。これは世界の中心は中国であるというものだが、同時に知的な中心でもあり、辺境は野蛮な者たちがいるとも考えられてきた。実際、多くの思想家や天才的な軍師を生み出している。だからこそ、中国の歴代王朝は様々な蛮族の侵入を防ぐために万里の長城を築き上げた。

画像4

なので中国が「あの野蛮な島国の人たち、こわいんですけど!」とビビるのは当然である。しかし、当のヤベー島国の人たち(日本人)が、「ぼくたち平和な国なので中国には恐怖しか感じません」と言っているのだ。

実際、周りを散々ボコしてきたのは日本である。加害者なのに今は被害者ぶって脅威を感じているというのはなんともこっけいだ。少なくとも外からはそう見えている。それをぼくらがまったく違和感なく暮らしているのも不思議ではないか。

その理由として、日本のもうひとつの特異性、つまり、ひとたび周りの空気が変わると、一斉に全体の動きが変わる国民性にあるのではないかと考える。

第二次世界大戦時、鬼畜米兵と言って自爆も辞さなかったのに、敗戦したら「アメリカさんようこそ、ギブミーチョコレート」と華麗な手のひら返し。1959年に広島を訪れた革命家のチェ・ゲバラは原爆資料館を見て「きみたち日本人は(アメリカに)腹が立たないのか」と憤って問いかけたという。

画像5

ゲバラでなくても、ほかの国から見たら日本のこの変わり身はあまりに不気味すぎる。

そしてこの変わり身は終戦の時だけではない。日本国民はあらゆることを一斉に同調する。この日本人の特殊性はコロナ禍でも大いに発揮された。

他国では基本的に国民の外出を警察などの暴力装置を使って無理やり従わせていた。それでもそれぞれの国民は自由を求めて大規模なデモを行って反抗した。対してぼくら日本人は特に法的な縛りがなくても、ただ国からの要請だけで、みなが自粛して本当に街からひとが消えた。

画像6

今でこそみんな慣れてしまってあまり効果はなくなったが、当初のあの自粛っぷりは他の国ではまずあり得ない。

それはまさにイワシの大群がそれまで泳いでた向きを一斉に変えるのと似ている。今はアメリカラブで骨抜きの平和ボケしているが、これがちょっと風向きが変わるだけでいきなりバチクソ軍国主義にもなりうる、というのは想像に難くない。さらにこの同調性の果てに、周りがみな命をかけているから、自分も命をかけようとする最初の特殊性にもつながっている気がする。

画像7

アメリカはそういう日本の特殊性をかなり研究したのだろう。日本を憲法という鎖で縛り付け専守防衛にした。

憲法9条で敵国の侵略は防げない。当然だ。憲法とは国家を縛る法律だからだ。しかしだからこそ、この危うい国民が一気にその時の空気に飲まれて一億火の玉にならないための楔となっている。侵略される危険より、風向きが変われば平和ボケから一転、自爆も辞さなくなる戦闘民族に変化する。そんな国民性を、もっとぼくたち日本人は自覚的になるべきなのだ。

なんの暴力装置もなく外出を一斉に自粛できること。賃金が安くても必要以上に丁寧な接客をするのが当たり前になってしまうこと。そういった全体の空気ですべての判断基準が決まってしまうぼくらの感覚が普通なのではない。世界から見たら日本が異常である、ということに。

親米反中のからくり

アメリカは多民族国家だ。内部をまとめあげるために常に仮想敵国を作り、国民の内なる批判をずっと外に向けさせてきた。

画像8

最初の仮想敵国はソ連、次は中東、今は中国。そして敗戦国の日本はただこれに倣っているにすぎない。しかも日本人のほとんどがこれまで述べてきた特殊性に自覚がない。だから一度その方向に倣った以上、アメリカの言うことは100%正しく、中国は100%怪しいとみなが思い込んでしまう。だから右翼ですら、自国民を虐殺したアメリカが大好きであり、中国憎しとなるのだ。

過去、アメリカは敵国の日本のことをこと細かに分析し今こうなっている。我々は自国のことすらよく分析せず、仮想敵国としている中国についても、巨大な独裁国家でなんか怖いと感情論だけで多くの人たちが語っているのだ。

