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#10 デザイナーが実践する、基本的な創造の型:「分析と統合」その2

ストアカの講座や美大の授業で、「創造やデザインの最も基本的な型」について教えている我がデザイナー夫。自宅で行われる講義を聞き続けた【デザイナーの妻】が、実際の業務の中でデザイナー夫が実践しているその型を観察したレポートの第2弾:デザイン業務編です👀

これまでは、デザイナー夫の作業姿を見たり、話を聞いたりすると「また仕事している」とか「今やっているプロジェクトの話だな」くらいにしか思わなかったものですが、最近は「あ…もしやこれは分析・統合のプロセス真っ只中ではないか👀」と気付くようになりました。(という気がしています)デザイン講義を20回以上聞き続けた結果、デザイナー夫の観察もより楽しく、より図々しくなってまいりました。ではレポートの第2弾にお付き合いください。

基本的な創造の型:「分析と統合」とは?おさらい

それは何かをデザインする時に、対象について「自分は知っている」と思わず、まず徹底的に調査し、分析(要素分解)すること。分解した要素を構成し直すこと。さらに構成した(作ってみた)ものを分析(分解)し、再構成するとといった繰り返しを経てデザインが良くなってゆく、という創造のパターン。

このパターンを身につける過程で経験するポイントについて、もう一つ私が理解した点を付け加えるとしたら、「アンラーニング」という学習です。これは「徹底的な調査→要素分解」のプロセスを繰り返すうちに、知っていると思っていたことについて「自分はこんなに知らなかったんだ!」という発見に至ることがありますが、その学習のことです。用語集でアンラーニングは「学習棄却」「学びほぐし」などの言葉で説明されています。

徹底的な調査や、作ったものを分析し、構成し直すのはエネルギーのいる作業ですが、その作業によって得た発見によっては、時には自分の見方がひっくり返ってしまうくらい違う角度で対象が見えたりします。その1でも書いたように、それによって一旦わからなくなり、先に進むのが怖くなってしまうこともあります。それでもその「不確実性」に向き合い、前に進むことができれば、それは目覚ましく成長する機会になるということです。

その1では、最も基本的な創造の型である「分析+統合」について、①ストアカの授業、②美大の学生への指導において、デザイナー夫が実践している点をまとめました。今回は、グラフィックデザイナーとしての実務において、その「分析+統合」というパターンをデザイナー夫がどのように実践しているか、普段の業務の様子を書きたいと思います。

デザイナー夫が実践する「分析+統合」:③ロゴのデザイン業務編 

デザイナー夫のロゴのデザイン業務は、お仕事の依頼をいただいて少しメール等でやりとりがあった後、キックオフミーティングでオフィシャルスタートとなります。キックオフミーティングで、チームの方々と顔を合わせて自己紹介し、チームの方からプロジェクトの詳細を聞きます。それまでに、バックグラウンドを調べたり、テーマについて自分で調査することもあるようですが、最初のミーティングをもって本格スタートになります。

キックオフミーティングから最初のプレゼンまでは、通常3週間ほどの期間があります。別のプロジェクトと同時進行だったり、大学の授業のスケジュールが詰まっている場合は、もう少し期間が開くこともあります。その間、ロゴを作ることになるサービスについて徹底的に調査します。すでに知っているクライアントの新しいサービスの立ち上げの場合も、これまで全く関わることのなかった分野でサービスを提供している新しいクライアントとのお仕事でも、みな同じようにリサーチ作業に時間を割きます。以前に読んだ本をもう一度読んだり、新しくその分野の本を買ったり、インターネットで調べたり、膨大な量の情報を吸収している模様です。

膨大な量のリサーチの後、デザイナー夫はひたすら手を動かしてスケッチしています。方眼紙ノートに向かい、愛用の黒ペン(ユニボール シグノ 極細 0.38mm)で描く、描く、描く。外に出かけるときもノートを持参して、何か思いつけばいつでもメモorスケッチしています。スケッチからイラストレーターでの作業に移っても、またスケッチに戻り、作り変え、描き直し…の繰り返しです。

