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【Interview】好きなことを仕事にしていくには?文具プランナー・福島槙子さんにお話を伺った

「好きなことで生きていく」 

これは元々YouTubeのトップクリエイターたちが出演するCMで使われたキャッチコピーだった。しかし、最近ではネットで影響力ある人たちも次々とそういった発信をしていくようになり、多くの人たち、特に若い世代にとっては目標とすべき生き方として広く支持されている。ただ、「そんな生き方ができるのは特別なひとだけなんじゃないか?」といった疑問や、「そもそも自分の好きなことってなんだろう?」と考えて立ち止まってしまうひとも少なくない。

そこで今回、ぼくの友人でもあり、文房具が大好きでそれを仕事にしてしまった文具プランナー・福島槙子さんに、好きなことを仕事にすることってどんな感じなのか、またどうやってそれを仕事にしていったのかなどを聞いてみた。

文具プランナーという肩書は、ウェディングプランナーからイメージして自分でつけた

――福島さんは今はどういったお仕事をされているんですか?

簡単に言うと、「文房具の魅力を世の中のひとに伝えたりする仕事」だと思っています。

――色々な肩書を持っていますよね。

ひとつは文具プランナーという肩書で、個人の活動をする時に使っています。これはウェディングプランナーさんからイメージしてつけたんです。ウェディングプランナーさんって結婚するカップルの相談にのって、どういった結婚式にしたいかとかを一緒に考えて企画したり、作り上げていくひとじゃないですか。なので私も、文房具を使うひとにとってそういう存在でありたいなって思ってつけた名前なんですよ。

――じゃあ、文具プランナーという職業は元々はなくて、福島さんがオンリーワンと!

そうそうそう(笑)。オンリーワンです。

――それは「文具を作るひと」に対してプランニングするのではなく、「文具を使うひと」に対して「こんな感じでどうですか?」というのを提案する感じですか?

どちらかというとそっちですね。もちろん活動の延長線上には作るとかもありますが、全体的にはやっぱり文具を使うひとへのプランニングが多いです。なので、メディアに出て文房具を紹介したり、「この文房具はこんなひとにおすすめですよ」とかの記事を書いたりとかですね。

「毎日、文房具。」の副編集長として、「毎日」使う文房具のことを掲載

――文具プランナー以外の肩書としては?

もうひとつは「毎日、文房具。」というウェブマガジンの副編集長をやっています。

――そちらはどういった仕事になるんですか?

こちらはそもそも文具のウェブマガジンを立ち上げたという点がまず大きいんです。最初、編集長とふたりで立ち上げたんですが、それまでは文房具に関するウェブマガジンがあまりなかったんですよ。文具に言及しているものでも、ブロガーさんのブログだったりとか、あとはもっと専門的なニュースサイトだったり。業界ニュースみたいなものはあっても、一般の文具を使うひとに向けてのウェブマガジンってあまりなかったので、そういった媒体を作り上げたのは大きかったです。今はライターさんが何名かいるので、ライターさんが書いてくれたものを編集したり、自分でも記事を書いたりしています。あとはウェブサイトを自分たちでWordPressを使って作っているので、それのシステムとかをやっていますね。

――結構大変そうですね。

はい、大変です(笑)。でも最初は趣味で始めたから、編集長も私もお互いに本業の負担にならないようにしようと決めていました。

――立ち上げ当時は編集長も福島さんもほかの仕事をされていたと?

編集長は普段は会社員をやっています。私も立ち上げた時はライターをやっていたんです。ライターが本業で文具の仕事はその時は一切なかったです。

――それはいつ頃ですか?

2014年の夏ぐらいかな。

――ではそれ以来、「毎日、文房具。」というくらいだから毎日更新されているんですか?

いや、それは違います(笑)。その「毎日」は毎日更新するということではなくて、「毎日」使う文房具のことを載せているサイトってことです。よく言われるんですけどね(笑)。毎日使う文房具のことを、ま、週一くらいで。当初はもっと更新していたんですけど、今は頻度が少なくなりました。

ウェブマガジンは基本的にお金が出ていくものと考えた方がいい

――そのふたつがメインと?