中国と敵対するのであれ、仲良くするのであれ、もっと相手国を分析しなければ、アメリカのことをまったく知らずに鬼畜米兵と罵ってた過去の歴史からまったくなにも学んでいないことになる。そして学んで自分で考えないと、また扇動するのがうまい政治家やインフルエンサーによってあっという間に風向きを変えられてしまうだろう。ぼくらは過去の失敗を活かし、冷静に分析できるようにならなければいけない。

鄧小平という天才によって中国は世界第2位の経済大国へとのぼり詰めた

第二次世界大戦後、世界はアメリカを中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする共産主義陣営という冷戦を迎えた。

共産主義とは「世界の富を人類全員に平等に分け与える」という思想であり、そのためには共産主義で世界を埋め尽くさなければその目的は果たせない。だからこそ、資本主義経済の国はアメリカを中心として共産圏が広がることを牽制した。

しかし、ソ連が崩壊して残る共産圏の大国であった中国も、鄧小平によってネオ社会主義へと変わっていた。

鄧小平は「白猫であれ黒猫であれ、ネズミを捕るのが良い猫である」として、国を豊かにできる目的が達成できれば、手段(思想・信条・主義)はその時代や地域によって臨機応変に変えていく方針をとった。

画像9

つまり、社会主義と資本主義のいいとこどりをしたのだ。この天才的な発想と緻密な合理性によって中国は飛躍的な経済発展を迎え、2022年現在、世界第2位の経済大国となった。

人口が膨大で多民族国家の中国を単一民族の日本の尺度で考えてはいけない

今の中国は、56の民族を抱えた膨大な人口を有する多民族国家である。そして、ひとつの省がひとつの国家くらいの規模を誇っている。そういったさまざまな民族や省をまとめるため、中国はあらゆる政策をとった。

そのうちのひとつが、反日教育である。先にあげたアメリカ同様、仮想敵国を作ることで内部の結束を固めたのだ。しかし、今はそこまで反日が叫ばれることはない。

なぜなら日本は、中国にとって上位の貿易国だからだ。反日なんてやり続けて、日本との仲が悪くなることは国のトップとしては避けたい。先ほども述べた通り、中国は国益のためならば手段をコロコロ変える。ただ、反日で育ってしまった国民の目を引くために、茶番で尖閣諸島付近にちょっかいをかけているにすぎない。本気で戦争しても中国にとって何のメリットもないから、はなからそんな気はないのである。そう言える根拠はインドと中国の国境で頻繁に起きている殴りあいからも言える。

画像10

中印の国境では、それこそ兵士たちがガチでボコし合いをしてたまに死傷者が出ているのだ。それでも中国はインドと全面戦争なんかしない。これは国境が地続きの国同士ではよくあることだ。お互い全面戦争なんてしてもメリットはないから、武器は使わず殴り合いで手打ちとしているのだ。

しかし、日本は四方を海で囲まれているため、ちょっと茶々入れられただけでガチモードになってしまう。中国は死人が出ている国とでも深刻な問題になっていない。中国がガチならそれこそ島民が住んでいて、より台湾に突き出ている与那国島の方に来るはずだ。

中国はEUやアフリカ諸国に莫大な投資をしている。独裁国家といってもロシアとは根本が違う。もし、今回のロシアのような経済制裁を世界中から食らうようなことがあれば、中国の経済発展は崩壊する。鄧小平以降、なにより国の発展のために主義すら変えて合理性を追求してきた中国が、そんなリスクを負ってまで日本を侵攻するメリットは少なくともここ数年の間では見当たらない。今ですら56の民族と膨大な人口をまとめるのに必死なのだ。1億人を有する日本を統治しようとしたら、それこそ国が持たない。これはいま一度冷静に考えてみてほしいところだ。

しかし、最後に述べるが、仮にもし10000000000分の1の確率で中国が今回のロシアのように全面的に日本に侵攻したとしても、世界は今回のような経済制裁をしないとも付け加えておく。

