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【ミニコラム】中国の高速鉄道(高鉄/中国版新幹線)について──ささやかな体験談と、現在の発展ぶり

2020/11/23追記 文末に緊急の朗報を追加しました(オンライン予約が容易に!)。中国旅行に興味のある方はぜひお読みください。

このところずっと手つかずでした。

前回記事(毛沢東の訪ソがどうこうというような内容)の続きもそのうち書きたいのですが、どうも筆が進みません。そうこうしているうちに熱が冷めて、いよいよ本格的に頓挫してしまいました。

こういう時は無理に書こうとするより、一旦離れて別のことを書いた方が良いかなと思いまして。

とりあえず今回はリハビリ的に、中国の高速鉄道(高鉄。いわゆる「中国版新幹線」)のことを書いてみます。
ちょうど最近知人あてにそういった関係のメールを書き送ったので、それも流用すればちょっと楽かなと、そんな考えもありまして。

で、以下はちょっと章立てのようなことをしています。
Part1は主に私の旅行系の思い出話。
Part2は私が知人あてに書いたメールを流用する形で、中国の高速鉄道全般について論評するような内容です。

ただ、言うまでもなく(?)、私は中国の専門家とかではなく、平凡な旅行者(それも思いきり後追いの)に過ぎません。以下の文章もあくまで一旅行者としての知見と視点を元に書いたものですので、その辺は割り引いてお読みください。

Part1


さて、まず私の高鉄初体験がいつだったかなのですが。この前たまたま、その時の切符が出てきたのでキッチリ判明しました。

2018年9月3日 12:58発 北京南→天津 C2219列車(行き)
2018年9月5日 12:16発 天津→北京南 C2054列車(帰り)

画像1

偉そうなことを書いてますが、ついこの間ですね。実はこれ、別記事に書いたアニメの聖地巡礼と同じ旅行の時のことです。

この時の旅行は中国国際航空を使い、行きが成田から北京経由ワルシャワ、帰りがストックホルムから同じく北京経由成田というルートをとり、現地では東欧からロシア・北欧方面をぐるっと回るということをやってみたのですが。
せっかくだから帰りの北京でも1週間ほど滞在するというような旅程にしたのでした。

余談ですが、こうやって乗り継ぎ地にも滞在すると旅の幅がさらに広がると思うので、旅程に余裕がある方には大いにお勧めします。私など、それ目当てで航空会社を選ぶことも結構あります。

さて、北京は見るところ盛りだくさんの街ですが、ただ北京を見るだけではこれも「旅行に広がりが出ない」と思い、「地球の歩き方 北京」を見て、天津にも行ってみることにしたのです。

北京を見るだけなら「北京観光」だけど、天津にも足を伸ばせばちょっとした「中国旅行」になるな、と。旅行者的価値観とでも言うようなものです。

こうした手間をとるのは面倒にも思いましたが結果としては大正解でした。
天津の街はとても魅力的で、私がこれまで行ったことのある中国の街の中では一番のお気に入りに。天津はLCCで安く行けるということもあって、その後何度も訪れることになります。

そして、初の高鉄体験。これも大きかったです。
高鉄を使えば北京〜天津はわずか30分、54.5元。実に便利で快適で。
私の「中国旅行」というものに対する意識を全面的に上書きする体験でした。
(私は若い頃にも中国を旅行したことがあるのですが、もう全く時代は変わったのだと痛感させられました。)

今や、高鉄抜きの中国旅行など考えられない、と言ってもさほど大げさではないでしょう。そのことは、その後何度か中国旅行をする中でいよいよ確信となりました。

さて、Youtubeで見つけた旅行動画をここで1本ご紹介しておきます。
天津から北京南駅まで。つまり私の高鉄初体験の路線です。
(路線名としては「京津城際鉄路」と言います。詳しくお知りになりたい方はググってみてください。なお「城際」は英語で言えばinter-cityですね。)

自分の全く知らない方のこういう動画を掲げるのはちょっと気のひける部分もありますが(^_^;)。
この動画は下の「Part2」の「その2」で再掲します。解説的なことはそちらに書いています。


Part2

Part2は前述のとおり、知人あてに書いたメールをもとにしています。2通あるので、その1、その2として以下に載せます。

その1

中国高鉄でこんな記事を見つけた。

「中国新幹線、2035年に総延長2倍 投資額70兆円か」

日経新聞だから例によってバイアスがかかってる気もするが(と思う私の方にバイアスが掛かっていると、見る人は見るのかもしれないが)。
いろいろ興味深いことも書いてある。