そうです。ほかは肩書としてはないですね。そのふたつが軸です。

――「毎日、文房具。」のマネタイズってどういうふうにしているんですか?

ひとつは記事広告ですね。この文具を紹介してくれたらいくらみたいな。でもそれはあまりやっていなくて。正直なところ、最初からウェブマガジンでマネタイズできるとは私たちも思っていないわけですよ。ウェブメディアをやっているひとならわかるとは思うんですが、ウェブマガジンなんてお金がかかるだけで、基本的にマネタイズできるようなものじゃないんです。だから「毎日、文房具。」も、お金云々ではなく大きくしていくことを目標にやってきました。おかげさまで今では「毎日、文房具。」は文具業界でとても有名になりました。だから、その編集長、副編集長というだけで「すごい!」って思われるし、専門家としてのブランディングも作れたと思います。「毎日、文房具。」プレゼンツの売り場とか、そういう企画物の時にお金をいただけるようにもなりました。

福島さんが文房具を仕事にするまでの流れ

――そもそも文房具を仕事にするきっかけになったのはなんだったんですか?

元々は全然業界が違う、アニメの声優さんとかにインタビューするようなライターをやっていました。それから一回就職して編集スキルを身につけて、またフリーランスになったあとは、アニメ以外にも色々とやっていました。訪日外国人向けのウェブマガジン「MATCHA」の編集者とか、あとは本の編集なども請け負って稼いでました。

――本の編集は稼げるものなんですか?

本の編集は出版社にもよりますが、実はすごくお金が貰えるんです。一冊丸々編集するとなると80万円とか。それを1ヶ月半とかでやるんです。しかもその時私はほかの仕事もやっていたので。

――それは儲かりますね。

でしょう(笑)。だからその時は稼いではいましたが、とても多忙だったんです。そしてずっとやっていても、元々ライターがやりたかったわけでもない経緯もあって、楽しくなかったんですよ。

――編集となるとライティングだけではないのでは?

そうそう。デザイン回しとかラフ書いたりとか。でもライティングもしたりしてたんです。ライティングも含めて一冊請け負っていたので。確かに図の方が多かったり、長い文章ではなくて、要所要所をまとめるというか、構成するみたいな仕事の方が大きかったけど、それでもなんかやりたいことじゃないなということに気付き始めまして。「自分は何がやりたかったんだっけ?」「何が好きなんだろう」と思った時に、文房具が昔から好きだったなと。じゃあ、まずは趣味としてその文房具のことを発信する活動をやろうと思い、文具業界のことを調べ始め、有名なひとのTwitterをフォローし、自分も発信を始めて、「毎日、文房具。」を立ち上げ、文具プランナーと名乗り……というところからなんです。

文具業界のひとが集まる場所には積極的に顔を出した

――自分でTwitterなどで発信して自分で文具プランナーと名乗っていたら、メディアが取り上げてくれたと。

そうです。まさにそんな感じ。

――自分から営業したわけではない?

営業はしてないんですけど、ただ、文具の集まりとかは結構あるんですよ。朝活とか文具祭りという定期的にやる文具の集会みたいな。そういったものには積極的に顔を出すようにしていました。そうすると文具系の編集者とかいたりするわけですよ。ま、一種の営業と言えるかもしれません。そういうところに顔を出すことによってひととの繋がりが生まれた感じです。文具レディというユニット活動もしたりしていました。

文具ソムリエールの菅未里さんとの「文具レディ」としての活動。そして地上波デビュー

――文具レディとはなんでしょう?(笑)

文具レディとは(笑)、文具ソムリエールの菅未里ちゃんという女の子とふたりで組んだユニットです。菅未里ちゃんは今は超有名人なんですけど、当時はまだそんなに知られていなくて、私よりも1年くらい前から文具ソムリエールをやっていたんです。それも彼女が自分でつけた肩書ですね。その菅未里ちゃんが「ふたりで一緒になにかやろうよ」って言ってくれたんです。相方が文具ソムリエールなら私も何かつけなきゃと。それで文具プランナーと。文具ソムリエールと文具プランナーのふたりがユニットを組んで文具レディとなりました。

――文具レディを結成してからはどんな活動を?