黄色人種同士で争っている場合ではない

ロシアのウクライナ侵攻はなぜ世界の注目を浴びたのか。これまで全世界平和だったのならわかる。しかし、現実ではシリアやイエメンなどでこの世の地獄のような戦争が繰り広げられてきた。どうしてそういった戦争からは目を背けてきた先進諸国が一斉にウクライナには肩入れするのか。それはウクライナ国民の多くがキリスト教圏の白人国家だからだ。

CBS
「失礼ながら、ここウクライナはイラクやアフガニスタンのように何十年も紛争が続いている場所とは違います。比較的文明化し、ヨーロッパ的な都市で、今回のようなことが起こるとは予想もできないような場所です」
BBC
「青い目とブロンドヘアーのヨーロッパ人が殺されているのを見ると、非常に感情的になる」
アルジャジーラ英語版
「彼らは、大きな戦争状態にある中東地域から逃げ出そうとしている難民とは違います。北アフリカの地域から逃れようとする人々でもない。彼らは、あなたの隣に住んでいるヨーロッパの家族のように見えます」

このように白人が築き上げた先進国、西欧諸国の人々にとって自分ごとに感じだからこそ、NATOの軍事介入はないにせよ、ロシアの経済封鎖、ウクライナへの支援がこれほど集まったのだ。今戦争反対と声高に叫んでいる人たちも、シリアやイエメンに思いを馳せていたことがあっただろうか。元々、反戦運動をしていたひとではない限り、みなこの不都合な事実から目を背けていたのではないか。

別にそれを非難したいわけではない。ぼくも背けていたので同罪である。つまり、なにが言いたいかというと、いくら差別を無くそうと言っても無くなることはない、ということ。そしてここからが重要なことだが、たとえ中国が日本に侵攻するようなことがあっても、今回のような報復措置を欧米諸国がやってくれるわけではないということだ。中東の争いで何人死のうが世界の大半が関心を示さなかったように、東アジアでアジア人同士が揉めても関心を示さない。

だから!

日本人は同じ文化圏かつ黄色人種である中国と仲良くすべきだとぼくは思う。ここだけはアメリカに反旗を翻したい気持ちだ。観光客も貿易もお互いそれぞれが上位国でwin-winの関係。しかも中国と日本は単なる同じ文化圏というだけではない。

中国の歴代王朝でもおおきな存在である唐の長安の都はその後の王朝によって破壊されてしまった。しかし、長安を模して作られた都がここ日本に現存している。それが京都の街だ。京都に参上することを「上洛」というが、これは長安以前の中国王朝が首都としていた洛陽の造りも取り入れているからだ。中国の古都、長安や洛陽のことを知るためには日本の京都に来ないとわからないのである。

そして日常的に漢字を使う国は、漢民族の中国と台湾以外では、ここ日本だけなのだ。漢字という超カッケー文化を世界にアピールしていくのもいいだろう。とにかくいがみ合う必要はどこにもない。

ただ日本は敗戦国なのでアメリカに逆らうことはできない。だからアメリカに表向きは従いつつ、ちゃっかり中国と仲良くしておくという二枚舌外交で乗り切るべきだと考える。面従腹背だ。核武装なんてして周りにビビられる必要なんかどこにもないし、それでおれつえー的な雰囲気が蔓延したら、また周辺国をボコす国になってしまうだろう。だから、それは国益に反するとぼくは結論づける。

ぼくが鄧小平を天才と取り上げたのも、彼は資本主義が良いとも、共産主義が良いとも決めずに、その都度考え抜いてその時に最適なものを取るという柔軟性が成功しているからだ。87年の時点で、彼はやがて国民のレベルが上がってきたら民主主義を取り入れてもいいのではないかとも言っているのだ。独裁国家の主席がそういうことを口にすること自体すごいことだと思う。

だから日本人も、今回のロシアのウクライナ侵攻を受けて、「核共有」か「戦争反対」のどちらかが正しいと思考停止で盲信するのではなく、常に矛盾することを抱えながらも、ひとりひとりが自分ごととして考えて生きていかなければ、この先、生き残れないと思っている。

この記事が参加している募集

防災いまできること

もし面白く感じたのなら100円でもサポートしていただけると、今後の励みになります!