デザイナー夫は、本を読んだりネットで資料を見つけて調査して発見したことを、よく私に話してくれます。【デザイナーの妻】、最近はわかります。この話している時間こそデザイナー夫の「ただいま分析中・消化中」であること。頭の中で整理したことを話す、もしくは話しているうちにガッテン!モーメントが到来し、頭の整理がつくような感じです。時には話しながら納得して、「じゃ、いってきまーす!」と言って作業机に戻っていきます。完全置いてけぼりの【デザイナーの妻】ですが、ひとまず「いってらっしゃーい✋」です。(作業机は5秒の距離ですが、見送ります👀)

「分析・統合」の大きな要素ープレゼン

デザイナー夫が、ロゴの制作において構成した(作ってみた)ものを分析(分解)し、再構成するとといった繰り返しを行なう上で、大きな要素になっているのはプレゼンの機会です。キックオフのミーティング後、初めてのプレゼンまでに、すでに何度か「分解・再構成」の過程を経ているわけですが、クライアントのフィードバックこそが、次の分析作業の要素になります。プレゼンがうまくいっても、うまくいかなくても同じです。

プレゼンが上手くいった場合のデザイナー夫の様子3つのパターンと、上手くいかなかった場合の3つのパターンについては、観察日記#3でレポートしています。この記事を書いた時点では、私は「分析と統合」の型については理解していませんでしたが、今はこの6パターンそれぞれが、分解・再構成の作業だとわかります。この6パターンについては、よかったら観察日記#3をご覧ください。

プレゼンとその後いただくフィードバックから、調査に基づいてデザイナー夫が捉えたサービスのイメージやプロジェクトの方向性がクライアントと一致しているか、確認できるようです。方向性が合っていることを確かめられて、ブラッシュアップ作業が順調に進むこともあります。でも、事前に調べて「これだ!」と思ったイメージが、クライアントの抱いているイメージと全く違うこともあり、そういう場合は「要素分解」というより「空中分解」という感じで、プレゼン後は撃沈しそうになります。(撃沈レベルも3段階あります。観察日記#3より)

プレゼンの途中で次の課題が見えるケースも、プレゼンの後に苦しみながら分析をし直すケースも、夫はよく話します。【デザイナーの妻】はすべてを理解できるわけではありませんが(ごめんよ👀)それを聞きます。「答えが出ない」「アイデアが出ない」「わからなくなった」…そういう苦しい時でも、夫はひたすら手を動かしています。その期間は本当に苦しそうです。我が家には、各プロジェクトでデザイナー夫が描いた、ものすごい量のスケッチがあります。難産の記録はやはり捨てられませんね〜。

難産の末の完成まで、「分析と統合」は続く

最初のプレゼン後にひたすらスケッチを繰り返し、新しい案やブラッシュアップした案をまたプレゼンし、フィードバックをいただき、最終納品まで調整を続けます。その間、新たに本を読んだり調査したりして、情報の吸収も続きます。コンピュータに向かって、イラストレーターで作業する時間も、もちろん長いのですが、本を読んだりスケッチしている時間の方が長いような気がします。

難産の末に完成した最終プレゼンがクライアントに喜ばれ、ロゴが決定した時、デザインは最初の段階よりも何倍も精錬され、生まれたばかりのキラキラの子供を世に送り出すような、そんな気持ちで納品するのではないかなと思います。本当に嬉しい瞬間です。デザイナー夫自身、このすべての過程を(苦しいながらも)毎回とても大切にしているように感じます。「ちょっと疲れた」と思うこともあると思いますが、ひとつプロジェクトを乗り越えるたびに、どんどんパワーアップしているのだと思います。

学生たちが苦しい期間を経験することになるとしても「分析と統合」のプロセスを繰り返し思い起こさせているのは、デザイナー夫自身が自分のデザイン業務の中でこの過程を常に経験しているからなんだな、と最近気づきました。学校の課題も大変ですが、実際のビジネスの場はもっと厳しい実践の場です。だからこそ、この「成長痛」のようなパターン学習の機会を学生に与えたいのかなと。観察の結果そう思っています。

観察日記#10読んでくださってありがとうございました。


Photo by Luis Soto


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