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しごと⑤多重債務者になってしまった理由

複数社に借入している債務者は多重債務者とよばれます。
なぜ複数社に借りてしまうのか。これにはある理由があります。

住宅ローン、マイカーローン、教育ローン、事業資金などお金を借りること自体は良くあることでしょう。今まで一度もお金を借りずに人生を歩んできた人は稀でしょう。ただ、住宅ローンやマイカーローンを複数社から借りる人はいないのではないでしょうか。ではなぜ、多重債務者が生まれるのか。

それは、消費者金融やクレジットでは個人に貸せるお金の限度額が小さいからです。1個人に対する融資は50万円程度を限度とする会社がほとんどでした。50万円を借りると、毎月の返済金額は2万円前後になります。2万円なら返済できそうと思うかもしれませんが、金利が高く、返済額のうち元金に充当される金額は少ないため、残高がなかなか減りません。そして、50万円まで借りてしまうと追加の借り入れがほぼできなくなります。そういった債務者は、つぎに他社に借入れを申込します。そうして次々と借入れをして気づいた時には複数社に借入残高がある状態になってしまうのです。

多重債務者の実態

最初から限度額の50万円を借りる人は多くなかったでしょう。
最初は1社で10万円だけ。支払額は毎月3,000円程度です。それから返済していくと「融資枠が増えました」と連絡が来ます。そうして30万→50万と増えていくわけです。

私のいたN社は大手ではなかったので知名度は高くなかったので、最初の1社目になることはほぼ無く、武富士、アイフル、アコム、プロミスといった大手で限度額一杯まで借りて、追加融資が受けられない人の申込みが多かったです。
感覚的には、4社~5社で50万円づつ、200万円~250万円前後の借り入れをしている人が多く、そういった人がまとめ融資のターゲットになります。
毎月の支払いが苦しく、返済額を用意するために借入れしてしまう人に対して、「大口に一本でまとめると支払金額が下がりますよ。」というのが営業提案の流れでした。

「そんなに借りちゃう人いるの?」と疑問を持つ方がいるかもしれませんが、毎日5人~10人位はそのような状態の人が借入れ申込みをしていたと思います。

借入れする理由は人それぞれですが、遊ぶため(レジャー、旅行、風俗)、ギャンブル(競馬、パチンコ、スロット)も多いですし、借金返済のために借りる人も多くいましたし、家族の病気や収入変動などで生活費として必要な人も多かったと思います。

まとめ融資の問題点

複数社の支払いを大口融資でまとめて支払金額を下げることができるのは良い商品のように思えますが、いろいろな問題がありました。
①連帯保証人
 個人の信用に対して融資する金額はどんな大企業に勤務する人でも100万円が限度でした。どんな人にも返さない、返せないリスクはあるので、ほぼすべての人は50万円までが限度額になっていました。
まとめ融資は複数社の借り入れを一本化する200万~300万の融資ですから、個人信用の限度額である50万以上の金額を貸すために連帯保証人を必要としていました。
連帯保証人と保証人は重さが全く違います。
連帯保証人は、債務者と同じ義務を負うわけです。つまり、債務者が支払わないあるいは支払えない場合、債務者の代わりに支払う義務を負うのです。このとき、債務者を飛び越して請求できる点が保証人を大きく違うところです。
この連帯保証人が債務者の債務の支払い義務を同等に負うという点が多くのトラブルを生む点でありました。

②他社返済しない
他社の借り入れ返済のために借りたお金を返済に充てないというケースもありました。基本的に融資は対面で契約書を交わして、現金手渡しで行っていました。そしてその現金を持って、他社の返済に同行して全額返済してもらうのです。
ただ、その日のうちに返済しきれない場合があり、あとで返済をお願いすることもありました。こういったケースでは一定の割合で他社返済をせず使ってしまう人もいたのです。当然、他社の支払いが残った状態になるので、支払額が減らず、すぐに首が回らない状態になります。

今まで金融機関からお金を借りる状況になったことがなかった私にとっては、自分が扱っている高金利の融資がそれほど必要とされているとは思っていなかったので、少なからずショックを受けたのでした。

とは言いつつも、徐々に契約も取れるようになり仕事として慣れていったのでした。そして、入社も三か月が過ぎようとする時期には債権回収の現場に同行することになったのです。

つづく





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