国有企業の中国国家鉄路集団は13日、同社が独占運営する中国版新幹線「高速鉄道」の総延長距離を2035年に約7万キロメートルへ延ばすと発表した。19年末の2倍だ。総投資額は少なくとも4兆5500億元(約70兆円)に達する見通し。経済対策を優先すれば、中国政府の財政を圧迫しかねない。
35年までに人口50万人以上の都市のすべてに高速鉄道を通す計画だ。総延長は現在の日本の新幹線の約21倍に達する。

……とあって、なんとなく義務的に入れてるっぽくも見える中国ディスり(?)要素を取っ払うと。

現状、高鉄の総延長はすでに日本の10倍ほどで約3万5千キロ
この先、15年間で70兆円ほど費やし、さらに3万5千キロほどの路線を新たに敷こうと考えているわけだね。

参考までに日本のリニア新幹線は次の記事によると

2027年末の開業が予定されている品川―名古屋間の総事業費は5兆5235億円大阪延伸まで含めれば約9兆円の巨額投資となる。

つまりリニア新幹線(品川〜大阪)に比べても8倍ほどの大予算を費やそうというわけだから、確かに財政的に大丈夫なのかと心配にはなるね。

ただ、ここからは自分の見立てだけど。

あの国の最大の問題の一つは、あれだけ人口も多く広い国なのに交通網が全然発達していなかったこと。それは傍目にも明らかだった。
要するに需要に供給が全く追いついてなかった。
鉄道の切符を入手しようにも全く手に入らない、なんて時代が長かったのは君もご存知のとおり。
そうしたことによる経済的な機会損失(逸失利益、という言葉でいいのかな?)もきっと天文学的なものであったろうと見て間違いあるまい。

それが今や、高鉄のおかげで、移動したければ割とポンと切符を買ってさっさと移動できるようになった。それも、リーズナブルな値段で。
これは大きい。
(日本の10倍の人口がいる国に、日本の10倍の線路があるなら、単純計算上は同じくらい切符を入手しやすくなった理屈?)

思いっきり大げさに言えば、最悪このプロジェクトが財政的に破綻して国家が潰れたって彼ら的にはありなのかもしれない(苦笑)。
とにかく出来上がった鉄道網はその後も生き残り、その後の中国を支えるのだろうから。
ロシア帝国が作ったシベリア鉄道は、その後ソ連の時代になり、さらにそのソ連が潰れても、ずっと重宝されている、というのはご存知のとおり。

まぁもっと楽観的に見るなら、これによってさらなる中国の発展が担保され、今は重く見える負担も2035年時点での中国の経済規模からすればさほどのものではなくなっている、と。
向こうの偉いさんは多分そんなふうに見てるんじゃないかなぁ。
そして、私としてもそれはさほど無謀な見通しではない気がする。

そうそう、あと高鉄車内の雰囲気について聞かれてたから、Youtubeで見つけた「こんな感じ」という動画を適当に一本。
時間指定も一応入れた。


その2

(下の動画は再掲)

もう一つ紹介。天津から北京南駅まで。自分の高鉄初体験の路線。
1年ほど前の動画だから、まさに自分が映っててもおかしくないような時期。

中国語だけど、字幕もつくからなんとなく分かるのでは。
0:20で切符がきれいに映るので2等54.5元だと分かる。片道千円弱。向こうの物価水準から見てもそこまで高くはない。これは社会主義的に「すべての人民に安価な交通を提供する」という理想の名残かもしれない。向こうは市内のバスとかも安いしね。

そして、その画面でこの人の名前も分かってしまう(^_^;)。そう、中国では鉄道切符に名前が乗るのだよ。今の中国はなにをするにも身分証必須の社会。監視社会化が進んでいるという点ではかなり怖い話でもあるけど、鉄道に限った話ではないから、今回は詳述しない。
あと、中国からYoutubeには本来アクセスできないはずなのだが、それをかいくぐって動画投稿なんかしていいのかしらという気も少々。

天津〜北京間120kmを30分で駆け抜けるから時速240kmの単純計算。実際には加減速があり、最高で350km出る(動画でも分かる)。
日本の新幹線より速いが、新幹線は基本的には半世紀前の技術なのだと考えれば、別に驚くほどのことでもない。

