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酒嫌いが一夜にして酒強いキャラに変わった話(飲み会を乗り切るには日本酒好きを公言しよう)

お酒嫌いのわたし

「乾杯のお酒は何にする?」と聞かれると、決まって「カシスオレンジ」と答える人間だった。

お酒を飲むと、甘い味のあとに沈殿した痛みが襲ってくる感覚があって、3杯も飲むと頭が痛くなってしまう。
飲み会があるときは、ただ食事だけに集中して、目の前にある唐揚げとフライドポテトをむしゃむしゃ食べるタイプであった。この様子は周りに見られていて、「お酒嫌い?もしかして楽しくない?」と聞かれてしまうこともあった。

図星だ。
にこにこと笑顔を返すしかなかった。
そもそも、飲むことを強いられる雰囲気があるから飲み会は好きじゃないし、その道具であるお酒も好きじゃなかった。

飲み会のお誘い

そんなある日、会社でお世話になっている上司に「飲みに行こう」と誘われた。

「えー、お酒苦手なんですよ」と伝えると、「とびきり美味しいお酒のところに連れて行くから」とのこと。一抹の不安を抱えながら、いざという時はおつまみもぐもぐ戦法で乗り切ろうと誘いに乗ることにした。

当日は3人で行くことになった。いつもお世話になっている上司、わたし、そして仲良くしてくれる先輩である。

場所は京橋の獺祭BAR。
獺祭が安倍首相の地元のお酒として、ちょうど有名になったころだった。

飲めないのは分かっているので、お店の中で一番安いお酒を注文した。
それでも2000円は超えていた。

やばい、この場所はまだ自分には早いところだ。いつものカシスオレンジとか庶民のレベルじゃないと、ひたすら店内をキョロキョロしていた。
しかも、きゅうりの漬物は確か800円。高くて何個も注文できるものではなく量も控えめで、おつまみに逃げる戦法は使えない。

獺祭と向かい合う

しばらくしてグラスが1つ出てきた。透明な液体がきれいだ。

「日頃お世話になっております、かんぱーい」

唇に当てて、恐る恐るグラスを傾ける。
最初は良い香り、ちびっと飲んだ最初は甘い。
そして喉に通るときのあの鈍い苦味が、、ない。。?
そう、いつも感じていた後味の悪さがなかったのだ。

「うまい!」と思わず声に出してしまった。
いつもは、おいしいっていうキャラなのに。
2人も「ほらねー」とニヤニヤしている。

最初のうちは一緒に来た2人と仕事の話をしていたが、途中はよく聞いてなかったと思う。あまりに美味しかったので、ちびっと獺祭を飲み進めては、ときどき舌をリセットするためにきゅうりの漬物を食べる。そしてまたちびちび獺祭を飲む。

人生初、お酒と真剣に向き合っていたと思う。
何かしながら飲むって失礼だなと、このグラスに敬意を持ってしまった。
お酒へのネガティブイメージなんて、ぶっ飛んでしまった。

獺祭にとことん向かい合ったあとは、2人との話の輪に戻って資産形成の話をした気がする。

お酒強いオーラ

後日、別の人から「今度仕事終わりにご飯食べに行こう。何系の料理とかお酒が好きとかある?」と聞かれた。

いままでなら「うーん、料理はなんでもいいですよ。お酒はカシスオレンジかなあ」と答えていたところ。でも今回は、「日本酒のおいしいところ!」と返事をした。

すると、驚いた顔をされて「え?もしかしてお酒強い人?」と聞かれた。
びっくりして、いえいえと否定する。むしろ弱いタイプなのに。
しかし、同じ質問があるたびに「おいしい日本酒ー」と答えると、決まって「お酒強いの?」と返された。
どうも、日本酒好き=お酒が強いという図式があるらしい。

この戦法は、いつもな飲み会でも効果てきめんみたいで、「おいしい日本酒を味わって飲みたい」というと、1杯しか(も)飲んでいなくても、こいつ飲んでないなという空気が発生しないことを後に知った。
獺祭のおかげで、わたしは飲み会の立ち回りも一つ上手くなった。

お酒を楽しむわたし

でも、お酒から逃げるだけではなく、あの獺祭BAR以降、本当においしいお酒なら進んで飲むようになった。行ったお店の料理がおいしかった時は、すこし高めのお酒を1杯だけ注文するのだ。おいしい料理ならおいしいお酒もあるに違いないと期待して。
おかげで、ロゼスパークリングもおいしいことに気づけた。

まだまだ他にもおいしいお酒はあるのかもしれない。
真剣に向き合いたくなるお酒に、お酒と乾杯したくなるお酒に、次はいつ出会えるだろうか。

お金を稼ぐということが大変だということを最近実感しています。サポートいただけると幸いです。