結婚は、免罪符だ。
あと半年経てば私は東京で過ごしている。
4月の頭に上司に退職を申し出てから話が進むのはあっという間だった。
みんな惜しんでくれたし、寂しがってもくれて有難かった。だけどこんなにすんなりと辞められるならもっと早く言ってても良かったな、なんて思うんだよな。
仕事柄、「辞めたいです」と働いている人から言われる立場だ。だから人は簡単に辞めるし辞められるものだと分かっていたけれど、いざ言う立場となると緊張するものだ。
残業をしていたらかかってくる電話やメールに何度もうんざりした、でも、あれは魂の叫びだったのかもなぁと思う。
そんな理由で、と思うこともあったけれど、どんな理由であれその人が辞めたかったきっかけは必ずあったのだ、その職場に。
私もそうだ。
だけど誰もその理由に突っ込んでこようとしなかった。
それは私が退職理由を「寿」に仕立てたからである。
正確には東京に住んでいる彼との将来と、東京でやってみたい分野の仕事があるから東京に引っ越したいと伝えた。
直属の上司は驚いていた。
聞くのが怖いよ、と冗談めかしながら言っていた。
思いの外、上司は冷静に私の言葉に耳を傾けてくれた。
私の「自分も死ぬまでに東京で働いてみたい」という気持ちに理解も示してくれた。
ただ、この話をした時に
『(東京に彼がいることは知っていたから)いつかはこの日か来ると思ってたけど…』と開口一番に言われたことがどうも胸にストンと落ちなくて一ヶ月以上心の中で宙ぶらりんになっている。
ほないつ言うてもよかったですやん〜〜!!!!!
信じられないかもしれないが、私は今在籍している会社の理念や働いている人達に惹かれてマジでこの会社が大好きで入社した。本気でこの会社に定年までいることも考えていた。この仕事をもう少しやってみたくて東京に行くことも悩んだりした。
その私が会社を辞めるんだからなんかもっとかける言葉ないのーーー!?と思った。
いや、お嬢様思考すぎてごめん。ごめんな。
悩んだけれど、半年前くらいから、自分自身がこの仕事の楽しさが見い出せないことに頑張って気付かないようにしていることと、毎日他所行きの顔で出勤していることに気付いて、ただでさえ息が詰まる土地でもうこれ以上頑張れないと本音が見えてきた。
だからこそ私も会社にようやく伝えられたんだけど。
結局は〝彼が東京にいること〟〝彼との将来を考えていること〟で上司の脳内で部下の退職申し出の稟議がするすると通るんだなと。
自分も何がなんでも退職したくて、それを盾にして使ったから、当たり前だ。
当たり前だけれど、本音で言えば「本当に理由はそれだけ?」と一言だけ聞いてほしかったのだ。
これまた我儘レディでごめん。ごめんな。
でも、別れ話をするカップルが本音を交わせる場合もあればそうでない場合もあるのと同じなのかもしれない。
まだ半年間は在籍するから。
マンションの契約が切れるまで、同棲は続くのだ。
結婚や彼との将来という言葉は
幸せなオーラを放っててキラキラしているけど
目眩し、免罪符だとも思う。
水戸黄門で言う紋所で、トランプで言うジョーカーみたいだ。
目の前にかざされるともう太刀打ちできなくて「仕方ない」と片付けるしかない。
反対に仕事を続けたかったけれど環境等の変化で辞めざるを得なかった人達も沢山いるんだろうなと想像した。
彼の存在が上京のきっかけのひとつにもなったけど結局はどこかのタイミングでは今の会社から巣立っていたんだろうなとも思う。
ありがとう、ここまで立派に育ててくれて。
会社との別れ話の一言一句への執着はそろそろ終わりにして、前向いて行こう。
また新しい私のステージが始まるんだと思うとワクワクもする。
東京での就職活動は6月くらいになったら始める予定です。
周りの人に住むところは?仕事は?とよく聞かれるけどこのまま何もせずに突っ切ると無職で上京することになるので応援よろしくお願いします。