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夜中の
2020年7月30日 04:05
空洞のふちをなぞる指は水色少年と青年はピアノの前で瞬きする深い呼吸を試してみる少年の白い襟、青年の黒い釦「夢にあなたが出てきました。馬車に乗っていて、花を抱いていました。ベルベットのような偽物のようなすべすべの花びらのうえを一滴の雫が滑って、」「昨日のテレビの話をしよう。君によく似た豹が出ていた。獲物を捕え、口に血を滴らせていた。……ねぇ、私たちは同じ話ばかりしているね」伏せられた
2021年11月28日 07:16
水のない花瓶にきみを生ける大振りな滅紫の薔薇に挟まれてきみは俯いてみせる愛してるというより好きだったたぶん恋だったきみの少年時代から抽出した苦い琥珀糖を齧りつづけて口は汚れた早く朽ちてくれと祈りながら冷たい水をそそぐきみは溺れ最期をぼくにくれる水が溢れ出し夜を編み込んだ敷布は濡れるねえきみはぼくのことどう思っていた?ちゃんと恨んでくれていた?最初にプ
2021年12月2日 06:50
夜のオルガンが鳴っている蕎麦をすする青年Sと薄桃色の薔薇を握り潰す青年H猥雑な喫茶のバックヤード、深夜ふたりはよく似ていたが似かよった部分がとても深かったので誰も共通項を当てられなかった青年Sは鬼の話をする青年Hは大袈裟にわらうおそらくこんな夜はもう来ないだろうと予感するSたぶんまたこうやってわらうだろうと予言するHプレイリストが明るい調子の暗い歌を流す甘った
2021年12月17日 08:01
はじめに。ちいさい海があって、パラソルがあって、きみがいて、ソーダ水があった。もう冬なのできみはマフラーに埋もれるように巻かれていて。小屋で火を焚こうと提案すると、はじめての名案だというように目を輝かせるきみ。サイコロ状にカットした野菜がごろごろと入ったスープをよそう。パンをちぎってひたして食べる。置きっぱなしのパラソルに冷たい雨があたるおと。思えば今年も夏は短かったし、冬は永遠のように