前置き
(承前)
勢いがなくならないうちに(?)。我ながら矢継ぎ早に書いています。
「道楽と職業」の「博士」論
今回引っ張る箇所は、これまで以上に、講演の本題とは離れた部分かなと思います。
でも、なかなか面白い。
私は博士号などは持っていませんが、すでに取ったとか、これから取ろうと考えているといった人にとっては(特にお医者さんにとっては)耳が痛かったりする部分もあるかも?
あと、今日の観点での差別用語も含んでいますが、時代性を考え、特に伏せたりはせずにおきます。
※文中、「虎列剌」=コレラ、「腸窒扶斯」=ちょうチフス。また「綿の木」と言っているのは、とぼけているのか、真面目に言っているのか、ちょっとよく分からないところです。
この講演が行われたのは明治44年とのことですが。
・「博士の研究の多くは針の先きで井戸を掘るような仕事をするのです。深いことは深い。掘抜きだから深いことは深いが、いかんせん面積が非常に狭い。」
・「現に博士論文と云うのを見ると存外細かな題目を捕えて、自分以外には興味もなければ知識もないような事項を穿鑿しているのが大分あるらしく思われます。」
針の先きで井戸を掘るような仕事、というのは、やっぱりうまい表現だなと思います。
しかし、この時代、既にこういうことが言われてたのですね。
明治でこれですから、今日=令和の博士論文などが、ちょっと常人には見当もつかないほど細かい領域を取り扱うのも、まぁ仕方のないことではあるでしょう……。
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補足:漱石が別所で行った講演に、同様の趣旨のものがあったようです。その新聞記事が発見されたというニュース。いわゆる「持ちネタ」だったっぽいですね。http://kyodoshi.com/article/9513/