ちなみにYoutubeで「中国版新幹線」みたいなワードで検索すると、パクリだ危険だ財政破綻だと、そんな感じの動画ばっかりヒットする。
もちろんそれも一面の真実ではある(デマを一切混じえてないなら、だけど)。

が、例えば危険性を評価するならTGVやICEの事故についても見ておく必要があるだろう。
でなければ「高速鉄道で大きな事故を起こしたのは中国だけ」みたいな誤った印象を持ってしまうかもしれない。
だが、こういう動画でその辺は無視してることは、まず見るまでもなく分かる。

(ヨーロッパでの事故例としては例えばこんなのとか)

問題の高鉄の方の事故はこっち。

確かにひどい事故だが(とりわけ事故後の対応がひどかったというのは、よく論評されているとおり)。
その後のことを見てみれば。現状で総延長が日本の10倍もある高鉄のネットワークを列車は今日も高密度で走行していて。そうやって事故から10年近く大過なく運用されている。
そうした実績だってあることもまた、冷静に受け止めるべきだろう。

日本アゲ中国サゲだけが目的化しているような動画を真に受けていると、どんどん現実が見えなくなる。
でも、今の日本にそういう人、多そうなんだよね。残念ながら。


オマケの天津写真など(準備中)


(また口調を戻しまして。)

この文を読んで天津観光に興味を持たれた方に耳寄りな情報を。
天津の旧市街(旧城)の鼓楼のすぐ隣にある「広東会館」はすばらしい雰囲気の中、京劇を鑑賞できる劇場です。毎週土日の午後2時半から京劇を上演します。
「せっかく中国に来たのだから京劇というものも見てみたい」と思われる方はぜひここでご覧になると良いかと思います。
下はPart1で触れた旅行とは別の時のものですが、ちょうど「覇王別姫」を見れてラッキーでした。

画像3

画像4

(ただ、現在は補修のため閉館中とのこと。また、以前と同様の雰囲気で再開してくれれば良いが、と思っています。関連の中国語記事を下に。)


補足

◎中国の鉄道については「中国鉄道時刻研究会」がいろいろ役に立つ研究をされているのですが、そこの「ダウンロード」ページから無料でダウンロードできる「中国鉄道旅行ガイド」が、大変有用な内容となっています。
中国旅行や中国の鉄道事情に興味のある方にはご一読を強くおすすめします。

◎高鉄の路線図の最新(2020年)版は以下のサイトでダウンロードできます。

(下は全国版地図の直接のリンク)
https://china8.jp/upload/wysiwyg/shanghai/images/railway_china_2020.png

まぁ、こういうのもあっという間に役立たずの古い情報になってしまうのが、最近の中国なのですけど。

在来線を含んだ路線図は上述の「中国鉄道時刻研究会」の「ダウンロード」ページからpdfで落とせますが、そんな次第で既にちょっと古くなっています。
例えば北京から張家口、烏蘭察布方面への高鉄路線が載っていないなど。

◎高鉄の実際の運行ぶりは「中国鉄路12306」で確認できます。

(上述の「中国鉄道旅行ガイド」に解説がありますので、詳しくはそちらをご参照ください。)

例えば出发地(出発地)に「北京」、到达地(到達地)に「天津」と入れて查询(照会)すれば、この区間にどれくらいの列車が走っているか一目瞭然です
なお、「高铁/动车」(高鉄/動車)の項にチェックを入れるのをお忘れなく(チェックを入れなければ普通列車も含めての検索になります)。

【緊急の朗報】

「中国鉄道時刻研究会」さんのTwitterより。
中国国鉄の予約サイト12306が「普通の日本人」でも使えるようになりました!
とのこと。
コロナ禍が終われば、鉄道を自由に使って中国旅行を楽しめる日がやってきますね。https://mobile.twitter.com/search?q=from%3Ashikebiao%20since%3A2020-11-10%20until%3A2020-11-13&src=typed_query
(↑Twitterに日付指定をかけたURLです)


※トップ画像はWikipediaにあった「京津城際鉄路」(天津駅)の写真ですが、後ほど2018年の旅行の時に自分が撮影した写真と差し替える考えです。それ以外にも、その時の写真を何枚かUPできればと思っています。


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