文具レディを結成したら、女の子ふたりってやっぱり華やかだから、文具の雑誌とかも取り上げたがってくださって。

――なるほど。文具業界の集まりに顔を出しているから、知ってもらえるスピードも早いんですね。

そうそうそう。「文具レディとか作ったんですよ」とか言ったら「じゃ今度出てよ」みたいな。あとは東急ハンズでトークイベントをやったり。そのハンズでの仕事も、やっぱりそういうところで知り合ったひとからでした。全国ツアーみたいな感じで各地のハンズを周りました。ただ、まだ誰も知らない時にやっていたので、あれはちょっと辛かったかな(笑)。岡山とかでもイベントをやったんですけど、イオンの中のハンズの店頭でやっていたから通るひとはいっぱいいるけど、「何かしらあれ?」みたいな状態なのね。でもこないだ、私、岡山で年末にイベントやったんですよ。そしたらあの時に私を知ってファンになってくれたという男性が3年ぶりにまた来てくれたんです。すごい嬉しかった!「あの時たまたま通りかかってなんとか」とか言ってくださって。そんなことも最近ありました。続けていくといいことあるなって思いましたね。そうしていくうちに、テレビ局のひとから連絡が来て、TBSテレビの「王様のブランチ」などにも呼ばれたりして、地上波デビューしました。

培った知名度と信頼を基に専門家としてコラムの執筆やワークショップを開催

――今、メインの仕事はメディアに出ることですか?

とは言えないかもしれないです。確かにラジオとか雑誌とかに出るというのはひとつの柱なんですけど、あとはこれまで培った知名度があるじゃないですか。信頼も出来たわけじゃないですか。なので専門家として色々な媒体にコラムを書いたりとか連載をしたりとかする、というのもひとつあります。読売オンラインといった硬めのところにも書きますし、問屋さんのマガジンとか、そういう業界の専門誌みたいなものにも書いたり。それと最近多いのはトークイベントとかワークショップですね。

――文具のワークショップってどんなものがあるのでしょう?

それが色々とあるんです。よくやるのは「万年筆に触れてみよう」みたいなもの。万年筆で手紙を書いてみるとか、塗り絵をしてみるとか。そういうのは親子向けにもできるし、大人向けにもできるし。私は文具に触れるひとたちの裾野を広げていきたいんですよ。そういうものが東急ハンズやTUTAYAなど、文具を売っているところで求められているんです。

「好きなことを仕事にしていこう」と思っているひとへ

――最後に好きなことで仕事をしていこうと思っているひとにアドバイスをいただけたら。

まず言えることは、本当に好きなことじゃないと辛いと思います。私は最初は仕事にしようと思ってやっていなかったけど、ある時期から「これに全てを捧げて仕事にしよう」と思ったんです。そうすると、本当に寝るか文具のことを考えているか食べるかみたいな生活なんです。趣味も仕事も一緒だから。なのでずーっと文房具のことを考えていて、「今日も一日頑張ったな、日記を書こう」っていうのも、例えば仕事なんです。仕事と言えば仕事だし、趣味と言えば趣味みたいな。ずーっとそうだから、それが辛くならないのは本当に自分が好きなことだからだろうなと。

あとは誰でも今発信できる時代だから、発信をしなきゃいけないというのと、その発信を続けるということ。少なくとも3年ぐらいは目が出なくても続けなきゃいけないと思います。今、私4年目で今年で5周年なんです。文具の業界でも、ちょっと有名になりそうな子とかがたまに出てきたりするんですが、やっぱり続かないんですよ。発信が続かないんです。なので続けなければ駄目だと思います。コンスタントにね。継続が大事です。あとは、業界のひとたちと仲良くしておくのは重要。業界の色々なところに顔を出しておくフットワークの軽さも大切かなと思います。

――ありがとうございました!

福島槙子(ふくしままきこ)

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文具プランナー/「毎日、文房具。」副編集長/著書『まいにち ねこ文具』共著『もし文豪たちが現代の文房具を試しに使ってみたら』発売中/ #himekuri 文房具柄&ねこ柄、himekuri note監修/元ライター・編集者 




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ねりな/練無
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