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なぜ「共感」と「協力者」が必要なのか?〜新規事業をミッション・ビジョンで考える〜

「新規事業が立ち上がったは良いものの、社内から理解されていない、社外から共感が得られない」事業の立ち上げに携わった方なら一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

前回の記事『新規事業の「予算承認されない問題」はなぜ起こる?』に続き、今回は事業創出における「社内理解の促進」と「社外からの共感の醸成」の重要性について、ミッションとビジョン視点で、自分の考えを記してみたいと思います。

なぜ事業創出に「理解」と「共感」が必要なのか?

事業創出の成功には「協力者の存在」が欠かせません。なぜならば、事業の立ち上げ期はヒト・モノ・カネのすべてにおいて制約があるためです。

言い換えると、協力者の存在を無くして事業を成功させることは難易度が高く、協力者を社内・社外にいかに多く作れるかで事業の立ち上げ速度も大きく変わっていきます。

ただ、冒頭の課題提起のように「協力者を作る」ことが簡単ではないと感じている方も多くいらっしゃると思います。そもそもなぜ協力をしてもらうことが難しいのでしょうか。

僕が過去に支援してきたプロジェクトを振り返ると、協力者を多く作れたプロジェクトの共通項に「社内からは”理解”を得られ、社外からは”共感”が生まれるミッション・ビジョンが存在する」ことがあります。

企業にはミッションやビジョンが存在しますよね。そして、各社でミッションやビジョンの粒度や内容は異なります。それは、自社のメッセージを届けたい層の定義が各社で異なるためです。例えば、受け手の定義としては以下の3つが挙げられます。

  1. 社内の人を意識している

  2. 社外ステークホルダーを意識している

  3. エンドユーザーを意識している

ここで注意しなければならないのが「会社がミッション・ビジョンを定義したので」と言って、事業創出とは切り離して考えてしまうケースです。

こうした誤解によって、会社のミッションとビジョンとは関係のない領域の事業がつくられたり、原点に立ち戻ろうとした時に会社が描いているものと事業づくりが大きく乖離しているので余計混乱してしまうのです。だからこそ、会社のものとは別に事業創出には事業のミッションとビジョンが必要なのです。

実際、この10年大企業の新規事業づくりに取り組んできた100件のうち、うまくいったプロジェクトは顧客からの「共感」がうまく働きました。そのおかげでプロジェクトの初動が良くて、企業内説得がものすごくしやすかったのです。

プロジェクト責任者の衝動に駆られるような強い想いと、実現しようとする未来に享受される顧客候補の気持ちを揺さぶれるか。この合致点をビジョンに盛り込む必要があります。

ミッション・ビジョンを描けない理由

なぜ多くの事業担当者が事業のミッションとビジョンを描けないのか、その理由は以下の2つにあるかなと考えています。

  1. 事業のミッション・ビジョンの重要性をわかっていない

  2. 自社と事業のミッション・ビジョンをつなげる手段がわからないから

2の手段を理解できれば、1の重要性も自ずと理解できるようになります。事業の提供先には当たり前に「顧客」が存在していますよね。
顧客だけでなく「社内の人」も意識した事業創出をしている場合は、顧客ではない”自社のステークホルダーに向けたメッセージ”もミッション・ビジョンに盛り込む必要がありますし、事業のフェーズにあわせてメッセージも変更する必要があります。

それが上手にできているのが、日立製作所の出島会社「ハピネスプラネット」です。

同社は僕たちが7年間事業創出のご支援をさせていただいている会社なのですが、代表取締役の矢野さんに初めてお会いしたときに彼は「このAIを活用して10億人が昨日より今日、今日より明日、日々の生活の営みがよりHappyになれるような状態に貢献したいんだ」と語られたんです。

僕たちはこの矢野さんの言葉に強い共感を抱き、初の外部エンドーサーになりました。ハピネスプラネットの強いところは、明確で揺るぎのないミッション・ビジョンを掲げたことで僕のような社外からの「協力者」を得ていることなんです。

一方で、社内理解も促進できています。日立グループのスローガンは「Inspire the Next」ですが、矢野さんは母体である日立グループのスローガンと共鳴するようなミッション・ビジョンをハピネスプラネットで掲げています。だからこそ、社内の理解も進み、社内からの協力者も得やすい環境を作れたのだと考えています。

同社は2020年7月20日に日立製作所の新会社として正式に設立されましたが、新規事業の立ち上げ期から新会社にいたるまでのストーリーを代表の矢野さんとの対談でまとめているので「日立製作所の出島会社「ハピネスプラネット」はこうして生まれた!矢野和男氏が語る0→1から出島会社化までの誕生秘話」ぜひ読んでみてください。

ミッション・ビジョンを形骸化させないために

ハピネスプラネットが事業化に成功したもう1つの理由には、事業フェーズにあわせてミッション・ビジョンを更新させていったことも挙げられます。

事業の初期の立ち上げ期はヒトもモノもカネも潤沢ではない状態ですよね。まず、協力者は社内から得ることが多いはずです。なので、社内の事業理解を促進して、共感してもらえるようなメッセージをミッション・ビジョンに盛り込む必要があります。

新規事業の『「予算承認されない問題」はなぜ起こる?』という記事の中でも触れましたが、ミッション・ビジョンを持っておくことで承認者への「確らしさ」を伝える作業が大幅にスムーズになります。
この「共感」を見出す作業はいろんな手段を使い、早ければ早いほど良いと個人的には思います。

事業化に進み、スケールアウトさせる時期になったら、対象となるのはもう母体企業ではなく顧客になるはずです。このときにはより多くの顧客属性の方から事業に共感してもらえるようなメッセージをミッション・ビジョンに盛り込む必要がありますよね。

ミッション・ビジョンは一度作って終わり、ではなく形骸化させないように常にアップデートしていく必要があります。ぜひ一度自分の事業のミッション・ビジョンを考えてみてくださいね。​

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