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流し書き5(ローマで食べたパスタについて)

フランスは先週まで1週間ほどバカンスだったので、学校の友達とイタリア旅行をしてきた。ミラノ→ボローニャ→ヴェネツィア→ローマと北部を廻るルートで、街並み・歴史・イタリア万年筆(僕はイタリアのペンに目がない。これについてはまた別の回で)・ナイトライフと色々吸収して帰ってくることが出来た訳だけれど、今日はローマで食べたパスタについて書く。

そのパスタの名前は「リガトーニ・アル・グリッチャ」。ローマに住んでいるイタリア人の子と一緒にいったHostaria Farneseというお店でいただいた。リガトーニというのは筒状のパスタである。ペンネをもっと太くして、切り方を斜めではなく垂直にしたものをイメージしてほしい。

Rigatoni
(https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.lacucinaitaliana.com%2Fglossary%2Frigatoni-pasta&psig=AOvVaw1nnfV3cU8KkT0QJyY0weck&ust=1678289049445000&source=images&cd=vfe&ved=0CBAQjRxqFwoTCPjD7oaQyv0CFQAAAAAdAAAAABAE)

アルは繋ぎで特に意味はない。そしてグリッチャはギリシア風の、という意味で理解している。クアンチャーレとペコリーノの塩味、胡椒とオリーブオイルの香りが混ざって、シンプルながらとても美味しい一皿だった。ニンニクの余計な香りもなく、リガトーニはバキバキにかたく茹でられていて、そのおかげで咀嚼回数が増えるのでソースの強い塩味がちょうどよく口の中で馴染む。オリーブオイルとグアンチャーレとミネラル豊富なイタリアの硬水が乳化したソースは、日本料理のお椀のお出汁かのような透き通った美味しさだった。

ローマ「Hostaria Farnese」のRigatoni alla Gricia

テーブルを囲んだ友人達で議論を重ねた末オーダーした白のハウスワインは少し甘めで軽いながら硬さもあり、このパスタと悪くない組み合わせだったと思う。まあとにかく、懐かしい友達とお喋りしながらいただいたローマのパスタはとてもおいしかった。店内がこじんまりとした雰囲気なこともあり、リラックスして話すことが出来た。

思えば日本にいる時の僕の食事は真剣勝負ばかりだった。秒単位で調理された皿が運ばれてくると、写真を撮る間も惜しんで口に含み、ワインとの組み合わせを確認し、的確な感想とシェフとの「素敵な」会話をできるように努めたものだった。
このパスタはそれを要請しない。リガトーニはアルデンテを超えるバキバキで、伸びる心配もなく僕にゆっくり一つ一つ食べる間を与えてくれる。数は多いが、一つ一つチーズのかかっている量やグアンチャーレの絡みつき具合が違うので一口一口で味にユレが生じて、楽しい。
すると僕の注意はやはり食卓を共にする人との楽しい会話により向けられるのだ。フォークでパスタを刺して口に運ぶ。それ以外の全神経を楽しみに向ける。箸で繊細に食べる食文化、あるいはスープがはねぬよう気を遣ってラーメンやうどんを啜る僕たちにはなかなか出来ない体験だなと思った。

最後に調べておきたいのは、ギリシャ風という名前の由来である。

ローマの羊飼いは夏になると、十分な牧草を求めてグリシャノ周辺の高原へ移動していました。
その場所で羊飼いはペコリーノチーズを作り、村人は豚の加工食品(グアンチャーレ)を作っていたのです。
羊飼いと村人はペコリーノチーズとグアンチャーレを物々交換していました。
その結果誕生した料理がこのグリーチャです。

https://worldcuisinehr.com/pastaallagricia/

ローマの羊飼いは、地元を離れてグリシャノの高原で故郷を思いながらこのパスタを食べたのだろうか。僕も、日本に戻ったらこの料理をして、イタリアの友人達とあの夕食に想いを馳せながらいただくとしよう…

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