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モーツァルトの真の天才はディベルティメントにこそ?

今年はコロナのステイホームでお篭もりを余儀なくされ、これも一つの機会だからとあまり聴いてなかった曲を開拓したりしました。
例えば、ハイドンの交響曲とか。──がんばってそこそこ聴いたようでも全体の数分の一だったりしましたが。

さて、最近、またそんなことをちょっとずつやっていこうかと思って、今度はモーツァルトのディベルティメントを聴き始めたのですが。

それで前から思っていたことに改めて確信のようなものが湧き始めたので、自分の感性を信じて畏れ知らずなことを書いてみようと思いました。

「モーツァルトの天才性って、ディベルティメントに一番はっきり現れているのでは?」

いや、これからディベルティメントを本格的に聴き始めようというのに、なんでその前からそんなことを語っちゃうのか、ではありますが。

そう思って、そう書きたくなったから、そう書いてしまうのです(^_^;)。

と言っても、今回私が念頭に置いているのはKV136〜KV138の3曲だけの話なんですけどね。
いやぁ、やっぱりこれは天才の作ですよ。
(しかもこの3曲を作曲したのが16歳の時ですか、はぁ……。)

正直、モーツァルトの3大交響曲などよりもこっちのほうがストレートにモーツァルトの魅力が出てるんじゃないかと思ったりします。
(「傑作」という言い方をするには、練り込み具合みたいな要素も入ってくるから、一概にどっちが「傑作」だなどとは言いづらいですけど。)

音楽の話を言葉だけであれこれ論じてもつまらないので、下に実作品の動画を置いておきます。
著作権的に問題のなさそうな楽団公式動画を適当に探して見つくろったものなので、ベスト演奏でもなんでもありませんが。そこそこ「聴ける」部類のものをチョイスしたつもりではあります。

KV136

(私はこの曲がとりわけ優れていると思うし、好きです。)

KV137

(冒頭はあまり好きでもないので途中から^_^;)

KV138


日本でモーツァルトと言うとしょっちゅう引き合いに出されるのが小林秀雄の『モオツァルト』(ずっと昔に読んだけど、幸か不幸か内容は忘れてしまいました)。
なかんずく、そのなかの「モオツァルトのかなしさは疾走する。」というフレーズがクラシックファンには知れ渡っているわけですが。

それは、その言葉で言わんとすることは分かるのだけど。
音楽って最終的にはやっぱり自分の感性で聴かなければ駄目でしょう?
モーツァルト評価がこの「お言葉」ばっかりに引きずられるのはどうかと思っていたのですよね。モーツァルトの数的には少ない短調曲を極度に重視したり。

小林秀雄の評論は事実上の散文詩のようなところがあって、惹きつけられる人はすごく惹きつけられるものなのでしょうか。
でも、あまりそれに引きずられすぎないように。
上の3曲はひょっとしたらその良き解毒剤になるかもしれません。


そうそう、モーツァルトと言えば「稀代のメロディメーカー」なんていう言い方もよくされます(だいぶ手垢のついた言い回しかと思う)。
全く間違っているわけではないけど、これも上の3曲を聴くと、若干違うと思う……と言いますか。

まさに「疾走する」生き生きとしたフレーズが織り重なり。
次々に気の利いたフレーズが出てきては、おやっと思うような重なり方でどんどん次へ次へと移り変わっていく。
そこが新鮮にも感じるし、とてもメロディアスにも感じるのですけど。
よくよく一つ一つのフレーズについて考えてみると、そこまでメロディに富んでいるというわけでもないと思います。
(繰り返しますけど)それらフレーズの新鮮な織り重なりが、我々に「素敵なメロディ」と感じさせる、という、なんというか独特のスタイルでもって「モーツァルトのメロディは美しい」のだと思います。

試みに。モーツァルトの曲で、思わず口ずさみたくなるメロディって、どんなのがあるでしょうか。意外と思いつかないんじゃないでしょうか?
ベートーヴェンの田園交響曲は、(器楽曲だから)口ずさむにはちょっと難があるけど、でも、その気になれば口ずさめるし、現に自分もかつては(クラシック音楽が気に入りはじめた少年時代)口に出して歌ったりしたものです。
しかしジュピターは個人的にはちょっと。40番はその気になれば出来るけど、あまり気持ちよく歌えるという感じではないかなぁ...etc。

あまり脈絡なく文章を綴ってしまいました。
後になって読み返すと、めちゃくちゃ恥ずかしいと思ったりするのかもしれないけど、まぁいいやと思っています。

最後に、しかし、やはり小林秀雄にも敬意を表し、KV516の弦楽五重奏曲を以下に置いておきます。いずれまた『モオツァルト』も読み返してみましょうか。


(トップ画像はモーツァルトが件の3曲を書いた場所だというザルツブルクの著作権フリー写真。私、ザルツブルクは行ったことないんですよね……。)