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『キャクストン私設図書館』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本の紹介をします。


ジョン・コナリー著 『キャクストン私設図書館』 田内志文訳 (東京創元社 、2021)


本書の帯に、書いてある文章。

ハムレット、ホームズ、ドラキュラ。
登場人物が実体化して
図書館に住んでいたら・・・・・・?

読む前から面白い決定じゃないか!!
しかし、懸念事項もあり。
登場人物が物語の実体化ということは、それぞれの物語を深く読み込んでいないと面白さが分からないか?問題。
もちろん、話がわかっていた方がさらに面白いのだと思う。
読んでみたら、それほど大きな支障はなかった。

この本を、とにかく私はおすすめしたい。
本を読む人。
本が好きな人、本に関わる仕事などをしている人。
「本とはなんだろう?」など、考えたことがある人。
「こんなキャラクターが実際にいたら?」など、考えたことがある人。
ミステリ、ホラー、世界がひっくり返されるような話が好きな人。

面白さと楽しさしかないのが、本書。
気付いたら読み終わってるから、本当に。


内容

本書は、短編(中編)4つの物語が書かれている。
大きく分けると、この4作だ。

キャクストン私設図書館
虚な王(『失われた本』の世界から)
裂かれた地図書ーー五つの断片
ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事


ざっくりあらすじ

キャクストン私設図書館

役所で勤めていた30代の男が、ある日不思議な体験をする。
目の前の不思議な事件を防げなかった彼は、警察に連絡するが、被害の形跡が何も残っていない。
しばらく様子を伺っていると、被害者であった人は再度現れる。
信じられない光景に、彼はその被害者を追ってみる。
たどり着いた先は、街の誰も知らないと言う図書館。
ある日、図書館内に入ることに成功した彼は司書を通して、あの被害者と出会う。
被害者は、レフ・トルストイの『アンナ・カレーニナ』のアンナであった。
司書によれば、この図書館内には本に出てくる登場人物が実在する。

この図書館での司書の仕事。
そして、個人的に思う物語への想いが書かれる。


虚な王(『失われた本』の世界から)

ネタバレしか思い浮かばないので、割愛します。
物語の最後に書かれていることこそ、私が心打たれた言葉だから。
登場人物に関わることよりも、最後の文章は人の心理を突いていると思った。

裂かれた地図書ーー五つの断片

この物語が最もホラー要素、ミステリなど満載であり、著者ジョン・コナリーの魅力が分かりやすく出ている本だと思う。

物語のあらすじを書くのは、こちらも割愛します。
自分で追いかけていく楽しさが、欠けてしまうと思うから。

本とは何だろう?と、私は考えたことがある。
この物語に、コナリーの考えが書かれているのだと思う。
これも、楽しい要素の1つ。

この物語は正直、1度読んだだけでは謎が残る。
自分の頭の中にある「当たり前」が引っかき回されるような、ひっくり返されるような、あの独特の不快感。
それでいて、楽しい物語。
この物語の中がカオスだが、それを読んでいるうちに自分の頭の中にも、混沌としたモヤっとしたものが湧き上がる。


ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事

ホームズとワトスンが、私設図書館でも、外でも活躍。
本書に出てくる1番最初の私設図書館の物語は、実在化した物語の登場人物と人だ。
対して、ホームズの活躍では、その名の通りホームズが活躍する。
さらに言うならコナン・ドイル視点が多い。
また、そこに著者であるコナリーの意見も書かれる。
シャーロック・ホームズの終わり方や、物語への不満だ。
(少しだけモリアーティも出てくる)

この物語の読者は、メタ認知している世界を、さらに客観的に見るような気持ちだ。
読者は、どこから見ていると表現したら良いのか私には分からない。
これを読むだけでも、シャーロック・ホームズがどれだけ人気だったのか、人気であるのかが分かる。

著者の苦しみは、著者にしか分からない。
当たり前のことなのに、思いが強いと忘れてしまうこともあるようだ。


感想

どの話も、間違いなく面白かった。
物語の登場人物が実在化するなんて、そんなことを考えたことがなかった。
ジョン・コナリーの書く物語には、本当に独自の世界観があって、他にあまり似たような作品はないように思われる。
残念なことには、日本語版がほとんど出版されていないことだ。

ミステリ、ホラー、日本語版が少ない。
これは、私が1番好きなR・L・スタイン先生の書く本と同じ現象だ。
まったく嬉しくない共通点である。
めちゃくちゃ面白いのに、なぜなんだーー!!!!

ところで最近、不思議なんですが、イギリスってマイル表示なんですか?
ヨーロッパは、メートル法なのかと思い込んでいました。
シャーロック・ホームズにしても、本書にしてもマイルで記載されているので、地味に驚いた。

そして、なぜ知っているのかと、自分自身に驚いたのが『アンナ・カレーニナ』。
初っ端から色々と衝撃であった。


とにかく、めちゃくちゃおすすめしたい本!!




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