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イーストボーイのスクールベストを手に入れていた方の人生

メルカリで子どものスクールベストを買った。

ほとんど使用感のない綿100%の良質なニットが1200円足らずとは、以前から恩恵を受けていたけれど、今回はなんとも思い知らされるものがあった。

というのは、自分自身にとってイーストボーイのスクールベストは、高校生の頃に目の前で見送った、スクールカーストを登る切符だったからだ。

5分日記には危険な回想ネタだから、誤解を生みかねないか心配ながら、時間をかせぐためにあえて率直に書く。

わたしが高校生だった1990年代、ポロかイーストボーイのベストおよびセーターは第二の制服だった。

忘れもしない、高校デビューをやりとげかけた高一の春、クラスの中心グループのメンバーと一緒に小田急百貨店(ここはうろ覚え)に行った。

イーストボーイの売り場に入り、ベストを購入する仲間たち。

私もと手にとって、値札を取って驚愕。確か7000円〜8000円の価格帯だったと思う。

小遣い5000円、まだバイトもしていない。服はヨーカ堂かハニーズで1900円のものを調達するのが精一杯だった自分には今の言葉で言うならジゲチの価格。

こんな高価な服がこの世に存在するのかと慄き、一人手ぶらで帰ったのだった。

第二の制服を手に入れ損ねたわたしは、川の流れのようにクラスの中心部から自然と遠ざかり、いつもの位置に帰っていった。

部活も軽音部に入部すると入学前は意気込んでいたのに、写真部に入部。

そして現在に至る。

そんな、未来の職業すら変えていたかもしれない、人生の分岐点だったイーストボーイのスクールベスト。

当時はブランドじゃないと言うことで(わたしの学校だけかもしれないが)肩身が狭かったハニーズの服はむしろみんなオシャレに着こなしてるし、本人にとってもブランドであるかどうかなんて、どうでもいいようである。

わたし自身も、当時はくやしさから一年目にコートなしで過ごしてためた金で、2年目に3万以上のするHAKKAのコートを買ってみたり、セーターも敢えて誰も着ていない茶色を選んだり、個性派ぶってイキってたけど、今やハッカと聞いたら畑に茂っている草が思い浮かぶ生活ですよ。

自分自身と社会の変化、いろんなことを思い出させてくれる憧れのベスト。

袖を通したら、自分が選べなかった方の人生を感じることができるだろうか?

娘にお願いして一回くらい制服と合わせて試着させてもらえないか、ちょっとだけうずうずしている。



自分の書く文章をきっかけに、あらゆる物や事と交換できる道具が動くのって、なんでこんなに感動するのだろう。その数字より、そのこと自体に、心が震えます。