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だから、大人にはサンタが来ない。

葛藤には3つの種類がある、と心理学で習ったことがある。

ひとつは、接近ー接近型。
ほぼ同じくらい魅力があって、どちらとも決めかねる状態を指す。

次が、回避ー回避型。
どちらも嫌なのに、どちらからも容易には逃げられない状態のこと。数学と英語のどちらの勉強もしたくなくて、掃除をしてしまうような、「逃避行動」が起きがち。

最後が、接近ー回避型。
ひとつのものに対して、好きな面と嫌いな面がどちらもあって決断ができない状態。これだけが、ひとつの対象に対して、起きる葛藤。

この3つがレヴィンによって分類されたんだけど、この後、ラザルスによって、「二重接近ー回避型」というものが提唱され、これは、最後の葛藤がの対象がふたつになったバージョン。

たとえば、どちらもいい面と悪い面があるので選べない、というケースだ。

さて、わたしが日々感じているってこのどれが多いんだろう?

と思い返したのは、最近すっっごいひさしぶりに、「接近ー接近型」を味わったからだ。

あれもすてきだし、これもすてき。どっちもほしい!決められない!!

大好きな作家さんのアクセサリーを手に取って選びながら、「絶対似合う万能選手」と「これひとつでドレスアップできる逸品」で完全に接近ー接近の沼にはまりこんだわたしは、ご本人を前に至福テンションMAX。

いやもう、これ、同じ葛藤の仲間って言っていいの!?

その甘い感情の狂おしさよ。じわじわ広がるその感覚は、味わい深いったらなくて、しばしその贅沢にうっとり浸ってしまった。

そしてその感覚を反芻しながら、頭に蘇ってきたのはある若き日の思い出。

「友達以上恋人未満」の、あの甘酸っぱさである。

お互いきっと悪からず思っている。一歩踏み出して、この関係を打破したい。でも、今の友達のままの関係も壊したくない…!

そうか、これ、当時は気づかなかったけど、「接近ー接近型」の葛藤だったのか…!!

お互いの好意と遠慮が滲み出る瞬間にいちいちドキドキする、触れたら割れてしまうシャボン玉のような、人と人が結びつく手前の限られた時間だけ経験できる、あの麗しき関係性。

そんな思い出を重ねながら、私の口から出た言葉は、

「どっちもください…!!」

いやあ、最高。欲望に屈服する快感。

うん、長女の言う通り、大人はズルいのです。


自分の書く文章をきっかけに、あらゆる物や事と交換できる道具が動くのって、なんでこんなに感動するのだろう。その数字より、そのこと自体に、心が震えます。